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おたふく風邪の合併症、難聴・髄膜炎・精巣炎への対応
Vol.49感染症

おたふく風邪の合併症、難聴・髄膜炎・精巣炎への対応

おたふく風邪の合併症とリスク

感染症1〜3歳・3〜6歳・6〜12歳15
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 14·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • おたふく風邪の合併症は、軽症から重症まで幅広い
  • 難聴は突然発症し、治療法がない。早期発見が重要
  • 無菌性髄膜炎は自然に治るが、精巣炎は不妊のリスクがある

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.49

おたふく風邪の合併症、難聴・髄膜炎・精巣炎への対応

今号のポイント

  1. 2
    おたふく風邪の合併症は、軽症から重症まで幅広い
  2. 4
    難聴は突然発症し、治療法がない。早期発見が重要
  3. 6
    無菌性髄膜炎は自然に治るが、精巣炎は不妊のリスクがある

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「おたふく風邪になって、急に耳が聞こえにくくなりました……」、おたふく風邪の最も恐ろしい合併症がムンプス難聴です。また、頭痛・嘔吐が強い(髄膜炎)、思春期以降の男性で睾丸が腫れて痛い(精巣炎)なども、おたふく風邪の合併症として知られています [1]。

今回は、おたふく風邪の合併症の症状・診断・治療 についてお伝えします。

Q1.「おたふく風邪の合併症にはどんなものがありますか?」

——おたふく風邪になると、どんな合併症が起こるんですか?

おたふく風邪(ムンプス)の合併症は、軽症のものから重症のものまで様々です [1]。頻度と重症度をまとめます

おたふく風邪の主な合併症:

合併症頻度重症度後遺症
無菌性髄膜炎約10% [2]中等度ほぼなし
難聴約0.1%(1,000人に1人) [3]重度永久的 [3]
精巣炎思春期以降の男性の20〜30% [4]中等度不妊のリスク(まれ)
卵巣炎思春期以降の女性の約5% [4]軽〜中等度不妊のリスク(非常にまれ)
膵炎約4% [5]軽〜中等度ほぼなし
脳炎0.02〜0.3% [6]重度けいれん、意識障害

これらの合併症の中で、最も頻度が高いのは無菌性髄膜炎(約10%)、最も深刻なのは難聴(治療法なし)です [2][3]。それぞれについて詳しく説明します

ポイント

  • おたふく風邪の合併症は 軽症から重症まで様々 [1]
  • 最も頻度が高い: 無菌性髄膜炎(約10%) [2]
  • 最も深刻: 難聴(0.1%、治療法なし) [3]
  • 思春期以降の男性: 精巣炎(20〜30%) [4]

Q2.「ムンプス難聴について教えてください」

——おたふく風邪で耳が聞こえなくなることがあるんですか?

はい。おたふく風邪による難聴(ムンプス難聴)は、約1,000人に1人の頻度で起こります [3]。最も恐ろしい合併症です

ムンプス難聴の特徴:

発症頻度と時期

  • 頻度: 約0.1%(1,000人に1人) [3]
  • 発症時期: 耳下腺が腫れてから数日以内(多くは3〜7日目)
  • 年齢: 5歳以上に多い [7]

難聴の特徴

項目内容
左右差片側性が80%、両側性が20% [7]
程度高度〜重度の感音性難聴(60〜100dB以上) [7]
発症様式突然発症(朝起きたら聞こえない、など)
随伴症状めまい(約30%)、耳鳴り(約20%) [8]
治療有効な治療法はない [3]
予後ほぼ回復しない(永久的な難聴) [3]

ムンプス難聴の症状に気づく方法を知っておくことが大切です

ムンプス難聴を疑うサイン:

乳幼児(本人が訴えられない場合)

  • 呼びかけに反応しない
  • 音の出るおもちゃに反応しない
  • テレビの音量を上げる
  • 片方の耳を向けて聞こうとする

学童以降(本人が訴えられる場合)

  • 「耳が聞こえにくい」と訴える
  • 片方の耳が聞こえない
  • 耳鳴りがする
  • めまいがする

もしおたふく風邪の最中や治った後に、これらのサインがあれば、すぐに耳鼻科を受診してください [8]。ただし、有効な治療法はないのが現実です [3]。ステロイド薬を試みることもありますが、効果はほとんど期待できません [9]

