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「自分を傷つけてしまう」、自傷行為の理解と対応
Vol.285メンタルヘルス

「自分を傷つけてしまう」、自傷行為の理解と対応

自傷行為の多くは自殺の意図なく行われますが、将来の自殺リスク因子として軽視できません

メンタルヘルス全年齢7
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 5·Q&A 5問収録

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この記事のポイント

  • 自傷行為の多くは自殺の意図なく行われる
  • 感情のコントロール手段として行われることが多い
  • ただし将来の自殺リスク因子であり、軽視してはいけない

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.285

「自分を傷つけてしまう」、自傷行為の理解と対応

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「子どもの腕にリストカットの跡を見つけました」、保護者にとって最も衝撃的な発見の一つです。自傷行為は中高生の生涯有病率は約20%前後(報告により10〜23%程度)が経験するとされ、決して珍しくありません [1]。自傷行為は「死にたい」という意思表示とは異なることが多いですが、将来の自殺リスクを高める重要な警告サインでもあります [2]。

Q1.「自傷行為とはどのような行動ですか?」

——自傷行為とは具体的にどのようなものですか?

自傷行為(NSSI: Non-Suicidal Self-Injury)とは、自殺の意図なく、自分の体を意図的に傷つける行為です [2]

項目内容
有病率中高生の生涯有病率は約20%前後(報告により10〜23%程度) [1]
好発年齢12〜14歳に開始が多い [1]
男女比やや女子に多いが男子にもある [1]
目的感情の調節が最も多い [2]
自傷行為の種類具体例
切る(リストカット等)カッター、はさみ等で皮膚を切る [2]
引っかく爪で皮膚を強くひっかく
打撲壁や物に自分をぶつける
やけど消しゴムや熱いもので皮膚を焼く
髪を引き抜く抜毛症として現れることもある

ポイント

  • 自傷行為の多くは自殺の意図なく行われる [2]
  • 感情のコントロール手段として行われることが多い [2]
  • ただし将来の自殺リスク因子であり、軽視してはいけない [2]

Q2.「なぜ自分を傷つけるのですか?」

——なぜそんなことをするのか理解できません

自傷行為の背景にはつらい感情を処理する手段がないという問題があります [3]

自傷行為の機能具体的な意味
感情調節耐えがたい感情を一時的に軽減する [3]
自己罰「自分が悪い」という気持ちから自分を罰する [3]
解離からの回復「何も感じない」状態から感覚を取り戻す [3]
対人的コミュニケーションつらさを周囲に伝える手段 [3]
所属感仲間内での行動として
リスク要因
うつ病、不安障害などの精神疾患 [2]
いじめ、虐待、ネグレクト
友人の自傷行為(伝染性がある) [1]
衝動性が高い
低い自尊感情
感情を言葉にすることが苦手

ポイント

  • 自傷行為は感情のコントロール手段であることが多い [3]
  • 「かまってほしいだけ」と片付けてはいけない
  • 友人間で伝染することがある [1]

Q3.「自傷行為を見つけたらどう対応すべきですか?」

——子どもの自傷を見つけた時、どうすればよいですか?

最初の対応が非常に重要です [4]

推奨される対応具体的な方法
冷静に対応するパニックにならず、落ち着いて話を聴く
傷の手当をするまず身体的な安全を確保
共感的に聴く「つらかったんだね」と受け止める
責めない「なぜこんなことを」と問い詰めない
専門家につなぐかかりつけ医、精神科、相談窓口に相談
やってはいけない対応
怒る、叱る、罰を与える
「死にたいの?」と詰問する
「やめると約束しなさい」と強制する
傷跡を見せるよう強要する
他の家族に黙っているよう求める

ポイント

  • 冷静に、共感的に対応する [4]
  • 叱責や約束の強制は逆効果
  • 必ず専門家に相談する

Q4.「治療はどのように行いますか?」

——自傷行為の治療法はありますか?

感情調節スキルの獲得が治療の柱です [5]

治療法内容
弁証法的行動療法(DBT)感情調節、対人関係スキル、苦痛耐性を学ぶ [5]
認知行動療法(CBT)自傷につながる考え方のパターンを修正 [4]
メンタライゼーションに基づく治療(MBT)自分と他者の心の状態を理解する力を育てる [5]
安全計画自傷したくなった時の対処行動リストを作成 [4]
基礎疾患の治療うつ病等がある場合はその治療も [4]
自傷したくなった時の代替行動(安全計画の例)
氷を握る(痛みの代替)
赤いペンで腕に線を引く
激しい運動をする
信頼できる人に連絡する
相談窓口に電話する

ポイント

  • 感情調節スキルの獲得が治療の中心 [5]
  • 安全計画を事前に作成しておく [4]
  • 基礎にある精神疾患の治療も重要

Q5.「自殺のリスクはどう評価しますか?」

——自傷行為から自殺につながることはありますか?

自傷行為そのものは自殺の意図がないことが多いですが、自傷行為の経験は将来の自殺企図のリスクを4〜6倍高めるとされています [2]

緊急性が高いサイン対応
「死にたい」「消えたい」という明確な発言直ちに専門家に相談
自殺の方法を調べている直ちに専門家に相談
遺書を書いている救急受診
大切な物を人にあげ始める専門家に相談
急に穏やかになる(決意した可能性)専門家に相談
相談窓口
いのちの電話:0570-783-556
チャイルドライン:0120-99-7777(18歳以下)
よりそいホットライン:0120-279-338
#いのちSOS:0120-061-338

ポイント

  • 自傷行為は将来の自殺リスク因子 [2]
  • 「死にたい」という発言は必ず真剣に受け止める
  • 相談窓口を本人と保護者の両方に伝える

今号のまとめ

  • 自傷行為は中高生の生涯有病率は約20%前後(報告により10〜23%程度)が経験する
  • 多くは感情調節の手段であり、自殺の意図とは異なる
  • ただし将来の自殺リスクを高める重要な警告サイン
  • 冷静に、共感的に対応し、専門家につなぐ
  • 感情調節スキルの獲得が治療の柱

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「子どもの自傷を見つけてしまいました」「どこに相談すればよいですか?」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。

愛育病院 小児科 おかもん先生

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