愛育病院 小児科おかもん だより Vol.474
カロナールとイブプロフェン、どっち?、子どもの解熱剤の使い分け
今号のポイント
- 2国内ではカロナール(アセトアミノフェン)が事実上の第一選択。全年齢で使え、インフル疑いでも安全
- 4効き目の差は小幅。解熱剤を使う基準は体温の数字ではなく、お子さんのつらさ
- 6インフルのときはボルタレン・ポンタール・ロキソニンは絶対禁止。薬の名前を必ず確認して
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回のテーマは解熱剤の使い分けです。
「先生、カロナールとイブプロフェン、結局どっちがいいんですか?」、外来で本当によくいただく質問なんです。どちらも処方されたことがある、ドラッグストアに両方並んでいる、という状況だと迷いますよね。
答えから先に言うと、日本ではカロナール(アセトアミノフェン)が事実上の第一選択です。今号でその理由と、ブルフェン(イブプロフェン)をどう位置づけるか、さらにインフルエンザのときに絶対に使ってはいけない解熱剤の話まで、整理してお届けします。
Q1: カロナールとイブプロフェン、結局どっちがいいんですか?
先日の受診でカロナールをもらったのですが、義理の母から「イブプロフェンのほうが効くんじゃない」と言われました。どちらが正解なのでしょうか。
どちらが「正解」か、というより、日本での標準的な使い方に少しズレがある状況なので、整理しますね。
結論からいうと、国内ではカロナール(アセトアミノフェン)が事実上の第一選択です。理由は3つあります。
1つ目は年齢の問題です。日本のブルフェン(イブプロフェン)の添付文書には、5歳以上への年齢別固定用量しか設定されていません [2]。5歳未満への体重別の量は設定されていないんです。これは欧米の基準と少し違うところで、欧米では生後6か月以上への体重別用量が設定されています。でも国内ではブルフェンは5歳以上限定と覚えておくのが安全です。
2つ目は安全性の実績です。アセトアミノフェンは新生児期から使える薬で、国内小児科での使用実績が長く積み上がっています。カロナールの添付文書では、体重1kgあたり1回10〜15mg、4〜6時間以上あけて、1日最大60mg/kgまで、1回最大500mg・1日最大1500mg(成人量を超えない)と定められています [1]。体重別の目安でいうと、10kgのお子さんなら1回100〜150mg、20kgなら200〜300mgです。
3つ目はインフルエンザへの対応です。これは後ほど詳しく説明しますが、インフルエンザが疑われるときはアセトアミノフェンが推奨されます [6]。年中どんな状況でも使えるという汎用性の高さが、第一選択である理由の1つです。
では「イブプロフェンのほうが効く」という義理のお母さんの話はどうでしょう。実はこれ、まったくの間違いでもなくて、海外のメタ解析(多数の試験をまとめた研究)では、解熱・鎮痛のどちらでもイブプロフェンが統計的には小幅優位という結果が出ています [3][4]。ただしその差は小さく、効果量(effect size)でいうと0.19〜0.33程度です [3]。実際のお子さんのつらさが明確に変わるかというと、微妙なラインなんです。
正直にいうと、どちらでも十分に効きます。アメリカ小児科学会(AAP)の公式見解でも、「アセトアミノフェンとイブプロフェンの安全性・効果に実質的な差はない」と明記されています [4]。カロナールを処方した先生の判断は、標準的です。
ポイント
- 国内ではカロナール(アセトアミノフェン)が第一選択。日本のブルフェン添付文書は5歳以上限定 [1][2]
- 海外メタ解析ではイブプロフェンが小幅優位だが、実臨床での差は小さい [3]
- AAPは「両者に実質的な差はない」と評価 [4]
- カロナールの用量:1回10〜15mg/kg、4〜6時間以上あけて [1]
Q2: 効きが悪いとき、両方を交互に使ってもいいですか?