日本耳鼻咽喉科学会の全国調査(2015〜2016年):

  • 2年間で 348人がムンプス難聴を発症 [10]
  • つまり、年間約700〜800人が発症している計算
  • そのうち300人(86%)が片側性、48人(14%)が両側性 [10]

つまり、毎年700〜800人の子どもが、治らない難聴になっている計算です [10]。ワクチンで防げるはずのものです(詳しくはVol.048参照)

ポイント

  • ムンプス難聴は 約1,000人に1人の頻度 [3]
  • 突然発症し、片側性が多い(80%) [7]
  • 有効な治療法はなく、ほぼ回復しない [3]
  • 日本では 年間約700〜800人が発症 [10]
  • 予防(ワクチン)が唯一の対策 [10]

Q3.「無菌性髄膜炎について教えてください」

——おたふく風邪になって、頭痛と嘔吐がひどいんです。髄膜炎でしょうか?

おたふく風邪の合併症で最も頻度が高いのが無菌性髄膜炎です [2]。約10%の患者に起こります

無菌性髄膜炎の特徴:

発症頻度と時期

  • 頻度: 約10%(10人に1人) [2]
  • 発症時期: 耳下腺が腫れてから3〜10日後が多い
  • 男児に多い(男:女 = 3:1) [11]

症状

頻度

頭痛
ほぼ100%
嘔吐
約80% [11]
発熱
約60%
項部硬直
約50% [11]
けいれん
まれ

特徴

頭痛
強い頭痛
嘔吐
繰り返す嘔吐
発熱
38〜39℃
項部硬直
首を前に曲げると痛い
けいれん
重症例のみ

診断は、髄液検査(腰椎穿刺)で行います [12]

髄液検査の所見:

項目無菌性髄膜炎の所見
細胞数増加(100〜500/μL、リンパ球主体)
蛋白軽度増加
正常
細菌培養陰性(細菌はいない)

「無菌性」というのは、細菌が出ないという意味です [12]。ウイルス(ムンプス)による髄膜炎なので、抗生物質は効きません

無菌性髄膜炎の治療:

治療方針

  • 対症療法が中心 [13]
  • 特効薬はない
  • ほとんどは 1〜2週間で自然に治る [13]

具体的な治療

  • 輸液: 脱水を防ぐ
  • 解熱鎮痛薬: 頭痛・発熱に対してアセトアミノフェン
  • 安静: 入院して様子を見る

無菌性髄膜炎は、細菌性髄膜炎とは違い、後遺症はほとんどありません [13]。ただし、入院治療が必要で、お子さんも保護者も辛い1〜2週間を過ごすことになります

細菌性髄膜炎との鑑別:

無菌性髄膜炎

原因
ウイルス(ムンプスなど)
重症度
軽〜中等度
治療
対症療法
予後
ほぼ良好

細菌性髄膜炎

原因
細菌(肺炎球菌など)
重症度
重症
治療
抗生物質
予後
後遺症・死亡のリスク

ポイント

  • 無菌性髄膜炎は 約10%の頻度 [2]
  • 症状: 頭痛、嘔吐、発熱 [11]
  • 診断は 髄液検査で行う [12]
  • 対症療法のみ、1〜2週間で自然に治る [13]
  • 後遺症は ほとんどない [13]

Q4.「精巣炎・卵巣炎について教えてください」

——おたふく風邪で男性不妊になると聞きました。本当ですか?

