愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.465
「心臓に雑音があると言われました」、新生児・乳児の心雑音と先天性心疾患スクリーニング
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「退院前の診察で心雑音があると言われました」「1か月健診で経過観察と言われ心配です」「ミルクの飲みが悪く汗をかきます」、新生児期から乳児前半は先天性心疾患が初めて発見されやすい時期です。先天性心疾患の頻度は約100人に1人、日本では年間約1万人が生まれます [1]。今回は、新生児・乳児の心雑音と、先天性心疾患のスクリーニングについて整理します。
Q1.「新生児の心雑音の原因は何ですか?」
——出生後すぐの診察で心雑音が聴こえると言われました
新生児期の心雑音は『胎児循環から新生児循環への移行』に伴うものと、先天性心疾患によるものがあります [1]。出生後は動脈管・卵円孔が閉鎖する過程で一時的に雑音が聴こえることがあり、生後数日〜数週で消失します [1]。一方で持続する雑音や強い雑音は先天性心疾患を疑う所見です [1]。
| 新生児期の心雑音の原因 [1] |
|---|
| 動脈管開存に伴う雑音(多くは自然閉鎖) |
| 末梢性肺動脈狭窄(生理的、6か月頃までに消失) |
| 心室中隔欠損症 |
| 心房中隔欠損症 |
| ファロー四徴症などのチアノーゼ型疾患 |
| 心雑音の評価項目 [1] |
|---|
| 聴こえる時期(収縮期/拡張期) |
| 強度(Levine 1〜6度) |
| 部位・放散 |
| 呼吸・チアノーゼの有無 |
| 体重増加・哺乳力 |
ポイント
- 新生児期は移行性の雑音もある [1]
- 持続・強い雑音は精査対象 [1]
- 症状の有無が重要 [1]
Q2.「新生児パルスオキシメトリー検査とは何ですか?」
——産院で手足に機械をつけて測定していました
新生児パルスオキシメトリー検査(パルスオキシメトリー・スクリーニング)は、生後24〜48時間に右手と足の酸素飽和度(SpO2)を測定し、チアノーゼ型重症先天性心疾患をスクリーニングする検査です [2]。Ewerらの多施設研究では、重症先天性心疾患の検出感度は約75%、無症候の症例でも発見できる利点が示されています [2]。日本でも多くの産科施設で実施されています [2]。
| 検査の基準(日本小児循環器学会) [2] |
|---|
| 生後24〜48時間に実施 |
| 右手と足のSpO2を測定 |
| いずれかが95%未満、または両部位で3%以上の差があれば陽性 |
| 陽性例は心エコー・心臓専門医による精査 |
| この検査で発見されやすい疾患 [2] |
|---|
| 大動脈縮窄症 |
| 左心低形成症候群 |
| 総肺静脈還流異常症 |
| 完全大血管転位症 |
| ファロー四徴症(重症型) |
| 検査の限界 [2] |
|---|
| 非チアノーゼ型疾患(心室中隔欠損等)は検出不可 |
| 動脈管が開存している間は検出困難な例がある |
| 陰性でも症状出現時は再評価が必要 |
ポイント
- 生後24〜48時間の必須スクリーニング [2]
- 重症先天性心疾患の早期発見に有効 [2]
- 陰性でも症状出現時は要受診 [2]
Q3.「先天性心疾患にはどんな種類がありますか?」
——先天性心疾患といっても種類が多くてわかりません
先天性心疾患はチアノーゼの有無で大別されます [1]。非チアノーゼ型で最も頻度が高いのは心室中隔欠損症(VSD)で先天性心疾患全体の約30%を占めます [1]。チアノーゼ型ではファロー四徴症が代表的です [1]。
| 非チアノーゼ型(左→右シャント) [1] |
|---|
| 心室中隔欠損症(VSD):約30% |
| 心房中隔欠損症(ASD) |
| 動脈管開存症(PDA) |
| 肺動脈狭窄症 |
| 大動脈縮窄症 |
| チアノーゼ型(右→左シャント) [1] |
|---|
| ファロー四徴症 |
| 完全大血管転位症 |
| 総肺静脈還流異常症 |
| 三尖弁閉鎖症 |
| 左心低形成症候群 |
| 頻度の高い症状 [1] |
|---|
| 非チアノーゼ型:多呼吸・哺乳不良・体重増加不良・発汗 |
| チアノーゼ型:口唇・爪床のチアノーゼ、無酸素発作 |
ポイント
- 最多はVSD [1]
- 症状でタイプを推測できる [1]
- 確定診断は心エコー [1]
Q4.「どんな症状があれば心疾患を疑いますか?」
——普段の様子で心疾患に気づくサインはありますか?
