愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.189
「検査では異常がないのにお腹が痛い」、機能性腹痛
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「検査しても異常がないと言われたのに、お腹を痛がるんです」。子どもの慢性・反復性の腹痛で一番多いのが機能性腹痛です。病変がないのに痛みが続くので、保護者も本人も不安になりやすいのですが、対応のコツがわかれば改善していきます。今回は、機能性腹痛についてまとめます。
Q1.「機能性腹痛とは?」
——検査で異常がないと言われましたが、本当に痛がっています
機能性腹痛は、内臓の知覚過敏や腸の運動の乱れで起きる痛みです [1]。検査で異常が出なくても、痛みそのものは本物です。仮病ではありません。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 頻度 | 学童の約10%前後(報告により9〜15%) |
| 好発年齢 | 5-14歳 |
| 原因 | 内臓過敏性、腸脳相関の異常 |
| 検査所見 | 異常なし |
| 経過 | 数か月〜数年続くが、多くは自然に改善 |
| 機能性腹痛の分類(Rome IV基準) |
|---|
| 機能性ディスペプシア(上腹部の痛み・不快感) |
| 過敏性腸症候群(IBS)(腹痛+便通異常) |
| 腹部片頭痛(反復する激しい腹痛+嘔気) |
| 機能性腹痛(その他) |
ポイント
- 検査で異常がなくても痛みは本物
- 学童のおよそ10人に1人が経験
- 「脳と腸のコミュニケーション」の異常が原因
Q2.「器質的な病気との見分け方は?」
——本当に大丈夫なのか心配です
次のレッドフラッグがなければ、機能性腹痛の可能性が高いです [2]。
| 警告サイン(これがあれば精査が必要) |
|---|
| 血便 |
| 体重減少 |
| 成長障害 |
| 持続的な嘔吐 |
| 右下腹部に限局した痛み |
| 夜間に痛みで起きる |
| 発熱を伴う |
| 関節の痛み・腫れ |
| 家族歴(炎症性腸疾患、セリアック病) |
「レッドフラッグがなく、診察と血液・尿検査で異常がなければ、CTや内視鏡などの追加検査は基本的に不要です。検査を重ねるほど不安が増すこともあり、注意が必要です。」
ポイント
- 警告サインがなければ機能性腹痛の可能性が高い
- 基本検査で異常なければ追加検査は不要
- 血便、体重減少、成長障害は要精査
Q3.「どう対応すればいいですか?」
——痛がっている時、どうすればいいですか?
対応のコツは5つです [3]。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| ①痛みを認める | 「気のせい」「大げさ」と言わない |
| ②安心を与える | 「危ない病気ではないよ」と伝える |
| ③日常生活の維持 | 痛みがあっても登校を続ける |
| ④ストレスへの対処 | 原因となるストレスがあれば対応 |
| ⑤規則正しい生活 | 食事・睡眠・運動の規則性 |
「痛みに注目しすぎないことが大事です。『大丈夫?大丈夫?』と何度も聞くと、痛みへの意識がかえって強まり、症状が長引くことがあります。」
| 避けるべき対応 | 理由 |
|---|---|
| 「気のせいだ」と否定する | 信頼関係が崩れる |
| 痛みのたびに学校を休ませる | 回避行動が強化される |
| 繰り返し検査を受ける | 不安が増す |
| 痛みに過度に注目する | 痛みの認知が強化される |
ポイント
- 痛みは認めつつ日常生活を維持
- 過度な注目は逆効果
- 登校は続けることが望ましい
Q4.「治療法はありますか?」
——薬は効きますか?
薬は補助的な位置づけで、心理的アプローチのほうが効果が出やすいです [4]。
| 治療法 | エビデンス |
|---|---|
| 認知行動療法(CBT) | 最も効果が高い。痛みへの対処法を学ぶ |
| 腹式呼吸・リラクセーション | ストレス軽減、痛みの緩和 |
| プロバイオティクス | 一部の研究で有効性の報告 |
| ペパーミントオイル | IBS型の腹痛に有効な可能性 |
| 薬物療法 | 症状に応じて対症療法 |
「認知行動療法では、痛みの受け止め方を変えて、痛みがあっても日常生活を続けられるようにしていきます。」
ポイント
- 認知行動療法が最も効果的
- リラクセーションも有効
- 薬物療法は補助的
Q5.「長期的な見通しは?」
——大人になっても続きますか?
多くのお子さんは成長とともに軽くなっていきます [5]。
| 経過 | 割合 |
|---|---|
| 1年以内に改善 | 約30-50% |
| 数年以内に改善 | 約70-80% |
| 成人期まで持続 | 約20-30% |
「大人まで続く場合もIBSとしてコントロールは可能です。目標は『痛みを消すこと』より『痛みに振り回されず生活できること』です。」
ポイント
- 多くは成長とともに改善
- 70-80%は数年以内に改善
- 痛みに振り回されない力をつけることが目標
今号のまとめ
- 機能性腹痛は検査で異常がない腹痛。痛みは本物
- 警告サインがなければ追加検査は不要
- 痛みを認めつつ日常生活を維持することが重要
- 認知行動療法が最も効果的な治療
- 多くは成長とともに改善します
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