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ARFID(回避・制限性食物摂取症)、"ただの偏食"とは違う摂食障害
Vol.50栄養・食事

ARFID(回避・制限性食物摂取症)、"ただの偏食"とは違う摂食障害

ARFID(回避・制限性食物摂取症)の症状・診断・治療

栄養・食事1〜3歳・3〜6歳・6〜12歳19
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 14·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • ARFIDは「ただの偏食」ではなく、治療が必要な摂食障害
  • 体重減少・栄養不足・社会生活への支障が特徴
  • 早期発見・早期介入で予後は良好

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.50

ARFID(回避・制限性食物摂取症)、「ただの偏食」とは違う摂食障害

今号のポイント

  1. 2
    ARFIDは「ただの偏食」ではなく、治療が必要な摂食障害
  2. 4
    体重減少・栄養不足・社会生活への支障が特徴
  3. 6
    早期発見・早期介入で予後は良好

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「うちの子、食べられるものが3〜4種類しかなくて、給食も食べられません……」、これは単なる偏食でしょうか? 実は、ARFID(回避・制限性食物摂取症)という摂食障害の可能性があります [1]。ARFIDは、拒食症(神経性やせ症)や過食症とは異なる摂食障害であり、小児期に多く発症します [2]。

今回は、ARFIDの症状・診断・治療 についてお伝えします。

Q1.「ARFIDって、どんな病気ですか?」

——ARFIDという言葉を初めて聞きました。どんな病気なんでしょうか?

ARFIDは、Avoidant/Restrictive Food Intake Disorderの略で、日本語では回避・制限性食物摂取症といいます [1]。簡単に言うと、食べることに極端な困難があり、栄養不足や成長障害を起こす摂食障害です

ARFIDの基本情報:

項目内容
正式名称Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder(回避・制限性食物摂取症) [1]
分類摂食障害(DSM-5に2013年に追加) [1]
好発年齢乳幼児〜学童期(成人でも起こりうる) [3]
男女比男児にやや多い(男:女 = 1.5:1) [4]
頻度小児の約1〜5% [5]

ARFIDは、2013年にDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)で新しく定義された摂食障害です [1]。それまでは「乳幼児期または小児期早期の摂食障害」と呼ばれていました

ARFIDと他の摂食障害の違い:

疾患体型へのこだわり食べない理由好発年齢
ARFIDなし食感・味・見た目が嫌、食べると具合が悪くなる小児期 [1]
神経性やせ症(拒食症)あり(太りたくない)体重増加への恐怖思春期以降 [6]
神経性過食症(過食症)あり過食→嘔吐思春期以降 [6]

つまり、ARFIDの子どもたちは、「太りたくない」とは思っていません [1]。食べたくても食べられない、または食べることに強い不安や嫌悪感がある、という状態です

ポイント

  • ARFIDは 回避・制限性食物摂取症という摂食障害 [1]
  • 体型へのこだわりはない(拒食症との違い) [1]
  • 小児期に多く発症する [3]
  • 小児の約 1〜5%に認められる [5]

Q2.「ARFIDの症状を教えてください」

——どんな症状があれば、ARFIDを疑えばいいですか?

ARFIDには、3つの主なタイプがあります [7]。お子さんによって、1つまたは複数のタイプが見られます

ARFIDの3つのタイプ:

タイプ1: 感覚回避型(Sensory-based avoidance)

特徴:

  • 特定の食感・味・におい・見た目が受け入れられない [7]
  • 食べられるものが極端に限られる
  • 新しい食べ物を試すことを強く拒否

例:

  • 「ドロドロしたものは絶対に食べられない」
  • 「白いご飯しか食べない」
  • 「野菜は見るだけで吐きそう」

タイプ2: 食欲低下型(Lack of interest in eating)

特徴:

  • 食べることへの興味・関心がない [7]
  • 空腹感を感じにくい
  • 食事を忘れる、食事時間が苦痛

例:

  • 「お腹が空いたという感覚がわからない」
  • 「食べることより遊びたい」
  • 「給食の時間が一番嫌い」

タイプ3: 恐怖回避型(Fear of aversive consequences)

特徴:

  • 食べることで具合が悪くなることへの恐怖 [7]
  • 過去の嘔吐・窒息・腹痛などの経験がきっかけ
  • 特定の食べ物や食べる状況を避ける

例:

