愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.254
「水の事故から子どもを守る」、溺水
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
溺水は、子どもの不慮の事故死の上位に毎年入ってきます。「うちはプールも海も行かないから大丈夫」と思っていても、実は一番多いのは家庭の浴室です。しかも、子どもの溺れ方は大人がイメージするのと全く違います。今回はそのあたりをお伝えします。
Q1.「子どもの溺水はどこで起きる?」
——プールや海が危険ですか?
皆さんプールや海をイメージされますが、実は家庭の浴室が一番多いんです [1]。年齢で場所が変わってきます。
| 年齢 | 多い場所 |
|---|---|
| 0-1歳 | 浴槽、洗面器 |
| 1-4歳 | 浴槽、ビニールプール |
| 5-9歳 | 河川、プール |
| 10歳以上 | 河川、海 |
| 溺水の特徴 |
|---|
| わずか10cmの水深でも溺れる |
| 静かに溺れる(バシャバシャしない) |
| 数分の酸素不足で脳にダメージ |
| 5歳未満の不慮の事故死の上位 |
ポイント
- 家庭の浴槽が最も危険
- わずか10cmの水深でも溺れる
- 子どもは静かに溺れる
Q2.「溺れた時の対応は?」
——もし溺れてしまったら?
水から出して呼吸を見る、これが最初です [2]。溺水の場合は呼吸停止が先に来るので、人工呼吸が特に大事になります。
| 対応手順 | 詳細 |
|---|---|
| 1. 引き上げる | すぐに水から出す |
| 2. 反応確認 | 呼びかけて反応を見る |
| 3. 119番通報 | 反応がなければすぐに |
| 4. 呼吸確認 | 胸の動きを見る |
| 5. 心肺蘇生 | 呼吸がなければ人工呼吸+胸骨圧迫 |
| 心肺蘇生のポイント | 内容 |
|---|---|
| まず5回の人工呼吸 | 溺水は酸素欠乏が本体なので呼吸を先に |
| その後、胸骨圧迫30回+人工呼吸2回 | 通常の小児CPRに合流 |
| AEDがあれば使用 | 体が濡れていれば胸を拭いてから貼る |
| 救急隊が来るまで続ける | 交代しながらで構いません |
「水を吐かせる必要はありません。胃の中の水を出そうとして体を逆さにすると、誤嚥や嘔吐で気道が塞がるリスクの方が大きいです。蘇生に集中してください。」
ポイント
- すぐに水から引き上げる
- 反応がなければ119番+心肺蘇生
- 水を吐かせる必要はない
Q3.「一度溺れた後も注意が必要?」
——溺れかけたけど元気です。大丈夫ですか?
結論から言うと、水から上がった直後にケロッとしていて症状が全くなければ、後から急に重症化することはまずありません [3]。以前は『二次性溺水』『dry drowning』と呼ばれて怖がられていましたが、現在は AAP(米国小児科学会)も WHO もこれらの用語は使わない方針です。症状がない子が数時間後に突然亡くなる、という現象は実際には起きていない、というのが今の理解です。
「ただし、水を吸い込んだ後に肺の炎症(誤嚥性肺障害)が起こることはあります。これは『無症状から悪化する』のではなく、水から上がった時点で何らかのサインが出ているのが普通です。」
| 受診すべきサイン | 内容 |
|---|---|
| 咳が止まらない | 上がってからも続く |
| 呼吸が速い・苦しそう | 普段より明らかに早い |
| ぐったりしている | 反応が鈍い、眠そう |
| 顔色が悪い | 唇が青い、土気色 |
| 嘔吐を繰り返す | 1回だけならまず様子見 |
「これらのサインが一つでもあれば受診してください。逆に、しっかり泣いて、いつも通り遊んでいて、咳もなければ、自宅で経過を見て大丈夫です。」
ポイント
- 「二次性溺水」「dry drowning」は現在使われない概念
- 無症状の子が後から急変することはまずない
- 咳・呼吸の異常・ぐったりがあれば受診
Q4.「浴室での予防は?」
——お風呂での事故を防ぐには?
身も蓋もないですが、目を離さない、これが全てです [4]。電話、宅配、上の子の呼び出し、どれも『ちょっとだけ』が一番危ない。
| 予防策 | 内容 |
|---|---|
| 目を離さない | 電話が鳴っても子どもと一緒にいる |
| 残し湯をしない | 入浴後はすぐに排水 |
| 浴室の鍵 | 子どもが一人で入れないように |
| 浴槽の水深 | 少なく、入浴中は手を離さない |
| 入浴補助具 | 首浮き輪は使用しない |
「首浮き輪は消費者庁から繰り返し注意喚起が出ており、死亡事例も報告されています。便利グッズではなく事故の原因という認識でいてください。」
ポイント
- 入浴中は絶対に目を離さない
- 残し湯をしない
- 首浮き輪は使用しない
Q5.「水遊びの安全対策は?」
——プールや海ではどう注意すればいいですか?
監視する大人を1人決めること、そして水辺ではライフジャケット、この2つが命を守ります [5]。浮き輪はあくまで遊具で、命を守る道具ではありません。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 常に監視 | スマホを見ない。子どもから目を離さない |
| ライフジャケット | 水辺では着用(浮き輪だけでは不十分) |
| 水泳教室 | 泳げるようにすることも予防 |
| バディシステム | 2人以上で水に入る |
| 天候確認 | 急な増水に注意 |
| 河川での注意 |
|---|
| 流れの速さは見た目で判断できない |
| 急な増水(上流の雨) |
| 深みにはまる可能性 |
ポイント
- 大人が常に監視
- ライフジャケットを着用
- 河川は特に注意
今号のまとめ
- 浴室が最も多い溺水事故の現場
- わずか10cmの水深でも溺れる
- 入浴中は絶対に目を離さない
- 残し湯をしない、首浮き輪は使わない
- 水から上がった直後に症状がなければ後から急変はまずない(症状があれば受診)
あわせて読みたい
- Vol.252「やけど」
- Vol.253「誤飲」
- Vol.255「熱中症」
ご質問・ご感想
「お風呂の安全対策を知りたい」「水遊びの注意点は?」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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