愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.84
【受診チェックリスト】お子さんが頭をぶつけた時に
このチェックリストは、受診時にスマホで見せたり、印刷して持っていくことを想定しています。お子さんが頭をぶつけた時(頭部外傷)の受診判断と、受診前の確認事項、48時間の経過観察のポイントをまとめています。
いつ受診する?
以下に当てはまるものがあれば、チェックしてください。
すぐ救急のサイン(119番 or 救急外来へ)
- 意識がない、または意識レベルが低下している(ぼーっとしている、呼びかけに反応が鈍い)[1][2]
- けいれんが起きた [1][2]
- 意識を失った(一瞬でも)[1][2]
- 2回以上嘔吐している [1][2]
- 鼻や耳から透明な液体(髄液漏の可能性)が出ている [1][3]
- 鼻や耳から出血がある [3]
- 大泉門が膨隆している(乳児の場合)[1][2]
- 目のまわりにパンダのようなあざ(raccoon eyes)がある [3]
- 耳の後ろにあざ(Battle's sign)がある [3]
- 片方の瞳孔が大きい(左右の瞳孔の大きさが違う)[3]
- 明らかに頭蓋骨が陥没している、または触ると異常にやわらかい [1][2]
- 高所(1m以上/2歳未満は0.9m以上)からの転落 [1][2]
- 歩き方がおかしい(ふらつく、まっすぐ歩けない)[3]
- 腕や足が動かしにくい [3]
上の項目に1つでも当てはまる場合は、すぐに受診してください。夜間・休日でも迷わず救急へ。
早めに受診(数時間以内に小児科・救急へ)
- 1回嘔吐した [1][2]
- 受傷後一時的にぼーっとしていたが、今は元気 [2]
- 頭痛を訴えている(幼児の場合:頭を押さえている、機嫌が悪い)[1]
- 5cm以上の大きなたんこぶがある(特に側頭部・後頭部)[1][2]
- 生後3ヶ月未満の乳児の頭部外傷 [1]
- 交通事故や自転車の転倒による受傷 [1][2]
- 打撲の相手が硬い物体(コンクリート、階段の角など)[2]
- 受傷時の状況を目撃していない(何が起きたか不明)[2]
- 出血性疾患がある、または抗凝固薬を使用中 [3]
様子を見てOK(ただし48時間は注意深く観察)
- 泣いた後すぐに泣き止み、いつもどおりの様子 [2]
- 嘔吐なし [1][2]
- 意識の変化なし(受傷後もすぐに普段どおりの反応)[2]
- 小さなたんこぶ(前額部=おでこ)で、元気に遊んでいる [2]
- 低い高さ(本人の身長未満)からの転倒 [2]
ただし、「様子を見てOK」に該当しても、受傷後48時間は注意深い観察が必要です [1][2]。下記の「48時間の経過観察チェックリスト」をご活用ください。
PECARNルール(受診判断の簡易フロー)
PECARN(Pediatric Emergency Care Applied Research Network)は、頭部CT検査が必要かどうかを判断するための臨床予測ルールです [1][2]。約42,000人の小児データから開発された、世界で最も広く使われている判断基準です。
重要: PECARNルールは「CT検査が必要か」を判断する医療者向けのツールです。以下は保護者向けに簡略化したものです。受診するかどうかの最終判断は医師にお任せください。
2歳未満のお子さん
| 確認項目 | 当てはまる場合 |
|---|---|
| GCS(意識レベル)が14以下 | CT推奨 [1] |
| 頭蓋骨骨折の所見がある(触知可能な陥没、側頭部のぶよぶよしたたんこぶ) | CT推奨 [1] |
| 意識の変化がある(いつもと様子が違う) | CT推奨 [1] |
| 上記に当てはまらず、以下の項目がある場合: | 経過観察 or CT(医師が判断)[1] |
| - 5cm以上のたんこぶ(前額部以外、特に側頭部・頭頂部) | |
| - 意識消失(5秒以上) | |
| - 受傷機転が重い(0.9m以上の転落、硬い物への衝突など) | |
| - 保護者から見て「いつもと様子が違う」 | |
| 上記いずれにも当てはまらない | CT不要(ciTBI※リスク 0.02%未満) [1] |
2歳以上のお子さん
| 確認項目 | 当てはまる場合 |
|---|---|
| GCS(意識レベル)が14以下 | CT推奨 [1] |
