愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.166
アレルギー性鼻炎、鼻づまりは「たかが鼻」では済まされない
今号のポイント
- 2アレルギー性鼻炎は「通年性(ダニ)」と「季節性(花粉)」の2タイプ。ダニが圧倒的に多い
- 4鼻づまりは睡眠障害・集中力低下・口呼吸につながる。子どもの学校生活に大きな影響
- 6舌下免疫療法(ミティキュア・シダキュア)は5歳以上で開始可能。唯一の根本的な体質改善
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回のテーマはアレルギー性鼻炎です。
Vol.87では「子どもの花粉症」として、スギ花粉症を中心にお話ししました。今号ではもう少し広い視点で、花粉だけでなくダニによる通年性アレルギー性鼻炎にも触れながら、治療の全体像、特に舌下免疫療法について詳しくお伝えします。
「うちの子、いつも鼻水が出ている」「寝る時に口を開けている」、こうした症状が続いている場合、アレルギー性鼻炎かもしれません。
Q1.「通年性と季節性って何が違うんですか? うちの子はどっちですか?」
——一年中鼻水が出ているんですが、これも花粉症ですか?
一年中続く場合は、通年性アレルギー性鼻炎の可能性が高いです [1]。アレルギー性鼻炎には大きく2つのタイプがあります
| タイプ | 原因 | 症状の時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 通年性 | ダニ、ハウスダスト、ペットの毛・フケ、カビ | 1年を通して(秋に悪化しやすい) | 小児に最も多い [1][2] |
| 季節性 | スギ花粉、ヒノキ、ブタクサ、イネ科 | 花粉飛散期(2〜4月、8〜10月など) | 目のかゆみを伴いやすい [1] |
小児のアレルギー性鼻炎では、ダニが原因の通年性が最も多いです [1][2]。スギ花粉症ばかり注目されがちですが、実は一年中症状が続く通年性のほうが、日常生活への影響は大きいことがあります
——ダニって布団のダニですか?
はい。正確にはダニの糞や死骸に含まれるタンパク質がアレルゲン(アレルギーの原因物質)です [2]。ダニアレルゲンは一年中存在しますが、ダニが繁殖する夏〜秋(6〜10月)に増え、その死骸が乾燥する秋〜冬に空気中に舞いやすくなるため、秋に症状が悪化するお子さんが多いです [2]。ちなみに、通年性と季節性の両方を持っているお子さんも珍しくありません
ポイント
- 小児アレルギー性鼻炎はダニが原因の通年性が最多 [1][2]
- 通年性は1年中症状が続く。秋に悪化しやすい [2]
- 通年性と季節性の両方を合併しているケースも多い
Q2.「鼻水・鼻づまりくらいで治療が必要ですか?」
——鼻水くらいなら我慢できると思うのですが……
"たかが鼻"と思われがちですが、鼻づまりがお子さんの生活に与える影響は想像以上に大きいんです [3][4]
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| 睡眠障害 | 鼻づまりで夜間に何度も目が覚める。いびきの原因にも [3] |
| 口呼吸 | 鼻で息ができないと口呼吸に。口腔乾燥、歯並びへの影響、顔面の発育にも影響 [3] |
| 集中力低下 | 日中の眠気、授業に集中できない。学業成績の低下が報告されている [4] |
| 副鼻腔炎・中耳炎 | 鼻の炎症が副鼻腔や中耳に波及しやすい [3] |
| 喘息の悪化 | 鼻と気管支は"one airway"(つながった一つの気道)。鼻炎が悪化すると喘息も悪化 [5] |
——睡眠にも学校にも影響するんですね……
はい。国際ガイドライン(ARIA)では、アレルギー性鼻炎の鼻づまりが睡眠やQOL(生活の質)に与える影響を重視しており、症状がある場合は積極的に治療することを推奨しています [4]。特に注目していただきたいのが"one airway, one disease"という考え方です。鼻の粘膜と気管支の粘膜はつながっており、アレルギー性鼻炎をしっかり治療すると、喘息のコントロールも改善することが報告されています [5]
ポイント
- 鼻づまりは睡眠障害・集中力低下・口呼吸・喘息悪化の原因 [3][4]
- 「たかが鼻」ではない。子どもの学校生活に大きな影響
- 鼻と気管支は一つの気道(one airway)。鼻炎の治療が喘息改善にも [5]
Q3.「アレルギー性鼻炎の薬にはどんなものがありますか?」
——鼻水が出るたびに抗ヒスタミン薬を飲ませていますが、ずっと飲み続けても大丈夫ですか?
