愛育病院 小児科おかもん だより Vol.477
2026年版 子どもの熱中症、予防・応急処置・救急受診のサイン
今号のポイント
- 22025年夏は1898年以降で最高気温、子どもの熱中症リスクはさらに高まっている
- 4GL2024でⅣ度(深部体温40℃以上かつ意識障害)が新設、意識がおかしければ迷わず119番
- 6応急処置は首・脇・脚の付け根の3点冷却、OS-1少量、意識ない時は飲ませない
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
去年の夏は本当に異常でした。 気象庁によると、2025年の日本の夏の平均気温は基準値より+2.36℃高く、1898年の統計開始以降で過去最高でした。 東京都心では9月に3日連続で猛暑日を記録し、これも観測史上初めてのことでした。
毎年「また暑い夏が来た」と感じながら過ぎていきましたが、去年は質が違いました。 その熱を子どもたちの体はどう受けるのか。今号でまとめておきたいと思います。
Q1: 今年も暑い夏が続きそうです。子どもの熱中症はどんなサインに気をつけたらいいですか?
まず、2024年に日本救急医学会がガイドラインを改訂し、重症度分類に「Ⅳ度」が新設されました。
主な症状
- Ⅰ度
- 熱失神・熱けいれん・大量発汗・立ちくらみ
- Ⅱ度
- 頭痛・嘔吐・倦怠感・集中力低下
- Ⅲ度
- 意識障害・けいれん・体温40℃以上・臓器障害
- Ⅳ度(2024年新設)
- 深部体温40℃以上かつ意識レベルGCS8以下
対応の目安
- Ⅰ度
- 現場で対応可
- Ⅱ度
- 医療機関受診
- Ⅲ度
- 119番
- Ⅳ度(2024年新設)
- 119番・最緊急
Ⅳ度は多臓器不全に至るリスクが特に高い状態です。
子どもの場合、いくつかリスクが高くなる理由があります。 日本小児科学会によると、4つの生理的な特徴があります [2]。 基礎代謝が高く体内の熱産生が多いこと、体表面積が体重に対して大きく外気温の影響を受けやすいこと、循環血液量が少なく少量の脱水で循環が不安定になること、汗腺あたりの発汗量が少なく熱を外に逃がしにくいことです。
そして最も重要なのは、子どもは「暑い」「のどが渇いた」と自分から言い出せないことがとても多い点です。 よく外来で「全然訴えなかったんです」と聞きます。
家でよく見てほしいサインを挙げると、顔が真っ赤で汗びっしょり、いつもより元気がない、水を自分から飲もうとしない、呼びかけへの反応がぼんやりする、これらが重なってきたら要注意です。
ポイント
- GL2024でⅣ度が新設、意識障害+高体温は最緊急
- 子どもは訴えが遅れやすい、先回りして観察
- 顔色・ぐったり感・反応の鈍さに注意
Q2: 外で遊んでいて「暑い」と言い出したり、ぐったりしてきたらどうすれば?
まず「暑さ指数(WBGT)」の基準を頭に入れておいてください。 環境省が公表している目安では、WBGTが28℃を超えたら激しい運動は避け、31℃以上は外での運動を原則中止とされています [1]。 環境省のホームページ(wbgt.env.go.jp)でリアルタイムに確認できます。
ぐったりしていたり「暑い」と訴えてきたら、応急処置は3ステップです。
まずすぐに涼しい場所へ移動させます。 日陰や、エアコンの効いた建物の中が理想的です。
次に服を緩めながら、首の後ろ・脇の下・脚の付け根の3か所を冷やします。 ここには太い血管が走っていて、深部体温を早く下げられます。 保冷剤をタオルで包んで当てる、冷たい水道水で濡らしたタオルを使う、どちらでも構いません。 可能であれば扇風機や送風で気化熱を使うとさらに効果的です。
3番目として、意識があって自分で飲めるなら経口補水液(OS-1など)を少量ずつ飲ませます。
OS-1はスポーツドリンクよりナトリウム濃度が2〜3倍高く、糖質は3〜4分の1程度です [6]。 熱中症の脱水状態には体への吸収が速い組成になっています。 ただし消費者庁は「脱水状態でない人が普段の水分補給として飲むものではない」と注意しています。 元気な時は麦茶や水で十分です。
一方、意識がはっきりしない、呼びかけてもぼんやりしている、けいれんしている、体温が40℃以上ある、これらのいずれかがあれば飲み物は与えず、すぐに119番してください。 意識のない状態で無理に飲ませると誤嚥のリスクがあります。
| 119番が必要なサイン |
|---|
| 意識がおかしい・呼びかけへの反応がない |
| けいれんしている |
| 体温が40℃以上 |
| 冷やしても30分以上改善しない |
ポイント
- WBGT31以上で運動原則中止
- 冷却は首・脇・脚の付け根の3点
- 意識ない時は飲ませず119番
Q3: 車の中に残してしまうケースや、室内での熱中症など、見落としやすい場面はありますか?
最初に車内の話をします。
米国のデータ(noheatstroke.org)によると、1998年以降の車内熱中症による子どもの死亡は累計1,047人で、年平均37人です。 亡くなった子の平均年齢は47.2か月、つまり約4歳です [7]。
日本でも毎年報告があります。「ほんの5分だから」「エンジンかけたまま」「窓を少し開けた」。 そのどれも、外気温25℃の日には車内を45℃以上に、35℃なら60℃以上に押し上げます。 窓を数センチ開けても、この温度上昇はほとんど変わりません。
車を降りるときは、後部座席に荷物を一つ意識的に置いておく習慣が海外では推奨されています。 荷物を取るために開けたとき、必ず子どもの存在を確認することになります。
もう一つ見落とされやすいのが室内です。 2024年の消防庁データでは、熱中症の発生場所として「住居」が38.0%と最も多く、道路の19.0%を大きく上回っています [3]。
エアコンを「もったいない」と思って使わない、高齢のご家族がいて温度設定で揉める、乳幼児がいて風が直接当たるのを心配して切っている。 こういったケースが実際にあります。
室内は28℃以下に保つことが目安です。 子どもに直接風が当たらないよう向きを工夫すれば、エアコンを使うことに問題はありません。
もう一つ知っておいてほしいのが「熱中症特別警戒アラート」です。 2024年から環境省が運用を始めた制度で、WBGTが35以上になると予測される場合に発表されます。 通常の熱中症アラート(WBGT33以上)より一段上の警戒を意味します。 運用開始以降の発表回数は環境省の発表履歴ページ(wbgt.env.go.jp/alert_record.php)で確認できます。いつ出てもおかしくない状況が続いていますので、夏は環境省サイトをチェックする習慣を。
ベビーカーについても一言。 地面に近いほど輻射熱が高く、地上50センチの高さでは大人が感じる気温より3〜4℃高くなることがあります。 炎天下に長時間外出するときは、日よけカバーをかけ、こまめに中の様子を確認してください。
港区には区民センターや図書館など、涼める屋内施設が各地区にあります。 暑い日の外出先として活用するのも一つの手です。
ポイント
- 車内は5分でも危険、降車時は必ず後部座席を確認
- 住居での発生が最多、室内28℃以下を維持
- 熱中症特別警戒アラート(WBGT35以上)は最高水準の警戒