愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.194
「鼻水が黄色くてずっと続く……」、副鼻腔炎(蓄膿症)を正しく知ろう
今号のポイント
- 2風邪の鼻水が10日以上改善しない場合は副鼻腔炎を疑う
- 4子どもの副鼻腔は年齢とともに発達するため、大人とは症状の出方が異なる
- 6診断は原則として臨床所見で行い、レントゲンは通常不要
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「鼻水がずっと黄色いままで治らない……」「風邪が治ったと思ったのに、また鼻づまりがひどくなった」「寝ているときに痰がからんで咳き込む」、こんなお悩みはありませんか?
お子さんの「長引く鼻水」の原因として多いのが副鼻腔炎です。かつては「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれていました。風邪の延長と思って様子を見ていたら、実は副鼻腔炎だった、というケースは珍しくありません。
今回は、保護者の方からよくいただく質問にお答えしながら、子どもの副鼻腔炎について詳しく解説します。
Q1.「副鼻腔炎って何ですか?風邪とどう違うんですか?」
——子どもの鼻水が2週間近く続いています。風邪にしては長いと思うのですが、副鼻腔炎ということもありますか?
はい、十分にありえます。まず副鼻腔がどこにあるか、そして風邪との違いを見てみましょう。
副鼻腔とは、鼻の周囲の骨の中にある空洞のことです。左右合わせて4対(8つ)あります [1]。
場所
- 上顎洞(じょうがくどう)
- 頬の奥
- 篩骨洞(しこつどう)
- 両目の間
- 前頭洞(ぜんとうどう)
- おでこの奥
- 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)
- 鼻の奥の深部
発達時期
- 上顎洞(じょうがくどう)
- 出生時から存在し、12歳頃まで成長 [2]
- 篩骨洞(しこつどう)
- 出生時から存在し、徐々に発達 [2]
- 前頭洞(ぜんとうどう)
- 7歳頃から発達し始め、思春期に完成 [2]
- 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)
- 5歳頃から発達 [2]
これらの副鼻腔は、小さな穴(自然孔)で鼻腔とつながっています。風邪を引くと鼻の粘膜が腫れて、この穴がふさがり、副鼻腔に膿がたまる、これが副鼻腔炎です [1][3]。
風邪(急性上気道炎)
- 原因
- ウイルス感染
- 鼻水の性状
- 透明→黄色→透明と変化
- 期間
- 通常7〜10日で改善
- 発熱
- 初期に出ることが多い
- 顔面痛
- なし
- 後鼻漏による咳
- 軽度
副鼻腔炎
- 原因
- ウイルス感染に続く細菌感染が多い [3]
- 鼻水の性状
- 膿性(黄色〜緑色)が持続 [3]
- 期間
- 10日以上改善しない [3][4]
- 発熱
- ないことも多い(再発熱することもある)
- 顔面痛
- あることがある(年長児)[1]
- 後鼻漏による咳
- 特に夜間・起床時に目立つ [3]
ポイント
- 副鼻腔は鼻の周りの骨にある空洞で、風邪で粘膜が腫れると膿がたまりやすい [1]
- 子どもの副鼻腔は年齢とともに発達する。上顎洞・篩骨洞は出生時から、前頭洞は7歳頃から [2]
- 風邪の鼻水が10日以上改善しない場合は副鼻腔炎を疑う重要なサインです [3][4]
Q2.「副鼻腔炎にはどんな種類がありますか?急性と慢性は何が違いますか?」
——蓄膿症は慢性のイメージがあるのですが、急性のものもあるのですか?