| 頭蓋骨骨折の所見がある | CT推奨 [1] |
| 意識消失がある | CT推奨 [1] |
| 上記に当てはまらず、以下の項目がある場合: | 経過観察 or CT(医師が判断)[1] |
| - 嘔吐がある | |
| - 受傷機転が重い(1.5m以上の転落など) | |
| - 頭痛が強い | |
| 上記いずれにも当てはまらない | CT不要(ciTBIリスク 0.05%未満) [1] |
※ ciTBI = clinically-important traumatic brain injury(臨床的に重要な外傷性脳損傷)
PECARNルールのポイント [1][2]:
| 項目 | データ |
|---|---|
| 感度(見逃さない確率) | 96.8〜100% [1] |
| 対象 | GCS 14〜15(意識がほぼ正常)の小児頭部外傷 |
| 目的 | 不必要なCT検査を減らすこと(被曝リスクの低減)[1][4] |
| 限界 | GCS 13以下(意識レベルが明らかに低い)には適用しない(→ CT実施) |
受診前に確認しておくこと
以下の表を埋めて、受診時に医師に見せてください。正確な情報は適切な診断の助けになります [2][3]。
| 確認項目 | メモ欄 |
|---|---|
| 受傷日時 | __月__日__時__分頃 |
| 受傷場所 | 自宅 / 保育園 / 公園 / その他(____) |
| 受傷機転(何が起きたか) | 転倒 / 転落(高さ:約__cm)/ ぶつかった / その他(____) |
| ぶつけた部位 | おでこ / 頭頂部 / 側頭部(こめかみ付近)/ 後頭部 |
| ぶつけた相手 | 床(フローリング / カーペット / コンクリート)/ 家具(__)/ 遊具 / その他 |
| 受傷時の意識消失 | あり(__秒くらい)/ なし / 不明(目撃していない) |
| 受傷直後の反応 | すぐ泣いた / しばらく泣かなかった / ぼーっとしていた |
| 嘔吐 | なし / あり(__回。最後は__時頃) |
| 頭痛 | なし / あり(軽い / 強い / 徐々に悪化) |
| たんこぶ | なし / あり(場所:____、大きさ:約__cm) |
| 出血 | なし / あり(場所:____、止まった / 続いている) |
| その他の気になる症状 | ____________ |
| 普段の様子と比べて | いつもと同じ / 少し元気がない / 明らかにいつもと違う |
| 既往歴(出血の病気など) | なし / あり(______) |
| 内服中の薬 | なし / あり(______) |
48時間の経過観察チェックリスト
頭をぶつけた後、最初の48時間は特に注意深い観察が必要です [1][2][5]。以下のチェックリストを使って、お子さんの様子を定期的に確認してください。
観察のタイミング
| 時間帯 | 推奨される観察頻度 |
|---|---|
| 受傷後0〜6時間 | 1時間ごとに確認 [5] |
| 受傷後6〜24時間 | 2〜3時間ごとに確認 [5] |
| 受傷後24〜48時間 | 4〜6時間ごとに確認 [5] |
| 夜間の睡眠中 | 完全に起こす必要はないが、寝返りや呼吸を確認 [5] |
以下の症状が出たらすぐに救急へ
- 意識レベルが低下した(起こしても起きない、ぼーっとしている)[1][2]
- 嘔吐が始まった、または嘔吐が増えている [1][2]
- けいれんが起きた [1]
- 頭痛がどんどん強くなっている [2]
- 片方の手足が動かしにくい、力が入らない [3]
- 歩き方がおかしい(ふらふらする)[3]
- ことばがおかしい(ろれつが回らない、つじつまが合わない)[3]
- 瞳孔の大きさが左右で違う [3]
- 鼻や耳から透明な液体や血が出てきた [3]
- たんこぶが急速に大きくなっている [2]
- いつもと明らかに様子が違う(保護者の直感も大切です)[1][2]
48時間以内のこんな変化にも注意
- いつもより眠りがち(起こせるが、すぐにまた寝てしまう)[5]
- 食欲がない [5]
- 機嫌が悪い、不機嫌が続く(乳児の場合:あやしても泣き止まない)[2]
- 顔色が悪い [3]
CT撮影の判断基準(保護者向け)
「CTを撮りましょう」と言われた場合、保護者として知っておきたいこと:
