愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.387
発達のでこぼこ、得意と苦手
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「計算はできるのに、集団行動だとフリーズする」「漢字はすらすら書けるのに、友だちの気持ちが読めない」。外来でよく聞くご相談です。この得意と苦手の落差を、発達のでこぼこ(uneven profile)と呼びます。今号は最新のメタ解析をもとに、この「でこぼこ」をどう見てあげればよいかを整理します。
発達のでこぼことは
子どもの発達は、言語・運動・社会性・認知など複数の領域で進みます。それぞれが同じペースで進むとは限りません。ASDやADHDの子どもでは、この「領域間の差」が大きくなりやすいことが、多くの研究で示されています [1]。
2024年のArchives of Clinical Neuropsychology誌に掲載されたWilsonによるメタ解析では、WAIS-IV・WISC-Vを受けた約1,800人の自閉・ADHD児者のデータを解析した結果、自閉の方では言語・非言語推論はほぼ平均域なのに、処理速度が1SDほど低く、作業記憶もやや低いという特徴的なプロフィールが示されました [1]。また、2024年のNeuropsychologia誌のレビューでは、神経発達症に共通する認知的強み(記憶・細部処理・パターン認識)にも光が当てられています [2]。
ポイント
- 発達のでこぼこはASD・ADHDで目立つ特徴 [1]
- 苦手として目立ちやすいのは処理速度、次いで作業記憶 [1]
- 得意として語られるのは記憶・細部処理・パターン認識など [2]
- 総合IQ一つで評価しない
でこぼこは「欠けている」ではない
ここで強調したいのは、「でこぼこ」は「欠け」ではなく「形」だということです [2][3]。定型発達の子どもでも、得意・苦手はあります。ただ、その幅が大きいと、本人も周囲も戸惑います。算数が学年1位なのに、体育だけ0点のような子は、「努力不足」と誤解されがちです。
MDPI Intelligence誌の2022年の研究では、ASDの子どもは言語・心理運動スキル・参加度など複数の領域で通常児より低い一方、視空間の切り出しや細部処理では優位を示すと報告されています [3]。一方向の評価では、その強みが見えなくなるのです。
・苦手にばかり注目せず、得意をノートに書き出す ・「できない」ではなく「今はこの順番で育っている」と捉える ・学校・園と「得意と苦手の地図」を共有する ・専門家の評価を受けるときは、領域別のプロファイルを求める
外来で伝えたいこと

おかもん先生より
外来で「発達検査を受けたら総合IQは平均的だったのに、学校では苦労していて」というご相談をよく受けます。総合IQだけでは発達のでこぼこは見えません。僕は検査結果を見るとき、必ず領域ごとの値を比較します。差が15以上ある場合、その子は「平均的な子」ではなく「はっきり得意と苦手がある子」。対応もまったく変わります。保護者の方には「この子のマニュアルを作る感覚で向き合いましょう」とお伝えしています。既製品のマニュアルに合わせるのではなく、その子だけのマニュアルを。
今号のまとめ
- 発達のでこぼこは神経発達症でよく見られる
- 総合IQ一つで子どもを評価しない
- 得意(記憶・細部・パターン認識など)を見つけ、苦手(処理速度・作業記憶)を補助する
- 「欠け」ではなく「形」として捉える
愛育病院 小児科 おかもん先生
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。