愛育病院 小児科おかもん だより Vol.42
「耳を痛がっているけど、中耳炎?」、知っておきたい中耳炎の5つのこと
今号のポイント
- 2急性中耳炎は風邪のウイルス・細菌が耳に広がって起こる
- 4すべての中耳炎に抗生物質が必要なわけではない
- 6滲出性中耳炎は痛みがなく、難聴で気づかれることが多い
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「風邪を引いたら耳を痛がって……」、小さなお子さんが風邪を引くと、中耳炎になることがよくあります。実は、3歳までに約80%の子どもが少なくとも1回は中耳炎を経験すると言われています [1]。
今回は、中耳炎の種類、見分け方、治療法、予防について、よくある質問にお答えします。
Q1.「中耳炎って、どうしてなるんですか?」
——風邪を引くと、どうして耳まで痛くなるんですか?
それは、鼻と耳がつながっているからなんです
中耳炎のメカニズム:
耳の構造
- 鼓膜の奥の空間を中耳と呼ぶ
- 中耳は耳管(じかん)という管で鼻の奥とつながっている [2]
- 耳管は中耳の換気と圧力調整をしている
なぜ風邪で中耳炎になるのか?
| ステップ | 起こること |
|---|---|
| ① 風邪を引く | 鼻・のどにウイルス・細菌が増える |
| ② 鼻が腫れる | 耳管の入り口が腫れて狭くなる [2] |
| ③ 耳管が詰まる | 中耳の換気ができなくなる |
| ④ 細菌が侵入 | 鼻の細菌が耳管を通って中耳に入る [2] |
| ⑤ 中耳炎発症 | 中耳に膿がたまる |
——鼻と耳がつながっているから、風邪が耳に広がるんですね
そうなんです。特に子どもの耳管は大人より短くて太くて水平なので、鼻の細菌が耳に入りやすいんです [2]。これが、子どもに中耳炎が多い理由です
中耳炎になりやすい年齢:
- 6ヶ月〜3歳が最も多い [1]
- 3歳までに約80%が少なくとも1回は経験 [1]
- 保育園に通っている子はさらに多い [3]
ポイント
- 中耳炎は風邪のウイルス・細菌が耳管を通って中耳に入ることで起こる [2]
- 子どもの耳管は短く太く水平で、細菌が入りやすい [2]
- 3歳までに約80%が経験する [1]
Q2.「急性中耳炎と滲出性中耳炎って、どう違うんですか?」
——中耳炎にも種類があるって聞いたんですが……
はい。大きく分けて急性中耳炎と滲出性中耳炎があります。この2つはまったく違います [4]
急性中耳炎 vs 滲出性中耳炎:
急性中耳炎
- 原因
- 細菌・ウイルス感染 [2]
- 痛み
- 激しい耳痛あり
- 発熱
- あることが多い
- 聞こえ
- 痛みで気づく
- 鼓膜の状態
- 赤く腫れて膨らむ [4]
- 中耳の液体
- 膿(うみ)[4]
- 治療
- 抗生物質を使うことがある [6]
滲出性中耳炎
- 原因
- 耳管の機能不全 [5]
- 痛み
- 痛みなし(またはごく軽い) [5]
- 発熱
- ないことが多い
- 聞こえ
- 難聴で気づかれる [5]
- 鼓膜の状態
- 濁っているが腫れていない [5]
- 中耳の液体
- サラサラした液体(滲出液)[5]
- 治療
- 経過観察が基本 [7]
急性中耳炎の症状:
- 激しい耳痛(赤ちゃんは耳をよく触る、機嫌が悪い)[4]
- 発熱(37.5℃以上)
- 耳だれが出ることもある
- 風邪の症状(鼻水、咳)に続いて起こる
滲出性中耳炎の症状:
- 痛みがない(だから気づきにくい)[5]
- 聞こえが悪い(呼んでも返事をしない、テレビの音を大きくする)[5]
- 耳が詰まった感じ
- 急性中耳炎の後に起こることが多い [7]
急性中耳炎は痛みで気づきます。滲出性中耳炎は難聴で気づかれることが多いです [5]。3〜4ヶ月健診や就学前健診で初めて指摘されることもあります
ポイント
- 急性中耳炎: 激しい耳痛 + 発熱。細菌感染 [2][4]
- 滲出性中耳炎: 痛みなし、難聴あり。耳管機能不全 [5]
- 滲出性中耳炎は気づきにくい。健診で指摘されることも [7]
Q3.「中耳炎になったら、必ず抗生物質を飲まないといけませんか?」
——中耳炎と言われて抗生物質を出されたんですが、必ず飲まないといけませんか?