  • 「前に吐いたから、あの食べ物は怖い」
  • 「喉に詰まるかもしれないから、固形物は食べられない」
  • 「給食で気持ち悪くなったから、学校では食べられない」

ARFIDの診断基準(DSM-5)[1]:

以下のすべてを満たす:

  1. 2

    食事摂取の回避・制限があり、以下の1つ以上が当てはまる:

    • 体重減少または成長不良
    • 重大な栄養不足
    • 経腸栄養や栄養補助食品への依存
    • 社会機能への著しい障害(給食が食べられない、外食できないなど)
  2. 4

    体型や体重への過度のこだわりはない

  3. 6

    他の医学的疾患や精神疾患では説明できない

「偏食」との違いは、栄養不足・成長障害・社会生活への支障があるかどうかです [1]。単に好き嫌いが多いだけなら、体重も身長も標準範囲で、給食も何とか食べられます。しかし、ARFIDの子どもは、食べられるものが極端に少なく、社会生活に支障が出ます [8]

ポイント

  • ARFIDには 3つのタイプがある: 感覚回避型、食欲低下型、恐怖回避型 [7]
  • 体重減少、栄養不足、社会生活への支障がある [1]
  • 体型へのこだわりはない(拒食症との違い) [1]
  • 「偏食」との違いは 生活への支障の程度 [8]

Q3.「ARFIDの診断はどうやってするんですか?」

——うちの子がARFIDかどうか、どうやって診断するんですか?

ARFIDの診断は、問診・身体診察・検査を組み合わせて行います [9]。小児科医、精神科医、栄養士が協力して評価します

ARFIDの診断プロセス:

① 詳しい問診

聞き取る内容:

  • 食事の内容(食べられるもの、食べられないもの)
  • 食事量(1日の摂取カロリー)
  • 食事への態度(嫌がる、拒否する、無関心)
  • 過去の経験(嘔吐、窒息、腹痛など)
  • 社会生活への影響(給食、外食、友人との食事)
  • 発達歴、家族歴

② 身体診察と検査

身体測定:

  • 体重、身長、BMI
  • 成長曲線のプロット(成長障害がないか確認) [10]

血液検査:

  • 栄養状態の評価: アルブミン、総蛋白、電解質、鉄、ビタミン [11]
  • 貧血の有無: ヘモグロビン、フェリチン
  • 甲状腺機能: TSH、FT4(体重減少の他の原因を除外)

ARFIDの診断で重要なのは、他の病気を除外することです [1]。例えば、消化器疾患(炎症性腸疾患、食物アレルギー)、甲状腺機能亢進症、自閉スペクトラム症などでも、食事摂取の困難が見られることがあります [12]

ARFIDと鑑別すべき疾患:

食べない理由

神経性やせ症(拒食症)
太りたくない
自閉スペクトラム症
感覚過敏、こだわり
食物アレルギー
アレルギー反応が怖い
消化器疾患
腹痛、下痢
不安障害
食事場面での不安

鑑別ポイント

神経性やせ症(拒食症)
体型へのこだわりあり [6]
自閉スペクトラム症
他の自閉症状あり [13]
食物アレルギー
IgE検査陽性
消化器疾患
器質的異常あり
不安障害
他の場面でも不安あり

特に、自閉スペクトラム症とARFIDは併存することが多いです [13]。自閉スペクトラム症の子どもの約50%に、何らかの摂食の問題があると報告されています [13]

ポイント

  • 診断は 問診・身体診察・検査の組み合わせ [9]
  • 成長曲線、栄養状態の評価が重要 [10][11]
  • 他の病気(拒食症、自閉症、消化器疾患など)を除外する [12]
  • 自閉スペクトラム症と 併存することが多い [13]

Q4.「ARFIDの治療はどうするんですか?」

——もしARFIDと診断されたら、どんな治療をするんですか?

ARFIDの治療は、多職種連携が基本です [14]。小児科医、精神科医、心理士、栄養士、作業療法士などがチームで関わります

ARFIDの治療アプローチ:

① 栄養療法

目標:

  • 栄養不足を改善
  • 成長を正常化

方法:

  • 栄養補助食品: エンシュア、エレンタールなど [15]
  • 経腸栄養: 重度の栄養不足では胃管栄養や経腸栄養を検討 [15]
  • 食事指導: 管理栄養士による個別指導

② 行動療法

タイプ別のアプローチ:

感覚回避型:

