愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.136
「検査の数字が気になります」、発達検査の読み方
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
発達検査を受けたあと、「IQは○○でした」「DQは○○です」と数字だけ伝えられても、意味がつかみにくいですよね。大事なのは数字の上下ではなく、お子さんの得意と苦手のパターン。日々の関わり方に活かすことが目的です。今回は代表的な検査の読み方を整理します。
Q1.「発達検査にはどんな種類がありますか?」
——発達検査を受けるよう勧められました。どんな検査ですか?
お子さんの年齢と検査の目的で、使う検査が変わります [1]。
対象年齢
- 新版K式発達検査
- 0歳〜成人
- WISC-V(ウィスク・ファイブ)
- 5-16歳
- 田中ビネー知能検査V
- 2歳〜成人
- KABC-II
- 2歳6か月-18歳
特徴
- 新版K式発達検査
- 発達の全体像を把握。乳幼児に適している
- WISC-V(ウィスク・ファイブ)
- 知能の構造を詳しく分析。学童期に多用
- 田中ビネー知能検査V
- 全体的なIQを算出。知的水準の判定に使用
- KABC-II
- 認知処理と習得度を分けて評価
「どの検査を使うかは、お子さんの年齢と検査の目的によって専門家が判断します。」
ポイント
- 年齢と目的に応じた検査がある
- 乳幼児はK式、学童期はWISCが多い
- どの検査にするかは専門家が判断
Q2.「IQやDQの数値はどう読めばいいですか?」
——IQ90と言われました。低いのでしょうか?
IQ(知能指数)やDQ(発達指数)は、同じ年齢の平均を100とした指標です [2]。
IQ/DQ
- 非常に高い
- 130以上
- 高い
- 115-129
- 平均
- 85-114
- やや低い
- 70-84
- 知的障害の範囲
- 69以下
全体の割合
- 非常に高い
- 約2%
- 高い
- 約14%
- 平均
- 約68%
- やや低い
- 約14%
- 知的障害の範囲
- 約2%
「IQ90は平均の範囲です。測定には信頼区間(WISC-Vの全検査IQで95%信頼区間はおおむね±5前後 [3])があることも覚えておいてください。IQはお子さんの一側面にすぎず、数字だけで将来が決まるものではありません。」
ポイント
- IQ/DQは平均100、68%の子が85-114の範囲
- 測定には信頼区間がある(数値で一喜一憂しない)
- 数値はお子さんの一側面に過ぎない
Q3.「WISCの結果はどう読みますか?」
——WISCの結果で、項目ごとに数値が違います
WISC-Vでは、全検査IQ(FSIQ)に加えて5つの主要指標が出ます [3]。指標間の差(ディスクレパンシー)がお子さんの特性を読み解く鍵です。
測定する力
- 言語理解(VCI)
- 言葉の知識、推理力
- 視空間(VSI)
- 目で見て空間的に理解する力
- 流動性推理(FRI)
- 初めての問題を論理的に解く力
- ワーキングメモリー(WMI)
- 情報を一時的に保持・操作する力
- 処理速度(PSI)
- 単純な作業を素早く正確に行う力
低い場合の困り事
- 言語理解(VCI)
- 指示の理解、説明が苦手
- 視空間(VSI)
- 図形、地図、整理整頓が苦手
- 流動性推理(FRI)
- 応用問題、パターン認識が苦手
- ワーキングメモリー(WMI)
- 聞きながらメモ、暗算が苦手
- 処理速度(PSI)
- テストの時間不足、板書が遅い
「たとえばVCIが130・PSIが85のお子さんは、理解は抜群なのに書く作業が追いつかない、という困り方をします。差が大きいほど、本人の中の葛藤も大きくなります。」
ポイント
- WISCは5つの指標で認知の特徴を把握
- 指標間の差(凸凹)が特性を理解する鍵
- 差が大きいほど困り感が生じやすい
Q4.「検査結果をどう日常に活かせばいいですか?」
——数値は分かりましたが、どう活かせばいいですか?
検査結果は、お子さんへの関わり方を調整するためのツールです [4]。
| 検査で分かった特性 | 日常での工夫 |
|---|---|
| 言語理解が低い | 短い文で伝える、視覚的な指示を使う |
| ワーキングメモリーが低い | 一度に一つずつ指示、メモ・チェックリスト活用 |
| 処理速度が低い | 時間に余裕を持たせる、テストの時間延長 |
| 視空間が低い | 片付けの手順を視覚化、持ち物チェック表 |
| 言語理解が高い | 言葉で説明する方が理解しやすい |
「学校には、検査結果にもとづいた合理的配慮を具体的にお願いできます。たとえば『ワーキングメモリーが低いので、指示は一つずつお願いします』と伝えると、先生も対応しやすくなります。」
ポイント
- 検査結果は関わり方を最適化するツール
- 苦手に合わせた工夫で困り感が減る
- 学校への合理的配慮の根拠になる
Q5.「検査は定期的に受けるべきですか?」
——一度受ければ十分ですか?
同じ検査は1〜2年以上の間隔を空けて再検査するのが原則です [5]。
| 再検査のタイミング | 理由 |
|---|---|
| 就学前 | 就学相談の資料として |
| 入学後1-2年 | 学校適応の確認、支援の見直し |
| 中学進学前 | 進路選択の参考 |
| 困り感が変化した時 | 新たな課題への対応策を検討 |
「間隔が短いと練習効果が入り込み、正確な結果が出にくくなります。最低1年、できれば2年以上空けてください。」
ポイント
- 同じ検査は1-2年以上空けて再検査
- ライフイベント(就学・進学)前が良いタイミング
- 練習効果に注意
今号のまとめ
- 発達検査はお子さんの特性を理解するためのツールです
- IQ/DQは平均100。数値だけに一喜一憂しない
- WISCの指標間の差が特性を理解する鍵
- 検査結果を日常の関わり方や学校への配慮に活かしましょう
- 再検査は1-2年以上の間隔を空けて
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