小児科おかもん先生 だより Vol.390
「食事量の目安、本当の話」
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。 「うちの子、食事量が少ないんじゃないでしょうか」は外来で毎日のように聞かれます。育児本やアプリに書いてある「1食○g」に届かなくて、毎食ハラハラしている。本当に多いです。 今回は厚生労働省の最新ガイドラインと、外来でいつもお話ししている内容をもとに、現実的に役に立つ食事量の考え方をお伝えします。
年齢別の食事量の目安を教えてください
1歳半の子に、どれくらい食べさせれば足りているのかが分かりません。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、小児のエネルギー必要量の目安が示されています [1]。令和7年度(2025年)から適用される最新版です。
| 年齢 | 推定エネルギー必要量(男/女、kcal/日) |
|---|---|
| 1〜2歳 | 950 / 900 |
| 3〜5歳 | 1300 / 1250 |
| 6〜7歳 | 1550 / 1450 |
| 8〜9歳 | 1850 / 1700 |
| 10〜11歳 | 2250 / 2100 |
1日量を3食+おやつ(1〜2回)で割ると、1食あたりのおよその目安量が見えてきます。
ただし強調したいのは、この数値はあくまで集団平均の目安だということです。2025年版の報告書自体が、小児を対象とした研究は少なく成人からの外挿が多いと限界を明記しています [1]。
個人差は非常に大きく、同じ年齢でも必要量は20〜30%ほどブレます。

おかもん先生より
外来で「1食120gと書いてあるのに、うちの子は80gしか食べないんです」と数値をノートに記録して持ってこられるお母さんがよくいます。真剣に向き合っておられる証ですが、その数字に縛られすぎると親子ともに辛くなります。数値は地図の目盛りくらいに考えるのが健康的です。
ポイント
- 2025年版食事摂取基準が最新の目安
- 1食量の数値には±20〜30%の個人差がある
- 目安は「縛られるもの」ではなく「参考にするもの」
毎食きちんと食べさせないとダメですか?
朝はあまり食べず、昼は普通、夜はたくさん食べる日があります。こういうムラがあって大丈夫ですか?
まったく問題ありません。むしろ発達的には正常です。
発達栄養学の古典とされる Birch らの研究では、2〜5歳の子どもを対象に、1食ごとの摂取量と1日合計の摂取量を比較しました [2]。
| 指標 | 変動係数(CV) |
|---|---|
| 1食ごとの摂取エネルギー | 33.6% |
| 1日合計の摂取エネルギー | 10.4% |
つまり、食事ごとには大きく変動していても、1日トータルでは各子がかなり一定の量を摂っていることが明らかになりました。子どもは体に必要な量を自分で調整する能力を生まれながらに持っているのです [2]。
「朝ほとんど食べなかったから、昼は無理してでも」と思う必要はありません。1食で考えず、1日、できれば数日単位で捉えると、不安が軽くなります。

おかもん先生より
「今日はほとんど食べなかった」と夜に心配になっても、翌朝お腹を空かせてモリモリ食べるお子さんを見ると、身体がちゃんと調整していることが実感できます。外来では私自身の子どもでも「1週間単位でバランス」と考えるようお話しします。
ポイント
- 1食ごとの変動はCV約33%、1日合計では約10%と安定
- 子は自己調整能力を持って生まれている
- 1食ではなく1〜3日単位で見るのが正解
量が足りているか、何で判断すればいいですか?
数値に縛られないのは分かりましたが、じゃあ何を目安にすればいいでしょうか。
最も信頼できる指標は成長曲線です [3]。日本小児内分泌学会・厚生労働省の乳幼児身体発育調査に基づく成長曲線(パーセンタイル曲線)で、お子さんの身長・体重が自分のカーブに沿って伸びているかを確認してください。
| 状態 | 評価 |
|---|---|
| 自分のカーブに沿って伸びている | 量は足りている |
| カーブが下に2本以上下降 | 栄養評価が必要 |
| 体重だけ横ばいが続く | 受診を検討 |
| パーセンタイルを超えて上昇 | 過剰な可能性 |
その他のチェックポイント:
- 機嫌が良く、日中の活動レベルが保たれている
- 睡眠が安定している
- 便通が週4回以上ある
- 風邪をこじらせない(免疫機能の間接指標)
これらが揃っていれば、たとえ親から見て「少食」でも、医学的には足りていると判断できます。
母子手帳の成長曲線は自宅で記録できます。1〜3ヶ月に1度、身長・体重をプロットして点を線で結ぶだけで、お子さんの「トレンド」が可視化できます。
ポイント
- 成長曲線が最も信頼できる指標
- 自分のカーブに沿っていれば量は十分
- 機嫌・活動・睡眠・便通も参考指標
それでも心配な時はどうすれば?
成長曲線は大丈夫そうですが、あまりに食べなくて本当に不安です。
まず、3〜7日間の食事記録をつけることをおすすめします。意外と食べていることに気づくケースがほとんどです。
2015年の Kerzner らの分類(NASPGHAN推奨)では、食事の問題を以下のように整理しています [4]。
特徴
- 少食(limited appetite)
- エネルギー必要量が少ないだけ
- 神経質な食べ方
- 好き嫌いが多い
- 食べる恐怖
- 過去の窒息・嘔吐体験後
- 器質的問題
- 嚥下・消化器疾患
対応
- 少食(limited appetite)
- 成長曲線OKなら様子見
- 神経質な食べ方
- 提示を続ける
- 食べる恐怖
- 心理的サポート
- 器質的問題
- 医学的評価が必要
多くのケースは最初の「少食タイプ」で、体質的にエネルギー必要量が少ないだけ。無理に増やす必要はありません [4]。
以下のサインがあれば受診をおすすめします。
- 成長曲線から下に逸脱している
- 体重が減少している
- 食事のたびに嘔吐・嘔吐反射がある
- 食べられるものが極端に少ない(10品目以下)
- 疲れやすい・元気がない

おかもん先生より
食事量の相談で来られた方に、まず3日分の食事記録をつけていただくと、9割以上のケースで「思っていたより食べていました」と安心されます。記憶は不安で色付けされるので、実際に書き出してみると現実がずっと穏やかに見えてくるんです。
ポイント
- 3〜7日の食事記録で客観視する
- 多くは「少食タイプ」で体質的なもの
- 成長曲線からの逸脱があれば受診を
今号のまとめ
- 2025年版食事摂取基準の数値はあくまで集団平均の目安
- 1食ごとの変動は大きくても、1日合計では自然にバランスが取れる
- 最も信頼できる指標は成長曲線
- 心配な時は3〜7日の食事記録で客観視する
- 数値に縛られず、子の内なる調整能力を信頼する
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- Vol.388「野菜を食べない子、どうすれば?」
- Vol.393「食べムラがひどい」
- Vol.397「おかわりと食べ過ぎ」
ご質問・ご感想
お子さんの食事についてお悩みのことがありましたら、お気軽にご相談ください。次回の Vol.391 では「白米しか食べない」についてお話しします。
おかもん先生
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