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「ゼーゼーして呼吸が苦しそう……」、RSウイルスと細気管支炎
Vol.38感染症

「ゼーゼーして呼吸が苦しそう……」、RSウイルスと細気管支炎

RSウイルスと細気管支炎の症状・治療・予防

感染症0〜6ヶ月・6〜12ヶ月16
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 14·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染し、特に乳児では重症化しやすい
  • 細気管支炎を起こすと、ゼーゼー・ヒューヒューの呼吸、陥没呼吸が出現
  • 特効薬はなく、対症療法が基本。呼吸困難のサインを見逃さないことが重要

愛育病院 小児科おかもん だより Vol.38

「ゼーゼーして呼吸が苦しそう……」、RSウイルスと細気管支炎

今号のポイント

  1. 2
    RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染し、特に乳児では重症化しやすい
  2. 4
    細気管支炎を起こすと、ゼーゼー・ヒューヒューの呼吸、陥没呼吸が出現
  3. 6
    特効薬はなく、対症療法が基本。呼吸困難のサインを見逃さないことが重要

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

「咳と鼻水が出始めて、だんだんゼーゼーしてきました。呼吸が苦しそうで……」、これはRSウイルス感染症による細気管支炎の典型的な症状です。

RSウイルスは、2歳までにほぼすべての子どもが感染し、特に生後6ヶ月未満の乳児では重症化しやすいウイルスです [1]。細気管支炎を起こすと呼吸困難になることがあり、乳児の入院原因として最も多い感染症のひとつです [2]。

今回は、RSウイルス感染症と細気管支炎について、症状・重症化のサイン・ホームケアをお伝えします。

Q1.「RSウイルスってどんな病気ですか? どのくらい多いんですか?」

——保育園でRSウイルスが流行っているそうです。どんな病気なんですか?

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児の呼吸器感染症の最も重要な原因ウイルスです [1]。正式には『RSウイルス感染症』といい、風邪のような軽い症状で済むこともあれば、細気管支炎(さいきかんしえん)や肺炎を起こして重症化することもあります [2]

RSウイルス感染症の基本情報:

項目内容
原因RSウイルス(A型・B型の2種類)[1]
罹患率2歳までにほぼ100%が感染 [1][3]
重症化リスク生後6ヶ月未満、特に3ヶ月未満が最もリスク高 [2][4]
流行時期秋〜冬(9月〜2月)。近年は夏にも流行 [5]
入院率1歳未満の約2〜3%が入院 [3]
再感染何度でも感染する(免疫が持続しない)[1]

——ほぼ100%が感染するんですか! でも聞いたことがない人も多いような……

それは、年齢が上がるほど症状が軽くなるからです [1]。2回目、3回目の感染では普通の風邪程度で済むことが多く、RSウイルスと気づかないんです。しかし、初めて感染する乳児、特に生後6ヶ月未満では、細気管支炎を起こして重症化しやすいのです [2][4]

——細気管支炎って何ですか?

細気管支炎(bronchiolitis)は、肺の奥の細い気管支(細気管支)にウイルスが感染して炎症を起こす病気です [6]。細気管支が腫れて狭くなり、さらに分泌物(痰)がたまることで、空気の通り道が狭くなります。その結果、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸(喘鳴=ぜんめい)や、呼吸困難が起こります [6]

細気管支炎の原因ウイルス [6]:

  • RSウイルス(約70〜80%)← 最多
  • ヒトメタニューモウイルス(hMPV)
  • ライノウイルス
  • パラインフルエンザウイルス

ポイント

  • RSウイルスは2歳までにほぼ100%が感染 [1][3]
  • 生後6ヶ月未満、特に3ヶ月未満が最も重症化しやすい [2][4]
  • 細気管支炎の原因の70〜80%がRSウイルス [6]
  • 再感染は何度でもするが、年齢が上がるほど軽症に [1]

Q2.「RSウイルス感染症の症状と経過を教えてください」

——どんな症状が出ますか? 最初は普通の風邪と区別がつかないですか?

