愛育病院 小児科おかもん だより Vol.467
子どもの「風邪薬」って結局なに?、処方薬と市販薬の正体
今号のポイント
- 2「風邪薬」という1つの薬は存在せず、咳・鼻水・熱をやわらげる対症療法薬の集まり。風邪そのものは治さない
- 4米国FDAは4歳未満、AAPは6歳未満へのOTC咳止め・かぜ薬の使用を推奨していない。日本ではコデイン含有薬が12歳未満に禁忌
- 6厚生労働省『抗微生物薬適正使用の手引き 第二版』は、感冒に抗菌薬を投与しないことを明記している
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
外来でよくいただくのが、「先生、風邪薬って結局なにを出してもらったんですか」という質問です。
実はこの問いに、すっきり答えるのは意外と難しいのです。なぜなら「風邪薬」という1つの薬は存在しないからです。今号では、処方薬と市販薬、それぞれの「風邪薬」の正体を整理してみます。
そもそも「風邪薬」って、なんですか?
子どもが鼻水と咳で受診したら、シロップを2種類出されました。あれが『風邪薬』だと思っていたんですが、結局なんの薬だったんでしょう。
良い質問ですね。実は『風邪薬』という1種類の薬は存在しないんです。
急性気道感染症(風邪)の原因の約9割はウイルスで、ウイルスそのものを退治する薬は通常使いません [1]。なので小児科で「風邪薬」として出されているのは、鼻水・咳・熱などの症状をやわらげる対症療法薬の集まりです
代表的なのは、以下のような薬です
- アセトアミノフェン(カロナール) → 熱・痛みをやわらげる
- カルボシステイン(ムコダイン)、アンブロキソール(ムコソルバン) → 痰を出しやすくする
- チペピジン(アスベリン)、デキストロメトルファン(メジコン) → 咳をやわらげる
- ペリアクチン、ザイザル → 鼻水をやわらげる(第1世代/第2世代の抗ヒスタミン薬)
どれも風邪のウイルスを退治するわけではなく、症状をやわらげて子どもがラクに過ごせるようにする薬です。風邪そのものは、お子さん自身の免疫力で3〜7日かけて治っていきます
ポイント
- 「風邪薬」という1つの薬はなく、症状緩和の薬の総称
- ウイルスを倒すわけではなく、治癒を早めもしない
- 治すのは子ども自身の免疫力 [1]
市販の子ども用かぜ薬、買って飲ませていいですか?
ドラッグストアで『1歳から』と書かれた小児用シロップを見かけました。受診の前に飲ませてあげてもいいですか?
ここは慎重に考えていただきたい部分です。
米国FDA(食品医薬品局)は2008年に「2歳未満には市販の咳・かぜ薬を使わないこと」を勧告し、その後、製薬企業側の自主表示で「4歳未満には使わない(Do not use in children under 4 years of age)」と統一されました [2]。米国小児科学会(AAP)の見解は段階的で、「4歳未満には推奨せず、4〜6歳は医師の指示がある場合に限り使用、6歳以降は安全に使える」とされています [3]
理由は明確です。市販のかぜ薬の有効性が「ある」と言えるエビデンスは小児ではほとんどなく、痙攣・頻脈・意識障害などの重篤な有害事象が報告されているからです。Cochraneレビュー(2014年、対象29試験4,835人)でも、急性の咳に対する市販薬の有効性は「あるとも、ないとも言えない」と結論されています [4]
『1歳から』と書かれた市販薬であっても、その表示は日本の薬機法上の販売区分の話で、米国基準の有効性・安全性の評価とはずれています。少なくとも乳児や1歳台のお子さんに、自己判断で市販かぜ薬を使う前に小児科を受診してください
なお、日本でも2019年からコデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩・トラマドールは12歳未満で禁忌となりました [5]。OTCの一部にもこれらが入っていることがあり、注意が必要です
ポイント
- 米国FDAは4歳未満、AAPは6歳未満に市販のかぜ薬を推奨しない [2][3]
- 効果のエビデンスは限定的、副作用リスクが上回る年齢層がある [4]
- 国内ではコデイン含有薬が12歳未満禁忌 [5]
咳止めは結局、効くんですか?
咳がひどくて夜眠れません。咳止めをもう少し強くしてもらえば、夜は楽になりますか?
つらい状況ですよね。ただ、ここはエビデンスを踏まえてお話ししたいと思います。
Cochraneレビューの結論は、「市販薬・処方薬の鎮咳剤が、プラセボ(偽薬)より有意に効くという良質なエビデンスはない」というものです [4]。小児を対象としたサブグループ解析でも、咳止め・抗ヒスタミン薬・配合剤すべてで、プラセボとの差は示されていません
ただし、これは「全く意味がない」という意味ではなく、「臨床試験で平均をとると、差が出るほどの効果は確認できない」ということです。個別のお子さんで、特定の薬が合うことはあります
夜の咳に対しては、薬を強くする方向よりも、まず以下の対症療法を確認してください
- 2加湿(湿度50〜60%)と水分補給
- 4上半身を高くして寝かせる(枕を1枚足す、または上半身側を少し起こす)
- 6鼻水が後ろに流れる「後鼻漏」が原因なら、寝る前の鼻吸い
それでもつらく、夜間頻回に咳き込む・呼吸が苦しそう・顔色が悪い、といった場合は再受診してください。咳の原因が風邪ではなく、ぜんそく・気管支炎・肺炎などのことがあります
ポイント
- 市販・処方の咳止めとも、小児で明確な有効性は示されていない [4]
- 加湿、上半身挙上、鼻吸引などの環境調整が先
- 呼吸苦・顔色不良なら再受診
抗生剤と風邪薬の違いについては「『風邪に抗生物質を出さない先生は大丈夫?』 抗生物質にまつわる3つの誤解」(Vol.12)で詳しくお伝えしています。あわせてご覧ください。