愛育病院 小児科おかもん だより Vol.313
「噛んだ」「噛まれた」、園でのお友達トラブル、年齢別の意味と親の対応
今号のポイント
- 21〜2歳の噛みつき・ひっかきは言葉の代わりの表現手段。言語発達とともに減少するので過度に心配しなくてよい
- 43〜4歳のおもちゃの取り合いは「所有」の概念が発達する過程。5歳頃の仲間はずれは社会性の成長に伴う行動
- 6親の介入は「安全の確保」と「保育士との連携」が基本。加害側・被害側どちらの親も子どもの気持ちに寄り添うことが大切
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
今回のテーマは園でのお友達トラブルです。
「お迎えに行ったら噛まれた跡がありました」「うちの子がお友達を叩いてしまいました」、外来でも園でのトラブルの相談はよく受けます。こうしたぶつかり合いの多くは、発達段階に応じた正常な行動で、社会性を学ぶ大事な機会でもあります。今号では、年齢別にトラブルの意味と対応を整理します。
Q1.「1歳の子がお友達を噛みます。どうしたらいいですか?」
——1歳半の子が保育園でお友達を噛んでしまいます。噛み癖は治りますか?
1〜2歳のお子さんの噛みつきは非常によく見られる行動で、保育園でのトラブルの代表格です [1]。この年齢の噛みつきは"言葉の代わり"だと理解してください
——言葉の代わり、ですか?
はい。1〜2歳のお子さんは、"このおもちゃが欲しい""近づかないで""かまってほしい"などの感情を言葉で伝える力がまだ十分に発達していません [1]。そこで、最も手っ取り早い身体的な手段、噛む、ひっかく、押す、で自分の意思を表現するのです [1][2]。決して"乱暴な性格"というわけではありません
噛みつきが多い時期は1歳〜2歳半頃で、言語能力が発達する2歳半〜3歳頃には自然に減少します [2]。"やめて""貸して""いやだ"などの言葉が使えるようになると、噛む必要がなくなるのです
| 噛みつきへの対応 | 具体的方法 |
|---|---|
| その場で短く制止 | 「噛んだら痛いよ。やめようね」と簡潔に伝える [2] |
| 代替行動を教える | 「貸してって言おうね」「手を出す前に先生を呼ぼうね」 [2] |
| 大げさに叱らない | 長い説教は1〜2歳には理解できない。短く、繰り返し伝える [1] |
| 噛み返さない | 「噛まれたら痛いでしょ」と噛み返すのは暴力を教えることになる [1] |
ポイント
- 1〜2歳の噛みつきは言葉の代わり。乱暴な性格ではない [1]
- 2歳半〜3歳頃に言語発達とともに自然に減少する [2]
- 噛み返す・大げさに叱るはNG。短く制止し代替行動を教える [1][2]
Q2.「おもちゃの取り合いが毎日あります」
お父さん「3歳の子が毎日のように"○○ちゃんがおもちゃ取った"と泣いて帰ってきます」
3歳前後のおもちゃの取り合いは、"所有"という概念を理解し始めた証です [3]。"これは僕のもの"という意識が芽生えますが、"順番に使う""共有する"といったルールはまだ理解が難しい時期です [3]
お父さん「"貸してあげなさい"と言えばいいですか?」
いきなり"貸してあげなさい"と言うと、お子さんは自分の所有権が否定されたと感じます [3]。以下のステップが効果的です。
| ステップ | 具体例 |
|---|---|
| 1. 気持ちを受け止める | 「そのおもちゃで遊びたかったんだね」 [3] |
| 2. 相手の気持ちを伝える | 「○○ちゃんも使いたいんだって」 [3] |
| 3. 解決策を一緒に考える | 「順番に使おうか? タイマーかけようか?」 [4] |
| 4. できたら具体的に褒める | 「順番に使えたね、かっこいいね」 [4] |
"貸して""いいよ"の強制は避けてください [4]。"貸して"と言われたら必ず"いいよ"と答えなければならない、というルールは、お子さんの"自分の意思でNo と言う権利"を奪います [4]。"今使っているから、終わったらね"という選択肢も教えてあげてください
ポイント
- おもちゃの取り合いは「所有」の概念の発達段階 [3]
- 気持ちを受け止める→相手の気持ちを伝える→解決策を考えるのステップが効果的 [3][4]
- 「貸して」「いいよ」の強制はNG。「今使っているから終わったらね」もOK [4]
Q3.「5歳の子が仲間はずれにされているようです」
——5歳の子が"○○ちゃんたちが入れてくれない"と言います。どうすればいいですか?
