愛育病院 小児科おかもん だより Vol.22
「頭の形がいびつ。まぶたに赤いあざ」、焦らなくていい理由
今号のポイント
- 2向き癖による頭の変形は乳児期によく見られ(生後7週頃で約20%)、多くは成長とともに自然に改善する
- 4タミータイム(うつ伏せ訓練)が最も有効な対策。ドーナツ枕は効果なし
- 6サーモンパッチや蒙古斑など新生児のあざの多くは自然に消える
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
1ヶ月健診でよく聞かれる相談の1つが「いつも同じ方向を向いている(向き癖)」と「頭の形がいびつ」、そして「赤ちゃんのあざ」です。
安心してください。向き癖による頭の形の変化は、ほとんどが1歳頃までに自然に改善します。 あざについても、多くは成長とともに消えていきます。
今回は、これらの多くが心配いらないことと、注意すべきサインを整理します。
Q1.「いつも右ばかり向いています。頭の形が心配です」
お父さん「生まれたときから右ばかり向いていて、頭の右後ろが平らになってきた気がします」
これは位置的頭蓋変形(positional plagiocephaly)と呼ばれるもので、とてもよくある状態です。頻度は月齢によって変わりますが、生後7週頃で約20%前後とされ、成長とともに下がっていきます [1]
お父さん「そんなに多いんですか。原因は何ですか?」
赤ちゃんの頭蓋骨はまだ柔らかく、外からの圧力で簡単に形が変わります。向き癖で同じ場所ばかり下になっていると、その部分が平らになるのです。原因としては
- 子宮内での姿勢: 長期間同じ体勢だった
- 分娩時の影響: 産道を通る際の圧力
- 仰向け寝の習慣: SIDS(乳幼児突然死症候群)予防で仰向け寝が推奨されてから増加
1992年にSIDS予防のため「仰向け寝キャンペーン」が始まって以降、位置的頭蓋変形は増加しています。これはSIDS予防のほうが優先度が高いため、仕方のないことです
ポイント
- 位置的頭蓋変形は乳児期に多く、生後7週頃で約20%前後 [1]
- 頭蓋骨が柔らかいため、圧力で形が変わる
- SIDS予防の仰向け寝は最優先。やめてはいけない
Q2.「向き癖を治す方法はありますか?」
お父さん「ドーナツ枕を使ったほうがいいですか?」
ドーナツ枕の効果は科学的には証明されていません。むしろ窒息のリスクがあるため、日本小児科学会は新生児への枕の使用を推奨していません。代わりに以下の方法が有効です
家庭でできる対策:
- 2タミータイム(腹臥位訓練): 起きている時に、大人が見守りながらうつ伏せの時間を作る。1日合計30分以上を目標に [2]
- 4向き癖と反対側からの刺激: おもちゃや声かけを反対側から行う
- 6授乳の向きを交互に: 右からばかりでなく左右交互に
- 8抱っこの向きを変える: 向き癖と反対側を向く姿勢で抱く
タミータイムは首すわりの発達を促す効果もあるので、一石二鳥です。最初は1〜2分から始めて、徐々に時間を延ばしてください。ただし、必ず目を離さないこと
お父さん「ヘルメット療法というのも聞きました」
重度の頭蓋変形に対しては、ヘルメット療法が選択肢になります。生後4〜6ヶ月が最適な開始時期とされています [3]。ただし、多くの位置的頭蓋変形は1歳頃までに自然に改善します。まずはタミータイムなどの体位変換を行い、改善が見られない場合に専門医への紹介を検討します
ポイント
- ドーナツ枕は効果なし+窒息リスク。使わないで
- タミータイム(うつ伏せ訓練)が最も有効(1日30分以上)[2]
- ヘルメット療法は生後4-6ヶ月が最適。多くは1歳頃に自然改善
Q3.「向き癖と「筋性斜頸」は違うんですか?」
お父さん「ネットで「先天性筋性斜頸」という怖い名前を見ました」
先天性筋性斜頸は、首の横にある胸鎖乳突筋にしこりができて、首が一方に傾く状態です。向き癖との違いは次の通りです
向き癖(正常)
- 首の動き
- 反対側にも動く
- しこり
- なし
- 頭の傾き
- 軽度
- 経過
- 自然に改善
先天性筋性斜頸
- 首の動き
- 反対側に動かしにくい
- しこり