実は、すべての中耳炎に抗生物質が必要なわけではありません [6]
急性中耳炎の治療方針(日本耳科学会ガイドライン):
抗生物質をすぐ使う場合 [6]
- 2歳未満の急性中耳炎
- 重症の中耳炎(高熱、激しい痛み、鼓膜の強い腫れ)
- 両側の中耳炎
- 耳だれが出ている
抗生物質をすぐ使わない(経過観察)場合 [6]
- 2歳以上
- 軽症(微熱、軽い痛み)
- 片側のみ
- 48〜72時間以内にフォローアップできる
軽症の急性中耳炎の約80%は自然に治ることがわかっています [8]。だから、軽症なら2〜3日様子を見るという選択肢もあるんです [6]
経過観察中の対応:
- 痛み止め(アセトアミノフェンが第一選択)で痛みを和らげる [6]
- 2〜3日後に再診して、悪化していないか確認
- 悪化した場合(高熱が続く、痛みが増す)→ 抗生物質開始
——抗生物質を使わなくても治ることがあるんですね
はい。ただし、2歳未満、重症、両側の場合は、抗生物質をすぐに開始することが推奨されています [6]。これは医師が判断しますので、処方された場合はきちんと飲み切ってください
滲出性中耳炎の治療:
- 経過観察が基本 [7]
- 抗生物質は一般的に推奨されない(細菌感染ではないため)[7]
- 3ヶ月以上続く場合は耳鼻科で鼓膜切開や鼓膜チューブ留置を検討 [7]
ポイント
- すべての中耳炎に抗生物質が必要なわけではない [6]
- 軽症(2歳以上、片側、軽い痛み)は経過観察も選択肢 [6]
- 重症(2歳未満、両側、激しい痛み)は抗生物質をすぐ開始 [6]
- 滲出性中耳炎は経過観察が基本 [7]
Q4.「中耳炎を繰り返すんですが、どうしたらいいですか?」
——うちの子、3ヶ月で3回も中耳炎になっています。繰り返す子はどうすればいいですか?
反復性中耳炎ですね。珍しくありません
反復性中耳炎の定義 [9]:
- 6ヶ月間に3回以上、または1年間に4回以上の急性中耳炎
反復性中耳炎のリスク因子:
| リスク因子 | 理由 |
|---|---|
| 低年齢(特に6ヶ月〜2歳)[9] | 耳管が未熟 |
| 保育園通園 [3] | ウイルス・細菌への曝露が多い |
| おしゃぶりの長期使用 [10] | 耳管の開閉に影響 |
| 仰向けでの授乳 [10] | ミルクが耳管に逆流しやすい |
| 家族の喫煙 [10] | 鼻・耳管の粘膜を刺激 |
| アレルギー性鼻炎 [11] | 鼻の粘膜が腫れやすい |
反復性中耳炎への対応:
① リスク因子を減らす
- おしゃぶりは1歳過ぎたら減らす [10]
- 縦抱きで授乳 [10]
- 禁煙(家族全員)[10]
- アレルギー性鼻炎の治療
② 予防接種を確実に
- 肺炎球菌ワクチン(プレベナー)[12]
- インフルエンザワクチン [12]
- これらのワクチンで中耳炎のリスクが約20〜30%減る [12]
③ 鼻のケア
- 鼻吸いをこまめに
- 鼻水を鼻の奥に溜めない
- 鼻をかむ練習(3歳頃から)
④ 耳鼻科への紹介
- 3ヶ月以上続く滲出性中耳炎 [7]
- 難聴が続く場合
- 鼓膜チューブ留置を検討
多くの子は3〜4歳を過ぎると自然に減ります [9]。耳管が成長して、細菌が入りにくくなるからです。それまでは、予防と早期発見を心がけてください
ポイント
- 反復性中耳炎: 6ヶ月に3回以上または1年に4回以上 [9]
- リスク因子: 低年齢、保育園、おしゃぶり、受動喫煙、アレルギー [3][10][11]
- 肺炎球菌ワクチンで20〜30%予防 [12]
- 3〜4歳を過ぎると自然に減る [9]
Q5.「中耳炎の時、お風呂やプールは入っていいですか?」
——中耳炎の時、お風呂やプールはどうすればいいですか?
これ、よく聞かれます。鼓膜が破れていなければ、お風呂もプールも問題ありません [13]
お風呂・プールのルール:
急性中耳炎の場合
お風呂
- 鼓膜が破れていない
- ○ 入れる [13]
- 鼓膜が破れている(耳だれあり)
- ○ 入れる(耳に水を入れないように)[13]
- 高熱・激しい痛み
- △ シャワー程度に
プール
- 鼓膜が破れていない
- △ 熱・痛みがなければOK
- 鼓膜が破れている(耳だれあり)
- × 禁止 [13]
- 高熱・激しい痛み
- × 禁止
滲出性中耳炎の場合
- お風呂: ○ 問題なし
- プール: ○ 問題なし
- 水泳: ○ 問題なし(耳栓は不要)[13]
鼓膜が破れていない場合、中耳は密閉空間なので、お風呂やプールの水が中耳に入ることはありません [13]。だからお風呂もプールも大丈夫です
耳だれが出ている時:
- 鼓膜に穴が開いている状態
- お風呂は入れるが、耳に水が入らないように
- プールは禁止
- 耳鼻科で処置が必要
——鼓膜が破れていなければ、水は入らないんですね!
そうです。ただし、高熱や激しい痛みがある時は、お風呂は軽めにして安静にしてください。体力を消耗しますので
飛行機は乗れる?
- 急性中耳炎の時は避けたほうが無難 [13]
- 気圧の変化で激しい痛みが出ることがある [13]
- 滲出性中耳炎は多くの場合問題ないが、耳の痛みが出ることがある [13]
ポイント
- 鼓膜が破れていなければお風呂・プールOK
- 中耳は密閉空間。水は入らない
- 耳だれが出ている時はプール禁止
- 急性中耳炎の時は飛行機は避ける [13]
まとめ
- 中耳炎は風邪のウイルス・細菌が耳管を通って中耳に入ることで起こる [2]
- 急性中耳炎は激しい耳痛、滲出性中耳炎は難聴 [4][5]
- すべての中耳炎に抗生物質が必要なわけではない。軽症は経過観察も選択肢 [6]
- 反復性中耳炎は3〜4歳を過ぎると自然に減る [9]
- 鼓膜が破れていなければお風呂・プールOK
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