その通りです。初期症状は普通の風邪と区別がつきません [2]。しかし、経過とともに呼吸器症状が悪化するのがRSウイルスの特徴です

RSウイルス感染症の経過 [2][6][7]:

第1期: 上気道症状期(発症1〜3日目)

  • 鼻水(透明〜黄色)
  • 咳(乾いた咳)
  • 発熱(37〜38℃台。高熱は少ない)
  • くしゃみ
  • 食欲低下

この段階では普通の風邪と区別できません

第2期: 下気道症状期(発症3〜5日目)

細気管支炎の症状が出現 [6]:

  • ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸(喘鳴)
  • 呼吸が速い(多呼吸: 生後2ヶ月未満なら60回/分以上、2〜12ヶ月なら50回/分以上)[8]
  • 陥没呼吸(呼吸のたびに胸がへこむ)[8]
  • 痰がらみの湿った咳
  • 哺乳不良(ミルクが飲めない、途中で苦しくなる)
  • 不機嫌、元気がない

第3期: 回復期(発症5〜7日目以降)

  • 症状は徐々に改善
  • 咳は2〜4週間続くこともある [2]

——3〜5日目に悪化するんですね。最初は軽くても、油断できないということですか?

はい。特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんの場合、初日は軽い鼻水だけでも、2〜3日後に突然呼吸困難になることがあります [4]。そのため、RSウイルスの流行期に乳児が風邪をひいたら、数日間は注意深く観察する必要があります [2]

重症化しやすいお子さん [2][4][9]:

  • 生後6ヶ月未満、特に3ヶ月未満
  • 早産児(在胎36週未満)
  • 慢性肺疾患(気管支肺異形成症など)
  • 先天性心疾患
  • 免疫不全
  • 神経筋疾患(筋力が弱く、痰を出せない)
  • ダウン症候群

——うちの子は早産で生まれました(在胎34週)。特に注意が必要ですか?

はい。早産児はRSウイルスで重症化しやすいため、特に注意が必要です [4][9]。在胎29週未満や慢性肺疾患のある早産児には、パリビズマブ(シナジス)という予防薬(抗体製剤)の投与が推奨されています [9]。かかりつけ医に相談してください

ポイント

  • 初期は普通の風邪と区別できない(鼻水・咳・微熱)[2]
  • 発症3〜5日目に細気管支炎の症状が出現(ゼーゼー、多呼吸、陥没呼吸)[6]
  • 生後6ヶ月未満、早産児、基礎疾患ありは重症化リスク高 [2][4][9]
  • 咳は2〜4週間続くこともある [2]

Q3.「呼吸が苦しそうなときのサインを教えてください。いつ受診すべきですか?」

——呼吸困難ってどうやって見分けるんですか? 病院に行くべきタイミングを教えてください

これが最も重要なご質問です。呼吸困難のサインを知っているかどうかで、受診のタイミングが変わります [8]

呼吸困難のサイン(すぐに受診)[6][8][10]:

① 多呼吸(呼吸が速い)

正常な呼吸数

生後2ヶ月未満
30〜50回/分
2〜12ヶ月
25〜40回/分
1〜5歳
20〜30回/分

多呼吸の目安

生後2ヶ月未満
60回/分以上
2〜12ヶ月
50回/分以上
1〜5歳
40回/分以上

測り方: 1分間、胸の上下を数える(寝ているとき)

② 陥没呼吸(努力呼吸)

  • 息を吸うたびに、以下の部分がへこむ:
    • 鎖骨の上(鎖骨上窩)
    • 肋骨と肋骨の間(肋間)
    • みぞおちの下(心窩部)
  • 強い陥没呼吸 = 重症のサイン [8]

③ 鼻翼呼吸(びよくこきゅう)

  • 息を吸うたびに鼻の穴が大きく広がる
  • 赤ちゃんが必死に呼吸している証拠 [8]

④ チアノーゼ

  • 唇や爪が紫色になる
  • 酸素不足のサイン → 緊急受診 [8]

