愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.476
解熱剤の坐薬、いつ・どう使う? アンヒバ・カロナール坐剤の使い方
今号のポイント
- 2坐薬は嘔吐・拒薬・睡眠中に役立つ。吸収スピードは経口とほぼ同等、用量も10〜15mg/kgで同じ
- 4挿入後30分以内に原形で出たら再投与可。30分以上経ったら吸収済みと判断してもう一度は不要
- 6ダイアップ坐剤と一緒に使うときはダイアップを先に入れて30分以上あけてからアンヒバを挿入
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回のテーマは解熱坐薬の使い方です。
「シロップを全部吐いてしまいました」「飲ませようとすると泣いて暴れて飲んでくれません」、こういうとき、坐薬を手渡すことがあります。内服薬のように飲む必要がない分、確かに便利な剤形なのですが、「どっちから入れる?」「出てきたらどうする?」という疑問が次々出てくるんですよね。
今号では坐薬の使いどころ、入れ方のコツ、出てしまったときの判断、そして熱性けいれん予防薬(ダイアップ)との併用ルールをまとめます。
Q1: 嘔吐があってシロップが飲めません。坐薬はどんなときに使うとよいですか?
昨夜から嘔吐が続いていて、解熱剤のシロップを飲ませてもすぐに吐いてしまいます。坐薬ならこういうとき有効でしょうか。
坐薬が特に役立つのは、今おっしゃっているような状況です。3つ整理しますね。
1つ目は嘔吐で飲めないとき。お口から入れても吐き出してしまう場合、直腸から吸収させる坐薬は実用的です。
2つ目は拒薬がひどいとき。シロップを嫌がって暴れる、飲ませようとすると泣いて疲弊する、という場面では、眠っているすきに坐薬を使う方が親子ともに楽なことがあります。
3つ目は夜中に眠っているとき。起こさずに済むという利点があります。
坐薬の吸収については誤解が多いので一度確認しておきます。「坐薬のほうが速く効く」と思っている方が多いのですが、それは正確ではありません。アセトアミノフェンを経口と坐薬で比較した薬物動態研究(3〜36か月児 n=27)では、血中濃度のピークは経口で約70分、坐薬でも約70分とほぼ同等でした [1]。「30〜60分でピーク」という説明が広まっていますが、その研究では両者ともに約70分です。
一方、坐薬は経口より吸収にばらつきが出やすい、という指摘もあります [2]。そのため、お口から飲める状態なら経口を第一選択にしてください。坐薬はどうしても飲めない場合の次の手、という位置づけです。
用量は経口と同じです。アンヒバ坐剤・カロナール坐剤ともに、体重1kgあたり1回10〜15mg、投与間隔4〜6時間以上、1日最大60mg/kgまでと定められています [3][4]。たとえば体重10kgのお子さんなら1回100〜150mgの坐薬を選びます。
ポイント
- 坐薬は嘔吐・拒薬・睡眠中の3場面で有用
- 吸収速度は経口とほぼ同等(Tmax 約70分) [1]
- 吸収のばらつきは経口より大きい。飲める状態なら経口優先 [2]
- 用量:1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて、1日最大60mg/kg [3][4]
Q2: 坐薬の正しい入れ方を教えてください。入れた後に出てきてしまったらどうしたらいいですか?
