愛育病院 小児科おかもん だより Vol.473
離乳食、丸のみで噛んでくれない、もぐもぐ・かみかみを育てるには
今号のポイント
- 2丸のみは発達段階と食材のミスマッチが主因。舌の側方運動が育つ9〜11か月が転換点になる
- 4手づかみで前歯から噛み取る経験が、一口量の感覚とかみかみの力を同時に育てる
- 6豆・ナッツ・ミニトマト・ぶどう・もちは窒息の実績食材。サイズと月齢の管理が命を守る
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
厚労省の乳幼児栄養調査(2015年)では、離乳食で困っていることの第1位が「作るのが負担」(33.5%)で、第2位が「もぐもぐ・かみかみが少ない(丸のみ)」(28.9%)でした [1]。
約75%の保護者が離乳食で何かしら困りごとを抱えている中で、丸のみは「噛む力が弱い子の個性」でも「育て方のせい」でもなく、発達の段階と食材のミスマッチから起きていることがほとんどです。
今回は、丸のみが起きる理由と、もぐもぐ・かみかみを育てるための具体的な対応を整理します。
Q1: 丸のみしてばかりで噛みません。発達に問題があるのでしょうか?
9か月になっても離乳食を全部丸のみしています。噛もうとする気配が全然なくて、発達障害を疑い始めています。
丸のみは離乳食を持つ家庭の約3割が経験することで、それ自体はほとんどの場合、発達の問題を意味しません。
問題が起きている場所を正確に言うと、「口の中での食材の処理方法」です。
噛む動きは、舌が左右に動く「側方運動」の獲得とセットで育ちます。この側方運動が出てくるのは9〜11か月頃です [2]。それ以前に固形物を口に入れると、舌が前後にしか動かないため、食材をそのまま喉に送り込む、つまり丸のみになります。
日本歯科医学会のマニュアルによると、摂食機能は次の順番で発達します [2]。
発達する動き
- 5〜6か月
- 口唇を閉じて取り込み
- 7〜8か月
- 舌の前後・上下運動
- 9〜11か月
- 舌の側方運動
- 12か月以降
- 左右の協調した咀嚼
できること
- 5〜6か月
- ペーストを飲み込む
- 7〜8か月
- 舌と上あごでつぶす
- 9〜11か月
- 歯ぐきですりつぶす
- 12か月以降
- 歯で噛んで唾液と混ぜる
「噛んでいない」ように見える状況の多くは、月齢よりも食材が固かった、または柔らかすぎて噛まなくても通過してしまった、のどちらかです。
9か月のお子さんなら、今がちょうど歯ぐきですりつぶす力が育ち始めるタイミングです。食材の固さと大きさをもう一度確認するところから始めましょう。
なお、丸のみと合わせて体重増加が停滞している、嘔吐を繰り返す、咳き込みが頻繁、といった様子があれば、摂食嚥下機能の評価が必要なことがあります。一度小児科外来でご相談ください。
Q2: どうすればもぐもぐを覚えてくれますか?
食材の固さを変えても丸のみが直りません。何か練習させる方法はありますか?