- 首の横に硬いしこりがある
- 頭の傾き
- 常に同じ側に傾いている
- 経過
- リハビリが必要な場合あり
もう1つ、絶対に見逃してはいけないのが頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis)です。これは頭蓋骨の縫合線が早期に閉じてしまう病気で、手術が必要です。位置的頭蓋変形との最大の違いは、頭を上から見たときの形です
- 位置的頭蓋変形: 平行四辺形(菱形)に変形
- 頭蓋縫合早期癒合症: 台形に変形(片側のおでこが出っ張る)
1ヶ月健診で医師が頭の形を確認しますので、気になる場合はご相談ください
ポイント
- 向き癖は反対側にも首が動くなら心配なし
- 首に硬いしこりがあれば先天性筋性斜頸の可能性 → 受診を
- 頭蓋縫合早期癒合症との鑑別が重要(健診でチェック)
Q4.「まぶたに赤いあざがあります。消えますか?」
お父さん「生まれたときから、まぶたとおでこの間に赤いあざがあります。治りますか?」
それはサーモンパッチ(正中母斑)と呼ばれる、最も一般的な新生児のあざです。新生児の約30-40%に見られます [4]
お父さん「そんなに多いんですか!」
はい。出現部位はまぶた、額の中央、うなじが多いです。このあざの正体は毛細血管の拡張で、泣いたり入浴したりすると赤みが目立つことがあります
| 部位 | 消失時期 |
|---|---|
| まぶた | 1〜2歳でほぼ消失 |
| 額(中央) | 1〜2歳でほぼ消失 |
| うなじ | 約50%は成人まで残る(ウンナ母斑) |
うなじに残るものはウンナ母斑(stork bite = コウノトリの噛み跡)とも呼ばれ、髪に隠れるため美容的に問題になることはほとんどありません。治療は不要です
ポイント
- サーモンパッチは新生児の30-40%に見られる最も一般的なあざ [4]
- まぶた・額のものは1-2歳で消失
- うなじのもの(ウンナ母斑)は約50%が残るが、髪に隠れるため問題なし
Q5.「お尻以外の場所にも青いあざがあるのですが……」
お父さん「蒙古斑はお尻にあるものだと思っていましたが、背中や腕にもあります。大丈夫ですか?」
お尻以外にある蒙古斑を異所性蒙古斑と呼びます。日本人の赤ちゃんの約90%以上が蒙古斑を持っており、その一部はお尻以外にも出現します [5]
赤ちゃんのあざの種類を整理しましょう:
| あざの種類 | 色 | 特徴 | 経過 |
|---|---|---|---|
| 蒙古斑 | 青〜青灰色 | お尻・腰 | 学齢期までに消退 |
| 異所性蒙古斑 | 青〜青灰色 | 背中・腕・足 | 消退が遅いことも |
| いちご状血管腫 | 赤 | 生後数週で出現→増大 | 多くは5-7歳で消退 |
| 太田母斑 | 青〜褐色 | 顔面(片側) | 自然消退しない→レーザー治療 |
注意が必要なのはいちご状血管腫(乳児血管腫)です。これは生後数週間で急に赤く盛り上がってくるあざで、多くは自然に退縮しますが、目の近く(視野を遮る場合)や唇(潰瘍化する場合)にできたときは早めの治療(プロプラノロール内服)が必要です [6]
お父さん「いちご状血管腫は放っておいてもいいんですか?」
場所と大きさによります。体幹にある小さなものは経過観察でOKですが、増大期(生後1〜5ヶ月)に急に大きくなる場合は早めに受診してください。プロプラノロールという薬で効果的に治療できます
ポイント
- 蒙古斑は日本人の90%以上にあり、学齢期までに消退 [5]
- 異所性蒙古斑(お尻以外)も基本的には心配なし
- いちご状血管腫は場所次第で早期治療が必要 → プロプラノロール [6]
まとめ
- 向き癖と頭の形: タミータイムで対策。多くは1歳頃に自然改善
- サーモンパッチ: 新生児の30-40%に。まぶた・額は1-2歳で消失
- 蒙古斑: 日本人の90%以上に。学齢期までに消退
- いちご状血管腫: 目や唇の近くは早めに受診
気になるあざや頭の形は、健診時にお気軽にご相談ください。
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