治療は症状のタイプに合わせて選びます [1][4]。まず薬物療法の全体像をお見せしますね
| 症状 | 第一選択 | 薬の例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| くしゃみ・鼻水型 | 第2世代抗ヒスタミン薬 | アレグラ(フェキソフェナジン)、ザイザル(レボセチリジン)、クラリチン(ロラタジン)、デザレックス(デスロラタジン) | 眠気が少ない [1][4] |
| 鼻づまり型 | 鼻噴霧用ステロイド | アラミスト、ナゾネックス、エリザス | 鼻症状全般に最も効果的 [4][6] |
| 鼻づまり+喘息合併 | LTRA | シングレア/キプレス(モンテルカスト) | 鼻と気管支の両方に効く [1][5] |
| 目のかゆみ | 抗アレルギー点眼薬 | パタノール、アレジオン点眼 | 目の症状に [1] |
——鼻噴霧用ステロイドは安全ですか?
はい。Vol.13でもお伝えしましたが、鼻噴霧用ステロイドは局所で作用するため全身への影響はほとんどありません [6]。国際ガイドライン(ARIA)では、中等症〜重症のアレルギー性鼻炎に対する最も推奨される治療です [4][6]。抗ヒスタミン薬と比べて、特に鼻づまりへの効果が優れています [6]
なお、市販の血管収縮薬(ナファゾリンなど)の点鼻薬は、小児にはおすすめしません。一時的に鼻が通りますが、連用すると薬剤性鼻炎(リバウンドの鼻づまり)を起こし、かえって悪化します [1]。使う場合は必ず医師の指示のもとで、短期間に限ってください
ポイント
- くしゃみ・鼻水には第2世代抗ヒスタミン薬。眠気が少ないタイプを [1][4]
- 鼻づまりには鼻噴霧用ステロイドが最も効果的 [4][6]
- 市販の血管収縮薬の点鼻は連用厳禁。薬剤性鼻炎のリスク [1]
Q4.「舌下免疫療法について詳しく教えてください。ダニにも花粉にも効くんですか?」
——Vol.87でスギ花粉の舌下免疫療法を教えてもらいましたが、ダニにも同じ治療があるんですか?
はい。現在、日本では2種類の舌下免疫療法が保険適用で使えます [7][8]
| 薬剤名 | 対象 | 対象年齢 | 開始時期 | 治療期間 | 効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| ミティキュア | ダニアレルギー性鼻炎 | 5歳以上 | いつでも開始可能 | 3〜5年 | 約60〜70%で症状改善 [7] |
| シダキュア | スギ花粉症 | 5歳以上 | 6〜12月(花粉飛散期を避ける) | 3〜5年 | 約70〜80%で症状改善 [8] |
——ダニのほうはいつでも始められるんですね
はい。スギ花粉のシダキュアは花粉飛散期を避けて開始する必要がありますが、ダニのミティキュアは通年性なのでいつでも開始可能です [7]。治療の流れを説明しますね
舌下免疫療法の流れ
- 2血液検査でダニ(またはスギ花粉)への感作を確認
- 4初回は医療機関で投与。30分間院内で経過観察
- 6翌日から毎日1回、舌の下に薬を置いて1分保持→飲み込む
- 83〜5年継続。途中でやめると効果が不十分に
- 10治療終了後も効果が持続 [7][8]
——毎日続けるのが大変そうですが、本当に効きますか?
ダニの舌下免疫療法(ミティキュア)の大規模臨床試験では、症状・薬物スコアが約20〜30%改善し、約60〜70%の患者で有意な症状改善が認められています [7]。対症療法(抗ヒスタミン薬など)は"症状を抑える"だけですが、舌下免疫療法は"アレルギーの体質そのものを変える"唯一の治療です。しかも、舌下免疫療法には新たなアレルゲンへの感作を予防する効果や、アレルギー性鼻炎から喘息への進展を抑制する効果も報告されています [9]
——アレルギーマーチの予防にもなるんですか!
そうなんです。アレルギーマーチ(アトピー→食物アレルギー→喘息→鼻炎と連鎖的にアレルギーが進む流れ)の途中で、舌下免疫療法が"ブレーキ"になる可能性が示されています [9]。お子さんの将来のアレルギーを考えると、5歳以上で適応があれば、早めに検討する価値は十分にあります
ポイント
- ミティキュア(ダニ)とシダキュア(スギ)の2種類。5歳以上で開始可能 [7][8]
- 舌下免疫療法は唯一の根本的な体質改善治療 [7][8]
- 新たなアレルゲンへの感作予防・喘息への進展抑制効果も [9]
- 3〜5年の継続が必要。途中でやめると効果不十分
Q5.「ダニアレルギーの環境対策はどうすればいいですか?」
——薬以外に、家庭でできるダニ対策はありますか?
