愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.279
「元気がないのは怠けじゃない」、子どものうつ病
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「最近、子どもが元気がなくて心配です」「朝起きられなくなりました」。外来でこうしたご相談が増えています。子どものうつ病は決して珍しくなく、小学生で約1〜2%、中学生では約3〜8%に認められます [1]。大人のうつ病と症状の出方が違うので、周囲に見逃されやすいのが難しいところです。
Q1.「子どもにもうつ病はあるのですか?」
——子どもでもうつ病になるのですか?
はい。子どものうつ病は実在する疾患です [1]。ただし、大人のように気分が落ち込むとは限らず、イライラ・怒りっぽさとして現れることが多いのが特徴です [2]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有病率 | 小学生 約1〜2%、中学生 約3〜8% [1] |
| 男女比 | 思春期前は男女差なし、思春期以降は女子に多い(約2:1) [1] |
| 平均発症年齢 | 11〜14歳 [2] |
| 再発率 | 5年以内に約40〜70%が再発 [3] |
| 遺伝的要因 | 親がうつ病の場合、子どものリスクは2〜4倍 [4] |
ポイント
- 子どものうつ病は怠けや甘えではない
- 大人と違いイライラ・怒りっぽさが主症状になりうる [2]
- 中学生では約3〜8%と決して珍しくない [1]
Q2.「子どものうつ病のサインは?」
——どのような変化に注意すればよいですか?
子どものうつ病は大人とは異なるサインで現れることがあります [2]。
| 年齢層 | 主な症状 |
|---|---|
| 幼児〜学童前期 | 腹痛・頭痛などの身体症状、登園・登校しぶり、遊ばなくなる [2] |
| 学童後期 | 成績低下、友人関係の変化、「自分はダメだ」という発言 [2] |
| 思春期 | 引きこもり、過眠、食欲変化、自傷行為、希死念慮 [5] |
| 見逃されやすいサイン |
|---|
| 些細なことで怒る・泣く |
| 好きだったことに興味を失う |
| 「死にたい」「いなくなりたい」という発言 |
| 成績の急な低下 |
| 友人との交流を避ける |
| 身体症状(腹痛・頭痛)の反復 |
ポイント
- 2週間以上続く気分・行動の変化は要注意 [2]
- 身体症状の裏にうつが隠れていることがある
- 「死にたい」という言葉は必ず真剣に受け止める [5]
Q3.「うつ病の原因は何ですか?」
——何がきっかけでうつ病になるのですか?
うつ病は複数の要因が重なって発症します。一つの原因だけでは説明できません [4]。
| リスク要因 | 具体例 |
|---|---|
| 遺伝的要因 | 家族にうつ病がある場合リスク2〜4倍 [4] |
| 脳の神経伝達物質 | セロトニン・ノルアドレナリンの機能低下 [4] |
| 心理的要因 | 否定的な認知パターン、低い自己肯定感 [2] |
| 環境要因 | いじめ、家庭内の問題、学業ストレス [5] |
| 身体的要因 | 慢性疾患、睡眠障害、甲状腺機能異常 [4] |
「うつ病は脳の病気です。気持ちの持ちようや根性で治るものではありません。適切な治療が必要です。」
ポイント
- うつ病は脳の神経伝達物質の問題であり、気の持ちようではない [4]
- 遺伝+環境+心理的要因が複合的に関与
- 「頑張れ」という声かけは逆効果になりうる
Q4.「治療はどのように行いますか?」
——子どものうつ病はどう治療するのですか?
治療は重症度に応じて段階的に行います [3]。
| 重症度 | 治療法 |
|---|---|
| 軽症 | 心理教育、環境調整、経過観察 [3] |
| 中等症 | 認知行動療法(CBT)、対人関係療法 [3] |
| 重症 | CBT+薬物療法(SSRI)の併用 [3] |
| 難治例 | 専門機関への紹介、入院治療 [3] |
内容
- 認知行動療法(CBT)
- 否定的な考え方のパターンを修正
- 対人関係療法(IPT)
- 対人関係の改善を通じて症状軽減
- SSRI
- フルオキセチンが小児で最もエビデンスあり
- 家族療法
- 家族全体の関わり方を改善
エビデンス
- 認知行動療法(CBT)
- 第一選択 [3]
- 対人関係療法(IPT)
- 有効性あり [3]
- SSRI
- 中等症以上 [6]
- 家族療法
- 補助的に有効 [3]
ポイント
- 軽症ではまず環境調整と心理教育
- 中等症以上では認知行動療法が第一選択 [3]
- 薬物療法は慎重に、専門医のもとで [6]
Q5.「家庭でできることはありますか?」
——親として何ができますか?
家庭の環境は回復に大きく影響します [5]。
| 家庭での対応 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 話を聴く | 否定せず、共感的に耳を傾ける |
| 安心感を与える | 「あなたのせいじゃない」「一緒に乗り越えよう」 |
| 生活リズムを整える | 睡眠・食事・適度な運動を確保 |
| 無理に頑張らせない | 登校や活動を強制しない |
| 専門家につなぐ | かかりつけ医、スクールカウンセラーに相談 |
| やってはいけないこと |
|---|
| 「頑張れ」「気合が足りない」と言う |
| 叱咤激励する |
| 「死にたい」という言葉を無視する |
| 他の子と比べる |
ポイント
- 否定せず、共感的に話を聴くことが最も重要
- 「死にたい」という言葉は必ず専門家に相談 [5]
- 生活リズムの安定が回復を支える
今号のまとめ
- 子どものうつ病は小学生の約1〜2%、中学生の約3〜8%に認められる
- 大人と違いイライラや身体症状として現れやすい
- 2週間以上続く変化は受診の目安
- 認知行動療法が治療の第一選択
- 家庭では共感的な傾聴と安心感が大切
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