4〜5歳になると、特定の友達との関係が深まり、グループが形成されます [5]。同時に仲間はずれや"あっちいって"といった排他的な行動も見られるようになります。これは社会性の発達に伴う行動であり、"いじめ"とは区別する必要があります [5]
——仲間はずれといじめの違いは何ですか?
幼児期の仲間はずれは多くの場合、グループのダイナミクスの中で一時的に起きる現象で、"今日は○○ちゃんと遊びたい"という気持ちの表れです [5]。関係は流動的で、明日には仲良く遊んでいることも多いです。一方、特定の子が継続的・意図的に排除されるパターンは注意が必要で、保育士と連携して対応すべきです [5][6]
| 親の対応 | 具体例 |
|---|---|
| まず子どもの気持ちを聞く | 「悲しかったね。どんなことがあったか教えてくれる?」 [5] |
| すぐに介入しない | 子ども同士で解決する力を信じて見守る [6] |
| 「やめて」が言えるようにする | 「いやだ」「入れて」と自分で伝える練習をする [6] |
| 他の友達関係を広げる | 園以外の場でも友達関係を作る機会を設ける [5] |
| 保育士に状況を確認する | 子どもの話だけでなく、園での実際の様子を把握する [6] |
ポイント
- 4〜5歳の仲間はずれは社会性の発達に伴う行動。多くは一時的 [5]
- 「やめて」「入れて」を自分で言えるようにする練習が大切 [6]
- 継続的・意図的な排除は保育士と連携して対応 [5][6]
Q4.「加害側・被害側、それぞれの親はどう対応すればいいですか?」
お父さん「うちの子が噛んでしまった側なのですが、相手の親にどう対応すればいいですか?」
まず整理すると、園でのトラブルへの対応は基本的に園が仲介するのが原則です [6]。ただし、親御さんとしての対応も大切ですので、加害側・被害側それぞれのポイントをお伝えします。
| 立場 | 対応のポイント |
|---|---|
| 加害側の親 | |
| 子どもへの対応 | 「なぜ噛んだのか」の気持ちを聞く→「噛んだら痛いよ」と行動を修正する [2] |
| 相手の親への対応 | 園から話があった場合は誠実に謝罪する [6] |
| 自分自身 | "うちの子は乱暴"と決めつけない。発達段階の行動と理解する [1] |
| 被害側の親 | |
| 子どもへの対応 | 「痛かったね」と気持ちを受け止める。"やられたらやり返せ"とは言わない [6] |
| 園への対応 | 園に状況を確認し、再発防止策を相談する [6] |
| 自分自身 | 加害側の子も発達段階の行動であることを理解する [1] |
最も重要なのは保育士との連携です [6]。園でのトラブルは、保育士がその場で対応しています。お迎え時に"今日どんな様子でしたか?"と聞く習慣をつけると、状況を正確に把握できます。子どもの話だけでは一方的な情報になりがちですので、園と家庭の双方向のコミュニケーションを大切にしてください
もうひとつ大切なことがあります。園での友達トラブルは、社会性を学ぶための"練習"です [4][6]。ぶつかり合いの中で、"相手にも気持ちがある""ルールを守る""謝る""許す"といったスキルを獲得していきます。親が先回りして全てを防ごうとすると、この学びの機会を奪ってしまうことになります
ポイント
- 園でのトラブルは園が仲介するのが原則 [6]
- 加害側は行動を修正しつつ"乱暴な子"と決めつけない。被害側は気持ちを受け止めつつ"やり返せ"と言わない [1][2][6]
- 保育士との連携が最も重要。友達トラブルは社会性を学ぶ練習 [4][6]
今号のまとめ
- 1〜2歳の噛みつき・ひっかきは言葉の代わり。言語発達とともに減少する [1][2]
- おもちゃの取り合いは「所有」の概念の発達段階。「貸して」「いいよ」の強制はNG [3][4]
- 4〜5歳の仲間はずれは社会性の発達に伴う一時的な行動が多い [5]
- 「やめて」「貸して」「入れて」を自分で言えるようにする練習が大切 [6]
- 保育士との連携が基本。子どものトラブルは社会性を学ぶ貴重な機会 [4][6]
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愛育病院 小児科 おかもん
※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。記事中の情報は掲載時点の医学的知見に基づいており、今後の研究の進展により変更される可能性があります。