愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.361
離乳食ストレス:手作りしなきゃダメ?
「離乳食、手作りしていますか?」。この質問が怖い、というお母さんは少なくありません。
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
厚生労働省の調査では、離乳食について何らかの困りごとを抱えている保護者は74.1%にのぼります [1]。今回は、離乳食にまつわるストレスから自分を解放する話をします。
市販のベビーフードで、まったく問題ありません
結論から言います。市販のベビーフードで問題ありません。罪悪感を持つ必要はゼロです。
日本のベビーフードは食品衛生法と乳児用食品の規格基準に基づき、厳しい安全基準を満たしています。手作り中心の家庭と市販中心の家庭で、12か月時点の成長や栄養状態に有意な差はなかったという研究結果もあります [2]。
手作りへのこだわりが睡眠を削る原因になっていたり、作ったのに食べてくれないと怒りが湧いたり、離乳食が1日の最大ストレス源になっているなら、本末転倒です。

おかもん先生より
子どもにとって大切なのは、離乳食が手作りかどうかではなく、食事の時間が安心できる場であることです。疲弊した顔で手作り離乳食を出すよりも、笑顔で市販のベビーフードを出すほうが、子どもにとってはよい環境です。
食べてくれない。でも、栄養は足りています
頑張って作っても一口で拒否される。心が折れますよね。でもあなただけではありません。厚労省の調査で「食べる量が少ない」と答えた保護者は21.8%、「食べ物の種類が偏っている」は21.2%と、多くの家庭が同じ悩みを抱えています [1]。
そして大事なことを伝えさせてください。1歳までは母乳やミルクが主な栄養源であり、離乳食はあくまで「補完食」です。WHOも、68か月では必要エネルギーの約23割を補えればよいとしています [3]。
食べないときは無理に食べさせず、30分で切り上げてください。家族が食べている姿を見せる、食材の形状を変えてみる、数日おいてから再チャレンジする、という対応で十分です。双子研究では食物新奇恐怖の遺伝率は78%と報告されています。食べない子は育て方の問題ではなく、その子の気質による部分が大きいんです。
成長曲線が正常範囲内なら、食べムラがあっても心配いりません。離乳食の目的は「完璧な栄養を与えること」ではなく「食べることに慣れる練習期間」です。
アレルギーが怖い。でも「先延ばし」がいちばんのリスクです
卵を食べさせるのが怖くて、ずっと先延ばしにしている。気持ちはわかります。でも、最新の研究では、アレルゲンの導入を遅らせることがむしろリスクを高める可能性があると示されています。
ピーナッツアレルギーの高リスク児に生後4~11か月から少量ずつ摂取させた研究では、アレルギー発症率が81%低下しました [4]。日本でも、生後6か月から加熱卵粉末を少量ずつ導入した研究で、卵アレルギーの発症率が有意に低下しています [5]。
安全に進めるポイントは、新しい食材は平日の午前中に少量から(何かあったら受診できる時間帯に)、1食材ずつ2~3日間隔で、加熱した状態で与える(特に卵)、心配なら小児科で相談してから始める、です。
怖いから先延ばしにする気持ちはわかります。でも、かかりつけの小児科医と相談しながら、適切な時期に始めることが大切です。
離乳食の目的を、もう一度考え直してみませんか
離乳食のストレスから解放されるには、まず目的を再定義することが大事です。
市販のベビーフードをストックしておく(「手抜き」ではなく「合理的選択」です)。食べなかったら片づける。30分以上粘らない。SNSの離乳食アカウントをミュートする。パートナーや家族と離乳食担当を分担する。かかりつけ小児科医に体重の推移を確認してもらって安心材料にする。
離乳食期は長くても1年程度です。この期間に完璧を求めてお母さんが追い詰められるほうが、子どもにとってはよほど問題です。

おかもん先生より
あなたが笑顔でいられることが、子どもにとって最高の栄養です。離乳食で自分を追い詰めないでください。
今号のまとめ
- 市販のベビーフードは栄養・安全面で十分。手作りと発育に有意差はない
- 離乳食を食べないのは困りごと上位。1歳まで主な栄養源は母乳・ミルク
- アレルゲン導入の先延ばしはむしろリスクを高める。適切な時期に少量から
- 食の好みは遺伝的要因が大きく、他の子との比較は不要
- 離乳食は「食べる練習期間」。完璧を求めず、母親の余裕を優先する
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ご質問・ご感想
「離乳食のここが困っている」「こうやって乗り切りました」など、体験談やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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