⑤ 無呼吸発作

  • 10秒以上呼吸が止まる
  • 特に生後2ヶ月未満で起こりやすい [10]
  • → 救急車を呼ぶ

⑥ 哺乳不良・水分摂取困難

  • ミルクが飲めない(いつもの半分以下)
  • 息苦しくて飲めない
  • 8時間以上おしっこが出ない → 脱水 [6]

⑦ ぐったりしている

  • 意識がもうろうとしている
  • 呼びかけに反応が鈍い
  • → 緊急受診 [8]

——多呼吸って、1分間ずっと数えるんですか? 大変そうです……

15秒間数えて4倍すればOKです。ただし、泣いているときや起きているときは呼吸数が増えるので、寝ているときに測るのがポイントです [8]

受診のタイミングまとめ [6][8][10]:

症状

緊急(救急車)
チアノーゼ、無呼吸、ぐったり
当日受診
多呼吸、強い陥没呼吸、鼻翼呼吸、哺乳困難
翌日受診
ゼーゼーが出てきた、咳がひどい
様子見OK
軽い鼻水・咳のみ、哺乳良好、機嫌よい

対応

緊急(救急車)
119番
当日受診
すぐ受診
翌日受診
日中に受診
様子見OK
ホームケア

ポイント

  • 呼吸困難のサイン: 多呼吸、陥没呼吸、鼻翼呼吸、チアノーゼ [6][8]
  • 生後2ヶ月未満で60回/分以上、2〜12ヶ月で50回/分以上は多呼吸 [8]
  • チアノーゼ、無呼吸、ぐったり → 救急車 [8][10]
  • 哺乳困難、8時間以上おしっこなし → すぐ受診 [6]

Q4.「RSウイルスの治療はどうするんですか? 薬はありますか?」

——RSウイルスと診断されたら、どんな治療をするんですか?

残念ながら、RSウイルスに効く特効薬(抗ウイルス薬)はありません [2][6]。治療の基本は対症療法(症状を和らげる治療)です。軽症なら自宅でのホームケア、重症なら入院治療になります [6]

RSウイルス感染症の治療 [2][6][11]:

軽症(自宅でのホームケア)

① 水分補給

  • こまめに水分を与える(母乳、ミルク、麦茶、経口補水液)
  • 哺乳困難なら、少量ずつ頻回に
  • おしっこの回数をチェック(8時間以上出なければ受診)

② 鼻吸引

  • 鼻水を吸引して鼻づまりを解消 [11]
  • 鼻吸い器、鼻水吸引器を使用
  • 特に哺乳前に吸引すると飲みやすい
  • 市販の鼻吸い器でOK。病院の吸引より優しく吸える

③ 加湿

  • 室内の湿度を50〜60%に保つ
  • 加湿器を使用、または濡れタオルを干す

④ 体位

  • 上体を少し高くすると呼吸が楽になる [11]
  • 頭の下にタオルを敷いて、30度くらい起こす

⑤ 薬

  • 咳止めは推奨されない [6](痰を出しにくくする可能性)
  • 気管支拡張薬(吸入): 効果があれば継続 [6]
  • ステロイド: 効果なし [6]
  • 抗生物質: ウイルス感染なので効かない [2]

中等症〜重症(入院治療)[6][10]:

入院の目安:

  • 多呼吸、強い陥没呼吸が続く
  • 酸素飽和度が低い(SpO2 90%未満が持続する。AAPガイドラインでは90%以上なら酸素投与は不要とされています)[6]
  • 哺乳困難、脱水
  • 生後3ヶ月未満(無呼吸リスクが高い)
  • 早産児、基礎疾患あり

入院治療の内容:

  • 酸素投与(鼻カニューラ、酸素テント)
  • 点滴(水分・電解質補給)
  • 鼻吸引
  • モニタリング(呼吸数、酸素飽和度、心拍数)
  • 重症例: 人工呼吸管理(CPAP、人工呼吸器)

——抗生物質は効かないんですか? 保育園のお友達は抗生物質をもらったと言っていましたが……

RSウイルスはウイルスなので、抗生物質(細菌をやっつける薬)は効きません [2]。ただし、細菌感染の合併(中耳炎、肺炎など)が疑われる場合は、抗生物質が必要になることもあります [6]。不要な抗生物質は副作用や薬剤耐性菌のリスクがあるため、使い分けが重要です