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| CTとは | 頭の中の状態をレントゲンで断面画像として撮影する検査 [4] |
| わかること | 頭蓋骨の骨折、脳内の出血、脳の腫れなど [3][4] |
| メリット | 重大な頭部損傷を迅速かつ正確に診断できる [4] |
| デメリット | 放射線被曝がある。小児は成人より放射線の影響を受けやすい [4][6] |
| 被曝量の目安 | 頭部CTの1回の被曝量は約1〜2mSv [4] |
CT検査が「推奨される」場合 [1][2]:
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 意識レベルの低下(GCS 14以下) | 頭蓋内損傷のリスクが高い [1] |
| 頭蓋骨骨折の所見がある | 骨折に伴う出血のリスク [1] |
| 繰り返す嘔吐、強い頭痛 | 頭蓋内圧亢進の可能性 [1][2] |
| 受傷機転が重い | 高エネルギー外傷による損傷リスク [1] |
CT検査が「不要」と判断される場合 [1][2]:
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| PECARNルールで低リスクに該当 | ciTBIのリスクが0.05%未満 [1] |
| 受傷後数時間経過しても全く無症状 | 経過観察で十分と判断 [2] |
| 軽微な受傷機転で症状なし | 不必要な被曝を避ける [4] |
おかもん先生のメモ: 「CTを撮らなくて大丈夫ですか?」と不安に思われる方は多いです。PECARNルールに基づいて「CT不要」と判断された場合、重大な脳損傷のリスクは0.05%未満です [1]。ただし、リスクがゼロではないため、48時間の経過観察が非常に重要です。少しでも気になる変化があれば、遠慮なく再受診してください。
先生に聞いておきたいこと
- 「CTは必要ですか?」
- 「今日の夜、気をつけることはありますか?」
- 「夜中に起こして確認したほうがいいですか?」
- 「お風呂は入ってもいいですか?」
- 「保育園(幼稚園・学校)はいつから行けますか?」
- 「運動はいつから再開していいですか?」
- 「こういう症状が出たらもう一度来たほうがいいですか?」
- 自分のギモン: ____________
家庭でできるケアの要点
| やること | 具体的に |
|---|---|
| 安静 | 受傷当日は激しい運動を避ける。静かに過ごす [5] |
| 冷却 | たんこぶには冷やしたタオルや保冷剤(直接当てない)を15〜20分 [5] |
| 観察 | 48時間は上記のチェックリストに沿って定期的に確認 [5] |
| 睡眠 | 寝かせてOK。ただし定期的に呼吸や寝返りを確認 [5] |
| 水分・食事 | 吐き気がなければ普段どおりでOK |
| 鎮痛 | 頭痛があればアセトアミノフェン(カロナール)を使用。アスピリン・イブプロフェンは避ける(出血リスク)[5] |

おかもん先生より
頭をぶつけた時、保護者の方が最も不安に感じるのは「大丈夫なのか、そうでないのか」の判断だと思います。このチェックリストが、その判断の助けになれば幸いです。迷ったら受診する、というのが一番安全な選択です。PECARNルールは世界中で使われている信頼性の高い基準ですが、「保護者の直感」も大切な判断材料です [1][2]。「いつもと何か違う」と感じたら、遠慮なく受診してください。関連記事: vol070_子どものための防災チェックリスト
まとめ
- 頭をぶつけた時、意識消失・繰り返す嘔吐・けいれん・鼻耳からの液体漏出があればすぐ救急へ [1][2][3]
- PECARNルールは約42,000人のデータに基づく世界標準の判断基準。感度96.8〜100% [1]
- 2歳未満と2歳以上で確認ポイントが異なる。乳児の大泉門膨隆にも注意 [1][2]
- 受診時には受傷機転・意識の変化・嘔吐回数などを正確に伝えることが重要 [2][3]
- 受傷後48時間は注意深く経過観察。新たな症状が出たらすぐ再受診 [1][5]
- CTの要否は医師がPECARNルール等に基づいて判断。低リスクでもリスクはゼロではないため、観察が重要 [1][4]
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