愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.188
「右のお腹が痛い」、小児の虫垂炎(盲腸)
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
虫垂炎(いわゆる「盲腸」)は、小児の急性腹症の中で手術を要する疾患として最も頻度が高いです。小児では症状が典型的でないことが多く、診断が遅れると穿孔(破裂)のリスクが高まります。今回は、小児の虫垂炎の早期発見のポイントについてお伝えします。
Q1.「虫垂炎とは?」
——盲腸と虫垂炎は同じですか?
正確には、虫垂(盲腸の先端にある小さな管状の臓器)に炎症が起こる病気です [1]。
| 基本情報 | 詳細 |
|---|---|
| 好発年齢 | 5-15歳(ピークは10-12歳) |
| 頻度 | 小児の約4%が生涯で経験 |
| 原因 | 虫垂の内腔閉塞(糞石、リンパ組織の腫れ) |
| 小児の特徴 | 穿孔率が高い(小児は30-40%、成人は15-20%) |
ポイント
- 5-15歳に多い
- 小児は穿孔率が高い
- 早期診断が重要
Q2.「虫垂炎の症状は?」
——どんな腹痛ですか?
典型的な経過は以下の通りですが、小児では非典型的なことも多いです [2]。
| 時間経過 | 典型的な症状 |
|---|---|
| 初期(0-6時間) | おへその周りの痛み、食欲低下、嘔気 |
| 中期(6-12時間) | 痛みが右下腹部に移動 |
| 後期(12時間以降) | 右下腹部の持続的な痛み、発熱 |
| 受診すべきサイン |
|---|
| 腹痛が6時間以上持続する |
| 痛みで歩けない、ジャンプで響く |
| 右下腹部を押すと痛い |
| 嘔吐を繰り返す |
| 発熱(37.5℃以上)+腹痛 |
| 食欲がまったくない |
「小児、特に5歳未満のお子さんでは、典型的な症状を訴えられないため、『なんとなく元気がない』『食欲がない』『お腹を触らせない』といった非特異的な症状に注意が必要です。」
ポイント
- 典型的にはおへそ周り→右下腹部に痛みが移動
- 6時間以上続く腹痛は要受診
- 小児は非典型的な症状に注意
Q3.「診断はどうしますか?」
——検査で分かりますか?
身体診察・血液検査・画像検査を組み合わせて診断します [3]。
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 身体診察 | 右下腹部の圧痛、反跳痛、筋性防御 |
| 血液検査 | 白血球増加、CRP上昇 |
| 腹部エコー | 腫大した虫垂の描出(感度約80〜90%) |
| 腹部CT | エコーで不明確な場合(感度95%以上) |
「まず腹部エコーを行い、それでも判断が難しい場合にCTを検討します。小児では被ばくを最小限にするため、エコーを優先します。」
ポイント
- 腹部エコーが第一選択
- 被ばくを避けるためCTは必要時のみ
- 血液検査+画像検査の組み合わせで診断
Q4.「治療はどうしますか?」
——必ず手術が必要ですか?
手術が標準治療ですが、軽症の場合は抗菌薬治療で経過を見ることもあります [4]。
| 治療法 | 適応 |
|---|---|
| 手術(虫垂切除術) | 標準治療。腹腔鏡手術が主流 |
| 抗菌薬治療 | 合併症のない軽症例で選択される場合がある |
| 手術の流れ | 詳細 |
|---|---|
| 手術時間 | 30-60分 |
| 入院期間 | 合併症なし:2-3日。穿孔あり:5-7日 |
| 食事再開 | 術後翌日から |
| 活動制限 | 1-2週間の激しい運動制限 |
「穿孔(破裂)がある場合は手術が複雑になり、入院期間も長くなります。早期診断による穿孔の予防が最も重要です。」
ポイント
- 腹腔鏡手術が主流
- 合併症なしなら2-3日で退院
- 穿孔予防のため早期診断が重要
Q5.「虫垂炎を見逃さないためには?」
——子どもの腹痛はよくありますが、虫垂炎との見分け方は?
以下のポイントで見分けてください [5]。
| 虫垂炎を疑う腹痛 | 通常の腹痛 |
|---|---|
| 持続的で徐々に悪化 | 間欠的で自然に治まる |
| 右下腹部に限局 | おへそ周辺、場所が定まらない |
| 食欲がまったくない | 食欲はある |
| 歩くと痛い、ジャンプで響く | 活動で変わらない |
| 嘔吐(腹痛の後に出現) | 嘔吐が先(胃腸炎の場合) |
| 発熱を伴う | 通常は発熱なし |
「『いつもの腹痛と違う』と感じたら受診してください。特に6時間以上続く腹痛は、必ずかかりつけ小児科を受診しましょう。」
ポイント
- 持続的で悪化する腹痛は虫垂炎を疑う
- 6時間以上続く腹痛は受診
- 「いつもと違う」が大切なサイン
今号のまとめ
- 虫垂炎は小児の急性腹症で最も多い手術対象疾患です
- おへそ周り→右下腹部への痛みの移動が典型的
- 小児は穿孔率が高いため、早期診断が重要
- 腹部エコーが第一選択の検査
- 6時間以上続く腹痛は必ず受診
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