愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.460
「3歳児健診・5歳児健診で何を見ている?」、見落としやすい発達・視聴覚のサイン
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「3歳児健診で特に問題なしと言われたから大丈夫」、そう思っていても、実は家庭での事前検査で見落としがあったり、3歳では見えにくい発達特性が後になって顕在化することがあります。幼児期(3〜6歳)の健診は、乳児期の健診以上に「家庭の気づき」と「集団生活での気づき」が診断に直結します。今回は、3歳児健診と5歳児健診で実際に何を見ているのか、そして見落としやすいサインについて整理します。
Q1.「3歳児健診は何のために行うのですか?」
——1歳半健診のあと、次は3歳と聞きました。何を確認するのですか?
3歳児健診は母子保健法に基づく法定健診で、身体発育・発達・視覚・聴覚・歯科・生活習慣を総合的に評価します [1]。幼児期の発達の節目にあたる時期です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 身体計測 | 身長・体重・頭囲・胸囲、成長曲線で評価 [1] |
| 一般診察 | 全身状態・心雑音・陰部・皮膚 [1] |
| 発達評価 | 言語・運動・社会性 [1] |
| 視覚検査 | 家庭で事前実施(片眼ずつのランドルト環等) [1][3] |
| 聴覚検査 | 家庭で事前実施(ささやき声・絵指示) [1] |
| 歯科健診 | う蝕・咬合・口腔清掃 [1] |
| 尿検査 | 蛋白・糖・潜血 [1] |
| 保健指導 | 生活習慣・栄養・事故予防 [1] |
| 港区の3歳児健診 |
|---|
| 対象年齢前後で個別通知が届く |
| 各地区総合支所の保健福祉センターで実施 |
| 事前に視覚・聴覚の家庭検査を実施して持参 |
ポイント
- 3歳児健診は母子保健法の法定健診 [1]
- 身体・発達・視覚・聴覚・歯科を総合評価 [1]
- 視覚・聴覚は家庭での事前検査が前提 [1]
Q2.「3歳児健診の視覚検査、家庭でやる意味は?」
——家で視力検査を頼まれましたが、適当にやっても意味があるのでしょうか?
家庭での事前検査は非常に重要です。3歳児健診は弱視(amblyopia)を早期に発見する国内で最大の機会で、6歳頃までに治療を始めないと視力の発達が間に合わないことがあります [3][4]。
| 弱視の基礎知識 [3][4] |
|---|
| 頻度は小児の約2〜3%、国内で毎年1万人以上の新規例 |
| 不同視弱視・屈折異常弱視・斜視弱視・形態覚遮断弱視などに分類 |
| 治療の基本は眼鏡装用・アイパッチ・屈折矯正 |
| 視力の感受性期(critical period)は6〜8歳頃まで |
| 家庭で見逃されやすい場面 |
|---|
| 片眼ずつ遮蔽して試していない |
| 検査距離や明るさが不適切 |
| 子どもが記号を暗記してしまい両眼視で通過 |
| 「見えている」という子どもの訴えを鵜呑みにする |
| 近年は機器スクリーニングの活用も進む |
|---|
| Spot Vision Screener等の屈折スクリーニング機器 [3] |
| 家庭検査が困難な場合の補完として有効 [3] |
ポイント
- 弱視は6歳頃までの治療開始が重要 [3][4]
- 家庭検査は片眼ずつ・距離・明るさを守る [3]
- 怪しい場合は眼科を早めに受診
Q3.「聴覚検査で見落としやすいパターンは?」
——呼ぶと振り向くので聞こえていると思いますが、それで大丈夫ですか?
振り向きだけでは軽度難聴や片耳難聴は見逃されます [5]。3歳児健診では『絵指示』『ささやき声』等で片耳ずつ確認することが推奨されます [1][5]。
| 見落としやすい難聴パターン [5] |
|---|
| 片側性難聴:反対側で聞いているため気づかれにくい |
| 軽度難聴:静かな環境では反応できる |
| 中耳炎による伝音難聴:風邪と共に変動する |
| 言語発達の遅れが初発所見となることがある |
| 家庭でのチェックポイント |
|---|
| テレビの音量を上げたがる |
| 名前を呼んでも反応しないことがある |
| 発音が不明瞭、語彙が少ない |
| 真後ろから小声で呼んで反応を確認 |
| 疑わしい場合の対応 |
|---|
| 耳鼻咽喉科で純音聴力検査・ティンパノメトリー [5] |
| 必要に応じて言語聴覚士による評価 |
| 保育園・幼稚園での様子も共有 |
ポイント
- 振り向きだけでは軽度・片側難聴を見逃す [5]
- 言語発達の遅れが初発サインになることがある [5]
- 疑わしければ耳鼻咽喉科で評価
Q4.「5歳児健診と3歳児健診の違いは?」
——3歳で『異常なし』でしたが、5歳児健診も必要ですか?