「練習」というより、噛む動きが自然に引き出される状況を整えることが先です。
厚労省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019)」では、手づかみ食べの重要性が明記されています [3]。
「手づかみ食べは、生後9か月頃から始まり、1歳過ぎの子どもの発育及び発達にとって、積極的にさせたい行動」
手で持てる大きさのものを前歯で噛み取ると、一口量が自然に制御されます。スプーンで大きな塊を入れられると、口の中の処理が追いつかず丸のみになりやすいのです。
具体的に見直せる4つのポイントをまとめます。
食材の固さとサイズを月齢に合わせる
固さの基本は厚労省ガイドの「歯ぐきでつぶせる固さ」(9〜11か月)、イメージは絹ごし豆腐より少し固いくらいです [3]。大きさは育児実務上の目安として5〜7mm角から始めて、12か月を過ぎたら1cm角程度へ移行することが多いです。柔らかすぎると噛む動きが出ません。一方、固すぎると丸のみか吐き出します。
手づかみで前歯から噛み取る場面を作る
スティック状のやわらかい野菜や、前歯で噛み切れる大きさのおにぎりを持たせてみてください。自分でコントロールする経験が、一口量の感覚を育てます。
一緒に食べる
ガイドには「共食」の重要性が繰り返し出てきます [3]。大人がもぐもぐする動きを見せることで、子どもは視覚的にモデルを学びます。AAP(米国小児科学会)も「家族で週3回以上一緒に食べる子は、身体・情緒・社会・学業の面で良好な転帰を示す」としています [4]。
食事に集中できる環境を作る
スマホや動画に気をとられていると、噛む動きへの注意が薄れます。消費者庁の注意喚起でも「食べることに集中させる」ことが窒息予防として明記されています [5]。
ベビーフードだけで済ませることが続く場合は注意が必要です。ガイドは「ベビーフードだけで1食を揃えた場合、栄養素のバランスが取りにくい」「子どもの咀嚼機能に対して固すぎたり、軟らかすぎることがある」と指摘しています [3]。市販品を使うこと自体は問題ありませんが、自分で食材の固さを調整できるホームメイドと組み合わせることが大切です。
急かさない、食べるペースを管理しないことも重要です。大人が次のひとさじを急いで入れると、飲み込む間もなく口に食材が重なり、丸のみを誘発します。
Q3: 窒息が怖いです。どんな食材に気をつければよいですか?
丸のみしている間、窒息しないか怖くて目が離せません。特に注意が必要な食材を教えてください。
その心配は正しいです。窒息は、知識で防げる事故です。
消費者庁の統計によると、2014〜2019年の6年間で食品の誤嚥による窒息死は0〜14歳で80名、うち73名(91%)が5歳以下でした [5]。
窒息を起こした食品として、医療機関ネットワークに報告されたデータでは、菓子類・豆・ナッツ類・果物・肉魚類の順に多く、日常的な食材ばかりです。
消費者庁は以下を明記しています [5]。
「豆やナッツ類など、硬くてかみ砕く必要のある食品は5歳以下の子どもには食べさせないでください」
「ミニトマトやブドウ等の球状の食品を丸ごと食べさせると、窒息するリスクがあります」
同資料には重要な記述があります。「大人に近い咀嚼ができるのは3歳頃、飲み込みと吐き出しを協調できるのは6歳頃」です。つまり、外から見て上手に噛んでいるように見えても、口の中の処理能力は6歳まで発達途上にあります。
特に注意が必要な食材を月齢別に整理します。
5歳まで与えない
豆・ナッツ類(ピーナッツ、アーモンドなど)、こんにゃくゼリーは与えないことが原則です。気管に入ると除去が難しく、重篤な肺炎や窒息死につながります [5]。
3歳まで切り方・形に注意
ミニトマトとぶどうは縦4等分に切ります。球形のまま口に入ると、喉にぴったりはまって気道を塞ぎます。
ソーセージ・ウインナーは輪切りにせず縦に4等分にします。
もち・白玉・団子は小さく切り、必ず大人が隣で見ます。
AAP(米国小児科学会)は「食品による窒息予防」について、球形の食材を縦に4等分にすること、乾燥した硬い食材は5歳未満に与えないことを政策声明として出しています [6]。
窒息は「噛んでいる最中」にも起きます。大人がそばにいて、万が一の時にすぐ背部叩打法(1歳未満は背部叩打法+胸部突き上げ、1歳以上はハイムリックなど月齢で手技が違う)ができる体制で食事をすることが、最も大切な予防策です。兄姉がいる家庭では、上の子が下の子の口に豆や硬い食品を入れないよう注意してください [5]。
窒息が疑われる時の緊急対応は、関連記事「窒息予防チェックリスト」(choking-prevention-checklist)に詳しくまとめています。