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AI時代の小児科医の役割。情報処方という考え方
Vol.500生活・育児

AI時代の小児科医の役割。情報処方という考え方

AIが医学情報を瞬時に提供できる時代に、小児科医にしかできないことは何か。情報処方という新しい概念を解説

生活・育児全年齢7
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 5·Q&A 問収録

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この記事のポイント

  • AIは膨大な医学知識を検索できるが、目の前の子どもの文脈に合わせて情報を選ぶことはできない
  • 情報処方とは、その家庭に必要な情報を適切なタイミングで届ける小児科医の新しい役割
  • AIと小児科医は競合ではなく補完関係。AIが知識を整理し、医師が文脈と信頼を提供する

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.500

AI時代の小児科医の役割。情報処方という考え方

今号のポイント

  1. 2
    AIは膨大な医学知識を検索できるが、目の前の子どもの文脈に合わせて情報を選ぶことはできない
  2. 4
    情報処方とは、その家庭に必要な情報を適切なタイミングで届ける小児科医の新しい役割
  3. 6
    AIと小児科医は競合ではなく補完関係。AIが知識を整理し、医師が文脈と信頼を提供する

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

Vol.500になりました。この500回の間に、外来の風景は少しずつ変わりました。スマホで症状を調べてから来る保護者が増え、ChatGPTの回答を見せてくれる方もいます。医療情報へのアクセスは劇的に改善しました。

でも、不安は減っていないように見えます。むしろ、情報が増えたぶんだけ混乱している。そんな印象があります。

知識はあるのに安心できない理由

「子ども 発熱 原因」で検索すれば、100以上の可能性が表示されます。風邪、インフルエンザ、突発性発疹、尿路感染症、川崎病。すべてが「可能性」として列挙される。でも、目の前で熱を出している自分の子どもが、そのうちのどれに該当するのか。それは検索結果からは読み取れません。

ここに、AIと医師の決定的な違いがあります [1]。

AIは「一般的な情報」を提供します。医師は「この子の情報」を提供します。2歳の男の子で、昨日から38.5度の熱があって、鼻水が出ていて、食欲は少し落ちているけど水分は摂れていて、保育園でRSウイルスが流行している。この文脈のなかで「おそらくウイルス性の上気道炎でしょう。水分をしっかり摂って、明日また熱が下がらなければ来てください」と言えるのが医師です。

安心は、知識の量ではなく、文脈のなかでの判断から生まれるものです。

情報処方という考え方

僕が最近考えているのは「情報処方」という概念です。

薬を処方するように、情報を処方する。つまり、その家庭の状況に合わせて、必要な情報を、適切なタイミングで、適切な量だけ届ける [2]。

たとえば、生後4か月の赤ちゃんを持つお母さんに、3歳児のイヤイヤ期の対処法は必要ありません。今必要なのは離乳食の始め方や予防接種のスケジュールです。逆に、入園を控えた3歳のお子さんの保護者には、集団生活で増える感染症の情報が役に立ちます。

情報処方の考え方では、「たくさんの情報を提供すること」が目的ではありません。むしろ「今は不要な情報を削ること」が重要です [3]。情報の洪水のなかで溺れかけている保護者に、もう一杯水を注ぐのではなく、必要な一杯だけを手渡す。それが情報処方です。

💡情報処方の3つの原則
  1. 2
    適時性: その家庭が今必要としている情報であること
  2. 4
    個別性: 子どもの年齢、状況、家庭環境に合っていること
  3. 6
    適量性: 多すぎず少なすぎず、行動に移せる量であること

AIにできること、医師にしかできないこと

では、AIと小児科医はどう役割分担すればいいのか。

AIが得意なのは、膨大な医学知識の整理と検索です。「溶連菌の潜伏期間は?」「ヒブワクチンの接種間隔は?」こうした定型的な知識の提供は、AIのほうが早くて正確なこともあります。

一方、小児科医にしかできないことがあります。

目の前の子どもを診察すること。触れて、聴いて、見て、匂いを感じること。保護者の表情から不安の度合いを読み取ること。「大丈夫ですよ」という言葉に責任を持つこと。長期的な信頼関係のなかで、その家庭の文脈を理解していること [4]。

AIと医師は競合ではなく補完関係です。AIが下調べを助けてくれて、保護者がより整理された形で相談に来てくれれば、限られた診察時間をより深い対話に使えます。これは医師にとっても歓迎すべき変化です [5]。

このサイトが目指していること

このサイト「みなとん」は、僕なりの情報処方の実践です。

498号分のコンテンツがありますが、すべてを読む必要はありません。お子さんの年齢や症状に合わせて、今必要な記事だけが表示されるように設計しています。すべての記事に参考文献をつけているのは、情報の出所を透明にするためです。

AIの時代に小児科医として僕ができることは、正確な情報を、信頼できる形で、必要なタイミングで届けること。そして、情報だけでは解消されない不安に対して「大丈夫ですよ」と言えること。

500号を書いてきて、改めてそう思います。

コンコン先生
🏥

おかもん先生より

外来で処方箋を渡すとき、「この薬はこういう理由で出しています」と説明するようにしています。同じように、「この情報はこういう理由でお伝えしています」と言えること。それが情報処方の本質だと思っています。薬と情報、どちらも「なぜこれが必要なのか」を理解してもらうことで、はじめて効果を発揮します。

今号のまとめ

  • 情報の量は増えたが、保護者の不安は減っていない。文脈なき情報は混乱を生む
  • 情報処方: 必要な情報を、適切なタイミングで、適切な量だけ届ける
  • AIは知識の整理と検索が得意。医師は文脈の理解と信頼の提供が役割
  • 両者は競合ではなく補完関係
  • 「みなとん」は情報処方の実践である

あわせて読みたい

  • Vol.498「ChatGPTに子どもの症状を聞いていいの?」
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愛育病院 小児科 おかもん先生

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