ポイント

  • RSウイルスに特効薬はなく、対症療法が基本 [2][6]
  • 軽症は水分補給、鼻吸引、加湿でホームケア [11]
  • 咳止めは推奨されない。抗生物質は効かない [2][6]
  • 多呼吸、陥没呼吸、哺乳困難、SpO2 90%未満持続で入院 [6][10]
  • 入院治療は酸素投与、点滴、鼻吸引 [6]

Q5.「RSウイルスの予防法を教えてください。兄弟にうつりますか?」

——上の子が保育園でRSウイルスをもらってきました。下の子(生後2ヶ月)にうつらないようにできますか?

RSウイルスは感染力が非常に強いため、完全に予防するのは難しいですが、感染リスクを減らす方法はあります [12]

RSウイルスの感染経路 [1][12]:

  • 飛沫感染: 咳やくしゃみで飛び散る飛沫を吸い込む
  • 接触感染: ウイルスが付着した手やおもちゃを触って、口や鼻を触る
  • 環境表面で6〜7時間生存する [12]

家庭内での感染予防 [12][13]:

① 手洗い

  • 石けんで15秒以上こすり洗い
  • 特に、上の子を触った後、食事前、おむつ替え後
  • 最も重要な予防策 [13]

② マスク着用

  • 咳・鼻水がある人はマスクを
  • 赤ちゃんの世話をするときは特に

③ おもちゃの消毒

  • アルコールまたは塩素系消毒液で拭く
  • ウイルスは環境表面で長時間生存 [12]

④ タオルの共用を避ける

  • 特にハンドタオル、バスタオル

⑤ 別室で寝る

  • 可能なら、感染した子と乳児を別々の部屋に

⑥ 換気

  • こまめに換気する

——予防接種やワクチンはないんですか?

2023年に海外で妊婦向けのRSウイルスワクチン(Abrysvo)と乳児向けの長時間作用型抗体製剤(ニルセビマブ)が承認されました [14]。日本でも、ニルセビマブ(ベイフォータス)が2024年3月に承認され、同年5月から使えるようになっています。現時点では任意接種で、一部の自治体では助成制度が始まっています。妊婦向けRSVワクチンも日本で承認申請が進んでいます

高リスク児への予防(パリビズマブ)[9]:

  • 早産児、慢性肺疾患、先天性心疾患などの高リスク児には、パリビズマブ(シナジス)という抗体製剤を月1回注射
  • RSウイルス流行期(9月〜3月)に投与
  • 入院を約50%減らす効果 [9]
  • 保険適用(条件あり)

登園・登校の目安 [8]:

  • 呼吸器症状が改善し、全身状態がよいことが目安
  • 学校保健安全法では出席停止期間の定めなし
  • ただし、咳が続く間は感染力があるため、マスク着用を [12]

ポイント

  • RSウイルスは感染力が非常に強い [12]
  • 手洗いが最も重要な予防策 [13]
  • おもちゃの消毒、タオル共用を避ける、別室で寝る [12]
  • 高リスク児にはパリビズマブ。ニルセビマブは2024年に日本で承認(任意接種) [9][14]
  • 妊婦向けRSVワクチンも海外で承認済み。日本でも承認申請中 [14]

まとめ

  • RSウイルスは2歳までにほぼ100%が感染。生後6ヶ月未満が最も重症化しやすい [1][2][4]
  • 症状は鼻水・咳 → 3〜5日目にゼーゼー・多呼吸・陥没呼吸が出現 [2][6]
  • 呼吸困難のサイン: 多呼吸、陥没呼吸、鼻翼呼吸、チアノーゼ、哺乳困難 [6][8]
  • 特効薬はなく、対症療法が基本。軽症は水分補給・鼻吸引でホームケア [2][6][11]
  • 予防は手洗い、おもちゃ消毒、タオル共用を避ける [12][13]
  • 早産児・基礎疾患ありは高リスク。パリビズマブやニルセビマブで予防 [9][14]

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