乳児期の心不全徴候は『哺乳不良・多呼吸・体重増加不良』の3つが代表的です [1]。乳児は心不全があっても『疲れて飲めない』『飲みながら汗をかく』という形で現れ、保護者が最も早く気づく立場にあります [1]。
| 乳児期の心不全徴候 [1] |
|---|
| 哺乳に時間がかかる・途中で疲れて休む |
| 哺乳中・哺乳後に多量の発汗 |
| 多呼吸(60回/分以上)・陥没呼吸 |
| 体重増加不良 |
| 顔色不良・チアノーゼ |
| 機嫌が悪く、すぐ疲れる |
| 速やかな受診が必要な症状 [1] |
|---|
| 口唇・爪床のチアノーゼ |
| 呼吸が速くて苦しそう |
| ぐったりして哺乳しない |
| 無酸素発作(チアノーゼ+意識消失) |
| 定期受診で評価すべき項目 [1] |
|---|
| 成長曲線(体重・身長) |
| 哺乳量・哺乳時間 |
| 呼吸数・心拍数 |
| 心雑音の有無と性状 |
ポイント
- 哺乳不良・多呼吸・体重増加不良が3徴 [1]
- 発汗・易疲労も重要サイン [1]
- チアノーゼ・無酸素発作は緊急 [1]
Q5.「心エコー検査で何がわかりますか?」
——心エコーを勧められました。どんな検査ですか?
心エコー(心臓超音波検査)は先天性心疾患の診断におけるゴールドスタンダードです [1]。被曝なく、安全に、心臓の構造・弁の動き・血流・機能を評価できます [1]。日本小児循環器学会のガイドラインでも、心雑音を聴取した新生児・乳児には心エコーによる評価が推奨されています [1]。
| 心エコーでわかること [1] |
|---|
| 心房・心室の大きさと壁厚 |
| 中隔欠損の有無・大きさ |
| 弁の形態と動き |
| 血流の方向・速度(カラードプラ) |
| 心機能(駆出率) |
| 肺動脈圧の推定 |
| 検査の特徴 [1] |
|---|
| 無侵襲・被曝なし |
| 鎮静が必要な場合もある |
| 所要時間は15〜30分程度 |
| 同日の結果説明が可能 |
| 心エコーで除外できない疾患 [1] |
|---|
| 不整脈(心電図・ホルター心電図で評価) |
| 冠動脈病変の一部(CT・MRIで補完) |
ポイント
- 心エコーは無侵襲のゴールドスタンダード [1]
- 小児循環器専門医での評価が望ましい [1]
- 不整脈は別の検査が必要 [1]
Q6.「無害性心雑音と言われました。本当に大丈夫ですか?」
——心エコーは異常なしで無害性と言われましたが心配です
無害性心雑音(innocent murmur)は健康な小児の50〜70%で聴取される、心臓の構造に異常がない雑音です [3]。収縮期のやわらかい雑音で、体位変換・呼吸・発熱で変化するのが特徴です [3]。治療・運動制限は不要で、経過観察で問題ありません [3]。ただし初回の評価は専門医の心エコーで確認しておく意義があります [3]。
| 無害性心雑音の特徴 [3] |
|---|
| 収縮期のみ(拡張期雑音は病的) |
| Levine 2/6度以下のやわらかい雑音 |
| 体位・呼吸で変化する |
| 症状・成長に影響なし |
| 心電図・心エコーで異常なし |
| 代表的な無害性心雑音 [3] |
|---|
| Still雑音(左縁下部の音楽様雑音) |
| 肺動脈駆出性雑音 |
| 頸静脈雑音 |
| 上行大動脈駆出音 |
| 経過観察のポイント [3] |
|---|
| 通常の予防接種・健診でOK |
| 運動制限は不要 |
| 発熱時に雑音が強くなっても心配不要 |
| 症状出現時は再評価 |
ポイント
- 無害性心雑音は小児の50〜70%で聴取 [3]
- 運動制限・治療は不要 [3]
- 初回は心エコーで確認が安心 [3]
今号のまとめ
- 先天性心疾患は約100人に1人、年間約1万人が出生 [1]
- 新生児パルスオキシメトリー検査でチアノーゼ型重症疾患を早期発見 [2]
- 最多はVSD(非チアノーゼ型)、代表的チアノーゼ型はファロー四徴症 [1]
- 心不全3徴:哺乳不良・多呼吸・体重増加不良 [1]
- 心エコーは無侵襲のゴールドスタンダード [1]
- 無害性心雑音は小児の50〜70%で聴取、治療・運動制限不要 [3]
あわせて読みたい
- Vol.235「川崎病」
- Vol.236「先天性心疾患」
- Vol.237「不整脈」
ご質問・ご感想
「パルスオキシメトリー検査の結果が気になる」「心エコーを受けるべきか」など、ご質問がございましたらお気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。