  • 系統的脱感作: 食べ物に徐々に慣れる [16]
    • 見る → 触る → においを嗅ぐ → 舐める → 少量食べる → 増やす
  • 食物連鎖法: 食べられるものから似たものへ広げる [17]
    • 例: 白いご飯 → おにぎり → 具入りおにぎり → チャーハン

食欲低下型:

  • 食事のルーティン化: 決まった時間・場所で食べる [18]
  • 少量頻回食: 1回の量を減らし、回数を増やす
  • 楽しい食事環境: ストレスを減らす

恐怖回避型:

  • 認知行動療法(CBT): 恐怖を和らげる [19]
  • 曝露療法: 恐れている食べ物や状況に段階的に慣れる [19]
  • リラクゼーション: 不安を減らす技法

③ 家族支援

親へのサポート:

  • 食事の無理強いは逆効果 [20]
  • 食べられたことを褒める(褒賞強化)
  • 家族全体のストレス管理

④ 環境調整

学校との連携:

  • 給食への配慮(食べられるものを持参、量を減らすなど)
  • クラスメートへの理解促進
  • 食事場面でのプレッシャーを減らす

ARFIDの治療には時間がかかります [14]。数ヶ月〜数年かかることも珍しくありません。焦らず、小さな進歩を喜びながら、長期的に取り組むことが大切です

治療の成功のポイント:

  1. 2
    早期介入: 早く始めるほど予後が良い [21]
  2. 4
    多職種連携: チームで支える [14]
  3. 6
    家族の協力: 親の理解とサポートが不可欠 [20]
  4. 8
    個別化: 子どもに合わせたアプローチ [14]

ポイント

  • 治療は 多職種連携が基本 [14]
  • 栄養療法 + 行動療法 + 家族支援の組み合わせ [14]
  • タイプ別にアプローチを変える [16][17][18][19]
  • 早期介入が重要 [21]

Q5.「ARFIDは治りますか? 予後はどうですか?」

——ARFIDになったら、一生食べられないままなんでしょうか?

いいえ。早期に適切な治療を受ければ、多くの子どもは改善します [21]。ただし、治療には時間がかかり、長期的なサポートが必要です

ARFIDの予後:

項目内容
改善率部分入院プログラムで約60〜70%が改善(外来では報告が異なる可能性)[22]
治療期間数ヶ月〜数年 [14]
完全寛解約30〜40%が完全に食事制限がなくなる [22]
部分寛解約30〜40%は食事の幅が広がるが、一部制限が残る [22]
難治例約20〜30%は治療抵抗性 [22]

予後を良くする要因:

  • 早期発見・早期介入 [21]
  • 軽症(食べられるものが比較的多い)
  • 単独型(他の精神疾患の併存なし)
  • 家族のサポートが良好 [20]
  • 治療への動機づけが高い

予後を悪くする要因:

  • 診断・治療の遅れ
  • 重度の栄養不足・成長障害
  • 自閉スペクトラム症などの併存 [13]
  • 親子関係の問題
  • 治療へのアクセスが悪い

ARFIDは、「治らない病気」ではありません [21]。ただし、放置すると、栄養不足・成長障害が悪化し、治療が難しくなります [23]。だからこそ、早期発見・早期介入が重要なのです [21]

ARFIDの長期的な影響(治療しない場合):

影響内容
成長障害低身長、低体重 [23]
栄養不足貧血、ビタミン欠乏、骨粗鬆症 [23]
社会生活の制限外食、修学旅行、友人との食事ができない [8]
精神的問題不安、抑うつ、孤立 [24]
学業への影響集中力低下、欠席増加

親へのメッセージ:

お子さんが食べないことで、保護者の方は「私の育て方が悪かったのか」と自分を責めてしまいがちです [20]。しかし、ARFIDは親の育て方のせいではありません [1]。脳の感覚処理や不安反応の違いが関係している医学的な疾患です [1]。一人で抱え込まず、専門家に相談してください

ポイント

  • 適切な治療で 約60〜70%が改善 [22]
  • 早期介入が予後を良くする [21]
  • 放置すると 成長障害・社会生活の制限が悪化 [23]
  • 親の育て方のせいではない [1]

まとめ

  • ARFIDは 回避・制限性食物摂取症という摂食障害
  • 体型へのこだわりはないが、食事摂取に極端な困難がある
  • 体重減少、栄養不足、社会生活への支障が特徴
  • 治療は 栄養療法 + 行動療法 + 家族支援の組み合わせ
  • 早期発見・早期介入で約60〜70%が改善

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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