薬物療法と並んで、ダニアレルゲンの回避(環境整備)はとても重要です [2][10]。ダニが最も多い場所は寝具です
寝具の対策(最重要)
効果
- 防ダニシーツ・カバー
- ダニアレルゲンの曝露を大幅減少 [10]
- 週1回以上の洗濯
- ダニアレルゲンを洗い流す [10]
- 布団乾燥機
- ダニを死滅させる [10]
- 掃除機がけ
- 死骸・糞を除去 [10]
ポイント
- 防ダニシーツ・カバー
- 高密度織り生地のものを選ぶ
- 週1回以上の洗濯
- 55℃以上のお湯で洗うとダニを殺せる
- 布団乾燥機
- 50℃以上で20分以上。その後掃除機をかける
- 掃除機がけ
- 布団の両面をゆっくり吸引(1㎡あたり20秒以上)
その他の環境対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| カーペットを撤去 | フローリングに変更するとダニアレルゲンが激減 [10] |
| ぬいぐるみの管理 | 洗えるものを選び、定期的に洗濯。寝室に大量に置かない [10] |
| 湿度管理 | ダニは湿度60%以上で繁殖。室内湿度を50%以下に保つ [2] |
| 換気 | 1日2回以上の換気で湿度を下げる |
| 空気清浄機 | HEPAフィルター搭載のものが有効。寝室に設置 |
すべてを完璧にする必要はありませんが、最も効果が大きいのは寝具の対策です [10]。お子さんは1日の3分の1を布団の上で過ごします。防ダニシーツの使用+週1回の洗濯+掃除機がけ、この3つを実践するだけでも、ダニアレルゲンへの曝露を大幅に減らせます
ポイント
- ダニ対策の最重要は寝具。防ダニシーツ + 週1洗濯 + 掃除機がけ [10]
- 室内湿度は50%以下に保つ [2]
- カーペットの撤去、ぬいぐるみの管理も有効 [10]
Q6.「アレルギーマーチとの関連を教えてください」
——アトピーがあると、次は喘息、次は鼻炎……と進むって聞きました。予防できますか?
アレルギーマーチとは、アレルギー疾患が年齢とともに形を変えて次々に発症する現象です [11]。典型的な流れはこのようになります
| 年齢 | 発症しやすいアレルギー疾患 |
|---|---|
| 乳児期(0〜1歳) | アトピー性皮膚炎、食物アレルギー |
| 幼児期(1〜5歳) | 気管支喘息 |
| 学童期以降(6歳〜) | アレルギー性鼻炎、花粉症 |
アレルギー性鼻炎は、このマーチの後半に位置することが多いです。つまり、乳児期のアトピーや食物アレルギーを経て、学童期以降にアレルギー性鼻炎を発症するパターンが典型的です [11]。ただし、全員がこの順番で進むわけではありません
——予防する方法はあるんですか?
完全な予防は難しいですが、各段階で適切に治療することで、次の段階への進展リスクを減らせる可能性があります [9][11]
- 2乳児期: アトピー性皮膚炎の早期治療(保湿+ステロイド) → 経皮感作の予防
- 4幼児期: 喘息の長期管理(ICS) → 気道リモデリングの予防
- 6学童期以降: 舌下免疫療法 → 新たなアレルゲン感作の予防、喘息悪化の予防
Vol.164、Vol.165、今号と3号続けてアレルギーの話をしているのは、アトピー・喘息・鼻炎はバラバラの病気ではなく、つながった一つのアレルギー体質の表れだからです。それぞれの治療をきちんと行うことが、お子さんのアレルギー全体のコントロールにつながります [5][11]
ポイント
- アレルギーマーチ: アトピー → 食物アレルギー → 喘息 → 鼻炎と進む [11]
- 各段階の適切な治療が次の段階への進展を予防 [9][11]
- アトピー・喘息・鼻炎はつながった一つのアレルギー体質の表れ [5]
まとめ
- アレルギー性鼻炎は通年性(ダニ)と季節性(花粉)の2タイプ。小児ではダニが最多 [1][2]
- 鼻づまりは睡眠障害・集中力低下・口呼吸・喘息悪化につながる。「たかが鼻」ではない [3][4]
- 治療: くしゃみ・鼻水には抗ヒスタミン薬、鼻づまりには鼻噴霧用ステロイド [1][4][6]
- 舌下免疫療法(ミティキュア・シダキュア)は5歳以上で開始可能。唯一の根本的体質改善 [7][8]
- ダニ対策は寝具が最重要。防ダニシーツ + 週1洗濯 + 湿度管理 [10]
- アレルギーマーチの各段階を適切に治療することが、次の疾患への進展予防になる [9][11]
あわせて読みたい
- Vol.087 子どもの花粉症(スギ花粉症の診断と治療)
- Vol.165 喘息の長期管理(one airwayの考え方)
- Vol.164 アトピー性皮膚炎の最新治療(アレルギーマーチの出発点)
- Vol.068 お口ぽかん(口呼吸)(鼻づまりによる口呼吸の影響)
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