思春期以降の男性がおたふく風邪にかかると、約20〜30%で精巣炎(睾丸の炎症)が起こります [4]。ただし、不妊になるのはまれです [14]

精巣炎の特徴:

発症頻度と時期

  • 頻度: 思春期以降の男性の20〜30% [4]
  • 発症時期: 耳下腺が腫れてから4〜8日後
  • 思春期前の男児ではまれ(約2%) [15]

症状

症状特徴
睾丸の腫れ片側(約70%)または両側(約30%) [4]
痛み強い痛み
発赤・熱感陰嚢が赤く熱を持つ
発熱38〜39℃

精巣炎の診断は、症状と身体診察で行います [16]。超音波検査で精巣の腫れを確認することもあります

精巣炎の治療:

治療方針

  • 対症療法が中心 [16]
  • 特効薬はない

具体的な治療

  • 安静・冷却: 陰嚢を冷やす、サポーターで固定
  • 鎮痛薬: アセトアミノフェンやNSAIDs
  • ステロイド薬: 重症例では検討(効果は限定的) [17]

精巣炎と不妊の関係:

項目内容
片側性精巣炎不妊のリスクはほとんどない [14]
両側性精巣炎不妊のリスクあり(約10〜30%) [14]
精巣萎縮約30〜50%で起こる [18]

両側性の精巣炎でも、ほとんど(70〜90%)の方は正常な生殖能力を保ちます [14]。ただしゼロリスクではないので、ワクチンで防ぐのが安全です(Vol.048参照)

卵巣炎の特徴:

  • 頻度: 思春期以降の女性の約5% [4]
  • 症状: 下腹部痛、発熱
  • 不妊: 非常にまれ [19]

ポイント

  • 精巣炎は思春期以降の男性の 20〜30%に発症 [4]
  • 片側性が多い(約70%) [4]
  • 両側性でも、70〜90%は正常な生殖能力 [14]
  • 治療は 対症療法(安静、冷却、鎮痛薬) [16]
  • 予防(ワクチン)が重要 [4]

Q5.「おたふく風邪の合併症を予防するにはどうすればいいですか?」

——合併症が怖いです。予防する方法はありますか?

おたふく風邪の合併症を予防する最も確実な方法は、ワクチン接種です [20]

ワクチンによる合併症予防効果:

自然感染での頻度

難聴
0.1%(1,000人に1人) [3]
無菌性髄膜炎
約10% [2]
精巣炎
20〜30%(思春期以降の男性) [4]

ワクチン接種での予防効果

難聴
ほぼ完全に予防 [21]
無菌性髄膜炎
大幅に減少 [22]
精巣炎
約90%予防 [20]

つまり、ワクチン接種が唯一の効果的な予防法です [20]。特に、難聴は治療法がないため、ワクチンで予防することが極めて重要です [3]

ワクチン接種の推奨:

  • 1歳と小学校入学前の2回接種 [23]
  • 詳しくはVol.048を参照

既におたふく風邪にかかってしまった場合の対応:

合併症の早期発見

  • 難聴: 聞こえにくい、耳鳴り、めまい → すぐに耳鼻科受診 [8]
  • 髄膜炎: 強い頭痛、嘔吐、首の硬さ → すぐに小児科受診 [12]
  • 精巣炎: 睾丸の腫れ・痛み → すぐに小児科または泌尿器科受診 [16]

ホームケア

  • 安静: 無理をせず休む
  • 水分補給: 脱水を防ぐ
  • 栄養: 食べられるものを食べる(酸っぱいものは避ける)
  • 経過観察: 合併症のサインに注意

おたふく風邪にかかった後の経過観察:

時期注意点
発症〜7日難聴、髄膜炎のサインに注意 [7][11]
7〜14日精巣炎、膵炎のサインに注意 [4][5]
2週間以降難聴の確認(聴力検査を検討) [8]

特に、難聴は片側性が多く、本人も気づきにくいことがあります [7]。おたふく風邪が治った後に、聴力検査を受けることをお勧めします [8]

ポイント

  • 合併症予防の 最も確実な方法はワクチン接種 [20]
  • ワクチンで 難聴はほぼ完全に予防可能 [21]
  • 既にかかった場合: 合併症のサインに注意 [7][11][4]
  • 治った後も 聴力検査を検討 [8]

まとめ

  • おたふく風邪の合併症は、無菌性髄膜炎(10%)が最多
  • 難聴(0.1%)は治療法がなく、最も深刻
  • 無菌性髄膜炎は 1〜2週間で自然に治る
  • 精巣炎は思春期以降の男性の 20〜30%に発症するが、不妊はまれ
  • ワクチン接種が唯一の効果的な予防法

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