初めて坐薬を使うので不安です。入れ方のコツと、もし出てきてしまったときの対応を教えてください。
入れ方のコツは3つあります。
1つ目は体位です。横向きに寝かせて、膝を軽く曲げた姿勢にします。リラックスした状態が入りやすいです。
2つ目は先端のワセリンです。少量を先端に塗ると摩擦が減り、スムーズに入ります。
3つ目は挿入後の押さえです。入れてからしばらく(5〜10分が目安)ティッシュで肛門をやさしく押さえると、薬が出てきにくくなります [5][6]。直後は「入れた違和感」で力んで出そうとすることがあるので、このひと手間が大切です。
出てしまったときの判断についてはこう考えてください。
入れた直後に形を保ったまま出てきた場合は、入れ直してください。薬はほぼ吸収されていません。
入れてから10〜30分以内に、原形に近い状態で出てきた場合も、再投与できます。
入れてから30分以上経ってから出てきた場合は、多くの薬はすでに吸収されています。再投与すると過量になるおそれがあるので、この場合は追加しないでください [5][6]。
ただし正直にお伝えすると、この「10分」「30分」という数字は施設や資料によって微妙に異なります。確立した大規模研究のエビデンスに基づいた数字ではなく、臨床慣行の目安です。どちらの数字を使うにしても、「形が残っているか否か」「いつ入れたか」を基準に判断してください。迷ったときはかかりつけに相談するのが一番確実です。
ポイント
- 横向き・膝を軽く曲げる体位。先端にワセリン少量、挿入後5〜10分押さえる [5][6]
- 入れた直後に出た→入れ直し可
- 30分以内に原形で出た→再投与可
- 30分以上経過後に出た→吸収済みと判断、再投与しない [5][6]
- 「30分」は目安。迷ったらかかりつけへ
Q3: 熱性けいれんの予防にダイアップ坐剤も使っています。アンヒバと一緒に使うときの順番はありますか?
過去に熱性けいれんがあり、発熱時はダイアップ坐剤も処方されています。アンヒバとダイアップを一緒に使うとき、入れる順番はどちらが先ですか?
これは順番が決まっています。必ずダイアップを先に入れて、30分以上あけてからアンヒバを入れてください [7]。
逆に、アンヒバを先に入れてからダイアップを入れると、ダイアップの効果が落ちる可能性があります。
理由は薬の基剤(土台となる成分)の性質です。アンヒバ坐剤の基剤はハードファット(油脂性)でできています。ダイアップの有効成分であるジアゼパムは脂溶性のため、この油脂に取り込まれてしまいます。先にアンヒバを入れると、後から入れたダイアップが油脂の中に吸い込まれて腸管からの吸収が落ちるんです。ダイアップを先に入れ、腸管に吸収されてから(30分以上後に)アンヒバを入れれば、この干渉は起きません [7]。
もう一点、色では区別しないでください。アンヒバ・カロナール坐剤もダイアップ坐剤も、見た目はほぼ同じ白〜淡黄色です。パッケージの名前と用量を必ず確認してから使ってください。複数の坐薬を渡されているお宅では、混同が起きやすいので注意が必要です。
さらに大切なことを一つ。インフルエンザが疑われる発熱時の解熱剤はアセトアミノフェン(アンヒバ・カロナール坐剤)を選んでください。ジクロフェナク(ボルタレン)やメフェナム酸(ポンタール)は、インフルエンザ脳炎・脳症の重症化と関連するとして、日本小児科学会が使用回避を推奨しています [8]。アンヒバもカロナール坐剤も、インフル時でも安全に使えるアセトアミノフェン製剤です。
ポイント
- ダイアップを先、30分以上あけてからアンヒバ [7]
- 逆順(アンヒバ先)はダイアップの吸収が落ちるため NG [7]
- 色では区別できない。必ずパッケージ名で確認
- インフル疑い時はアセトアミノフェン坐薬が第一選択 [8]
今号のまとめ
- 坐薬は嘔吐・拒薬・睡眠中に使う。飲めるなら経口が第一選択 [1][2]
- 用量は経口と同じ:1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて、1日最大60mg/kg [3][4]
- 入れ方:横向き・ワセリン・挿入後5〜10分押さえる [5][6]
- 出てきたとき:30分以内の原形なら再投与可。30分以上経過後は再投与しない [5][6]
- ダイアップとの併用は必ずダイアップ先、30分以上あけてアンヒバ [7]
- インフル時はアセトアミノフェン坐薬。ボルタレン・ポンタールは回避 [8]
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