5歳児健診は発達特性の早期発見に特化した健診で、3歳児健診と就学時健診の間のブランクを埋めます [2]。集団生活を経験した4〜5歳で顕在化する特性を見ます [2]。
| 5歳児健診で重点的に見るもの [2] |
|---|
| 注意欠如・多動症(ADHD)の兆候 |
| 自閉スペクトラム症(ASD)の社会性の特徴 |
| 学習障害(LD)につながる認知特性 |
| 運動発達(微細運動・協調運動) |
| 情緒・適応 |
| 集団生活で初めて顕在化する理由 |
|---|
| 家庭の一対一では目立たない |
| 保育園・幼稚園で初めて「集団ルール」「同年代交流」が要求される |
| 言語・注意・遂行機能の総合発揮が必要 |
| 港区の5歳児健診 |
|---|
| 各地区の保健福祉センターで実施 |
| 保護者アンケート・園からの情報提供も活用 |
| 必要時は発達相談・療育・就学支援につなげる |
ポイント
- 5歳児健診は発達特性の早期発見に特化 [2]
- 集団生活で顕在化する特性を拾う [2]
- 就学前支援の入口として重要 [2]
Q5.「家庭で気になる発達のサインは?」
——5歳児健診の前に、家庭でどんなところを見ておけばよいですか?
『集団の中での様子』と『日常生活のひっかかり』を整理しておくと健診で役立ちます [2][6]。特定のサインが一つあるから診断というわけではなく、複数領域の総合評価になります [6]。
| 社会性・コミュニケーション [6] |
|---|
| 同年代の子どもと一緒に遊ぶのが苦手 |
| 目が合いにくい、表情が乏しい |
| 一方的に話し続けて相手の話を聞かない |
| ごっこ遊びが少ない |
| 注意・多動 [6] |
|---|
| じっと座っていられない |
| 指示が入りにくく、最後まで聞けない |
| 衝動的に行動する |
| ケガが多い |
| 運動・協調 [6] |
|---|
| 箸・ハサミ・ボタンが苦手 |
| 片足立ち・スキップができない |
| 絵や文字を書く姿勢が崩れる |
| 情緒・適応 [6] |
|---|
| 切り替えが苦手、パニックになる |
| 感覚過敏(大きな音・触感) |
| 特定の物事へのこだわりが強い |
ポイント
- 一つのサインだけで判断しない [6]
- 複数領域にわたる困りごとを整理する [6]
- 園での様子を健診で共有するのが有効
Q6.「健診で『要フォロー』と言われたら、どう動けばよいですか?」
——精密検査や療育を勧められた場合、どこに相談すればよいですか?
港区では発達支援フロンティアセンターや子ども家庭支援センターが相談窓口になります [7]。医療機関としては愛育病院・小児神経科・発達外来などが選択肢です [7]。
| 相談・支援の流れ |
|---|
| 保健師の面談(健診時またはフォロー) |
| 発達検査(新版K式・WPPSI・PARS-TR等) [6] |
| 必要時:療育(児童発達支援)の利用 |
| 就学前:就学相談・就学支援シート |
| 医療的フォローが必要なら小児科・小児神経科 |
| 港区の主な資源 [7] |
|---|
| みなと発達支援フロンティアセンター |
| 子ども家庭支援センター |
| 各地区総合支所 保健福祉センター |
| 児童発達支援事業所(区内複数) |
| 大切な考え方 |
|---|
| 「診断名」より「困りごとへの支援」に焦点 |
| 早期支援は予後に影響する [2] |
| 保護者のメンタルヘルスもあわせてケア |
ポイント
- 港区は複数の発達支援資源が整っている [7]
- 早期支援は予後に影響する [2]
- 保護者自身のサポートも大切
今号のまとめ
- 3歳児健診は母子保健法の法定健診で身体・発達・視聴覚を網羅 [1]
- 弱視は6歳頃までの治療開始が重要、家庭検査の質が鍵 [3][4]
- 片側性・軽度難聴は振り向きだけでは見落とす [5]
- 5歳児健診は発達特性の早期発見に特化 [2]
- 集団生活の様子と複数領域のサインを総合評価 [6]
- 港区は発達支援の資源が整っている [7]
あわせて読みたい
- Vol.091「5歳児健診FAQ」
- Vol.112「健診フォローアップ」
- Vol.145「弱視の早期発見」
ご質問・ご感想
「家庭での視力検査がうまくいかない」「園から発達の相談を勧められた」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。
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