次の投与時間まで3時間ほどあるのに、カロナールが効いてきた感じがしなくて……。交互に飲ませれば早めに解熱できるかなと思っているのですが。
気持ちはよくわかります。お子さんがつらそうなのに、次の投与時間まで待つのは親としてつらいですよね。ただ、これは少し立ち止まって考えてほしい場面なんです。
まず確認したいのは、解熱剤を使う目的です。アメリカ小児科学会(AAP)もイギリスの国立医療技術評価機構(NICE)も、共通して言っているのは「体温を正常に戻すことが目的ではなく、お子さんの快適さを改善することが目的」ということです [4][5]。体温が39度であっても、お子さんが機嫌よく水分を飲めているなら、解熱剤を追加する必要はありません。
交互投与(いわゆる「交互使い」)については、NICEは「同時に2種類を与えない」と明記し、「1つの薬で不快感が改善しない場合に限り、もう1つの薬への切り替えを検討する」という立場です [5]。AAPは「交互投与は単剤より効果的というエビデンスはあるが、薬の過量投与リスクから慎重に」と述べています [4]。
英国プライマリケアでの研究(PITCH試験)では、パラセタモールとイブプロフェンを同時に併用した群が、パラセタモール単剤群より4時間以内の無熱時間が55分長かったという結果が出ています(イブプロフェン単剤との差は16分で有意差なし)[6]。これは厳密には「交互」ではなく「同時併用」を比べた研究です。効果はあるんです。でも、その55分のために薬が2種類になる管理の複雑さ、飲み間隔を間違えた場合の過量投与リスクを天秤にかける必要があります。
日本の現場での実際的なアドバイスとしては、まず1種類で様子を見てほしいということです。「効きが悪い」と感じても、アセトアミノフェンは飲んでから30分〜1時間で効いてくることが多く、最初の印象で判断しない方がいいんです。どうしても交互投与を検討したい場合は、かかりつけ医に相談してから使い始めてください。自己判断で始めると、どちらの薬をいつ飲ませたか管理が混乱しやすいので。
ポイント
- 解熱剤の目的は体温正常化ではなく「快適さの改善」。水分が飲めていれば追加不要のことも [4][5]
- NICEは「同時に2種類与えない」。改善しない場合に限り交互を検討 [5]
- 交互投与は効果的なエビデンスあり(+55分無熱時間)だが過量投与リスクと天秤 [6]
- 検討する場合はかかりつけ医に相談してから
Q3: インフルエンザや熱性けいれんがあったとき、解熱剤は何を使えばいいですか?
昨冬、子どもがインフルエンザになったとき、薬箱に「イブプロフェン配合」の市販解熱剤があったので飲ませてしまいました。あとから「インフルにイブプロフェンはダメ」と聞いて心配で……。
これは非常に大切な点なので、はっきり伝えさせてください。ただ、まず安心してほしいのは「イブプロフェンがインフルエンザ脳炎の直接原因になる」という話ではないということです。正確に整理しますね。
日本小児科学会が公式に注意喚起しているのは、ジクロフェナク(商品名:ボルタレン)とメフェナム酸(商品名:ポンタール)の2種類の解熱剤です [7]。学会の見解では、ジクロフェナクはインフルエンザ脳症の致命率が有意に上昇するという研究結果が出ており、明確に避けるべきとされています。メフェナム酸については「はっきりした傾向は認められなかった」としつつも、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきと注意喚起されており、事実上の回避対象です [7]。
イブプロフェン(ブルフェン)については、日本小児科学会の見解の中で「インフルエンザ時の禁忌」とは名指しされていません。ただし、5歳未満は添付文書上の適応外であること、インフルエンザ時はより確実な選択肢(アセトアミノフェン)があることから、国内の外来ではインフル疑いの子どもにブルフェンを積極的に使う理由が見当たらない、という状況です。
15歳未満の子どもへのロキソプロフェン(ロキソニン)は安全性が確立されておらず、小児適応がありません。また、アスピリンはライ症候群との関連から小児のウイルス感染時には絶対禁忌です。
整理すると、インフルエンザや熱性けいれんがあるときの解熱剤は、アセトアミノフェン一択です。剤形は内服(カロナール錠・細粒・シロップ)でも坐剤(アンヒバ坐剤・カロナール坐剤)でも、どちらでも安全です。
最後に一番大切なことをお伝えします。薬箱にある解熱剤の名前を、一度必ず確認してください。「解熱剤」という名前で処方されていても、成分が何かによって全然話が変わります。「カロナール」か「アセトアミノフェン」と書いてあるかどうかが確認のポイントです。
ポイント
- インフル・熱性けいれん時の解熱剤はアセトアミノフェン(カロナール・アンヒバ)一択
- ジクロフェナク(ボルタレン)・メフェナム酸(ポンタール)は日本小児科学会が回避推奨 [7]
- ロキソプロフェン(ロキソニン)は15歳未満適応外・アスピリンはウイルス感染時禁忌
- 薬箱の解熱剤の「成分名」を今すぐ確認する習慣を
今号のまとめ
- 国内ではアセトアミノフェン(カロナール)が第一選択。日本のブルフェン添付文書は5歳以上限定 [1][2]
- 解熱・鎮痛の効果はほぼ同等。使う基準は体温の数字ではなくお子さんのつらさ [4]
- 交互投与は有効だが過量リスクあり。検討する場合はかかりつけ医に相談 [5]
- インフル時はボルタレン・ポンタールを絶対回避。ロキソニン・アスピリンも小児不可 [7]
- 薬箱の解熱剤の成分名を確認しておく
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