はい。急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎は、期間と経過が大きく異なります。
急性副鼻腔炎
- 期間
- 30日未満 [1]
- 原因
- 風邪に続く細菌感染が多い [3]
- 主な症状
- 膿性鼻漏、後鼻漏、顔面痛、咳 [3]
- 頻度
- 風邪の約5〜13%が合併 [4]
- 治療
- 抗菌薬で治ることが多い [4]
慢性副鼻腔炎
- 期間
- 12週間(約3ヶ月)以上持続 [1]
- 原因
- 急性の反復、アレルギー、解剖学的問題 [5]
- 主な症状
- 鼻閉、嗅覚低下、後鼻漏、慢性的な咳 [5]
- 頻度
- 小児の約2〜4% [5]
- 治療
- 長期のマクロライド療法や手術を検討 [5]
子どもは年間6〜8回風邪を引くと言われていますが、そのうちの5〜13%が急性副鼻腔炎に進展します [4]。つまり、年に1〜2回は副鼻腔炎になる可能性があるということです。
急性副鼻腔炎を疑う3つのパターン [3][4]:
- 2持続型: 鼻水や咳が10日以上改善せずに続く
- 4悪化型: 一度よくなりかけたのに、6〜7日目に再び悪化する(二峰性の経過)
- 6重症型: 39℃以上の高熱と膿性鼻漏が3日以上続く
ポイント
- 急性副鼻腔炎は30日未満、慢性副鼻腔炎は12週間以上持続するもの [1]
- 風邪の5〜13%が急性副鼻腔炎に進展する [4]
- 「10日以上続く」「一度よくなりかけて再悪化」「高熱+膿性鼻漏3日以上」が3つのパターン [3][4]
Q3.「副鼻腔炎の診断にレントゲンは必要ですか?」
——耳鼻科でレントゲンを撮ると聞いたのですが、小さい子にレントゲンは心配です。
ご安心ください。子どもの急性副鼻腔炎の診断にレントゲンは原則として必要ありません [4][6]。
副鼻腔炎の診断は、基本的に臨床診断(症状と診察所見)で行います。
診断の根拠となる所見:
| 所見 | 詳細 |
|---|---|
| 膿性鼻漏 | 黄色〜緑色の粘り気のある鼻水が持続 [3] |
| 後鼻漏 | 鼻水がのどに垂れ落ちる(咽頭後壁に粘液付着)[3] |
| 鼻閉 | 鼻が詰まって口呼吸になる |
| 咳 | 特に臥位(寝たとき)に悪化する咳 [3] |
| 顔面痛・頭痛 | 年長児で訴えることがある(頬や前頭部)[1] |
| 口臭 | 後鼻漏による口臭 |
レントゲンが推奨されない理由:
- 2小児では偽陽性が多い、風邪を引いているだけでも副鼻腔に液体貯留が見られることがある [6]
- 4副鼻腔が未発達な乳幼児では評価が困難 [2][6]
- 6被ばくの問題、不要な放射線は避けるべき [6]
- 8臨床診断で十分、米国小児科学会(AAP)のガイドラインでも、合併症のない急性副鼻腔炎にはレントゲン不要と明記 [4]
画像検査が必要な場合:
- 慢性副鼻腔炎で手術を検討するとき → CT検査 [5]
- 眼窩周囲蜂窩織炎や頭蓋内合併症が疑われるとき → CT検査(緊急)[7]
- 通常の治療に反応しない難治例 [5]
ポイント
- 子どもの急性副鼻腔炎の診断にレントゲンは原則不要です [4][6]
- 「10日以上続く膿性鼻漏+咳」などの臨床所見で診断します [3][4]
- 画像検査が必要なのは、合併症が疑われる場合や慢性例で手術を検討する場合です [5][7]
Q4.「治療はどうするのですか?抗生物質は必要ですか?」
——副鼻腔炎と言われたら、すぐに抗生物質を飲まないといけませんか?鼻洗浄がいいと聞いたこともあるのですが。
治療は、重症度やパターンによって異なります。すべての副鼻腔炎にすぐ抗菌薬が必要なわけではありません [4]。
治療の方針(AAPガイドライン 2013に基づく)[4]:
抗菌薬の方針
- 持続型(10日以上)
- すぐ開始 または 3日間経過観察
- 悪化型(二峰性悪化)
- すぐ開始
- 重症型(高熱+膿性鼻漏3日以上)
- すぐ開始
理由
- 持続型(10日以上)
- 軽症なら自然軽快する可能性もある [4]
- 悪化型(二峰性悪化)
- 細菌感染の関与が高い [4]
- 重症型(高熱+膿性鼻漏3日以上)
- 合併症予防のため [4]
抗菌薬の選択:
位置づけ
- アモキシシリン
- 第一選択 [4][8]
- アモキシシリン/クラブラン酸
- 耐性菌が疑われる場合 [4][8]
- セフジニル・セフポドキシム
- ペニシリンアレルギー時の代替 [8]
投与期間
- アモキシシリン
- 10〜14日間
- アモキシシリン/クラブラン酸
- 10〜14日間
- セフジニル・セフポドキシム
- 10〜14日間
鼻洗浄(鼻うがい)の効果:
鼻洗浄は副鼻腔炎の補助療法として有効です [9]。
- 生理食塩水で鼻腔を洗い流すことで、膿や炎症物質を除去 [9]
- 薬局で市販の鼻洗浄キットが入手可能
- 小さいお子さんには鼻吸引も有効
- 鼻洗浄は抗菌薬の代わりにはなりませんが、症状の改善を早めます [9]
その他の治療:
推奨度
- 鼻洗浄(生理食塩水)
- 推奨
- 鼻吸引
- 推奨
- 点鼻ステロイド
- 条件つきで検討
- 市販の総合感冒薬
- 非推奨
- 抗ヒスタミン薬
- 非推奨(例外あり)
- 血管収縮薬(点鼻)
- 非推奨
コメント
- 鼻洗浄(生理食塩水)
- 補助療法として有効 [9]
- 鼻吸引
- 自分で鼻をかめない乳幼児に
- 点鼻ステロイド
- アレルギー性鼻炎合併例に有効 [5]
- 市販の総合感冒薬
- 小児への有効性は証明されていない [4]
- 抗ヒスタミン薬
- アレルギー合併例を除き推奨されない [4]
- 血管収縮薬(点鼻)
- 3日以上の使用でリバウンドの鼻閉 [4]
ポイント
- 副鼻腔炎の第一選択薬はアモキシシリン(10〜14日間)[4][8]
- 軽症の持続型パターンなら、3日間の経過観察も選択肢 [4]
- 鼻洗浄は補助療法として有効。市販の鼻洗浄キットや鼻吸引を活用しましょう [9]
- 市販の風邪薬(総合感冒薬)は小児の副鼻腔炎には推奨されていません [4]
Q5.「耳鼻科にはいつ行けばいいですか?放っておくとどうなりますか?」
——小児科と耳鼻科、どちらに行けばいいか迷います。放っておいても治りますか?
まずは小児科でも耳鼻科でも大丈夫です。ただし、以下のような場合は耳鼻科の専門的な評価が必要です。
耳鼻科受診を検討すべき場合:
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 適切な抗菌薬治療で改善しない | 難治性副鼻腔炎の評価が必要 [5] |
| 副鼻腔炎を年3回以上繰り返す | 解剖学的問題やアレルギーの精査 [5] |
| 3ヶ月以上症状が続く(慢性化) | CT検査や手術の検討 [5] |
| 目の周りの腫れ・赤み | 眼窩周囲蜂窩織炎の可能性(緊急)[7] |
| 激しい頭痛・高熱・嘔吐 | 頭蓋内合併症の可能性(緊急)[7] |
| 鼻茸(ポリープ)が疑われる | 専門的な診察・治療が必要 [5] |
副鼻腔炎の合併症(まれだが重要):
副鼻腔炎を放置すると、まれに以下のような合併症が起こることがあります [7]。
症状
- 眼窩周囲蜂窩織炎
- 目の周りの腫れ・発赤
- 眼窩内膿瘍
- 眼球突出、眼球運動障害
- 硬膜下膿瘍・脳膿瘍
- 激しい頭痛、意識障害
- 骨膜下膿瘍(Pott's puffy tumor)
- 前頭部の腫脹(前頭洞炎から)
緊急度
- 眼窩周囲蜂窩織炎
- 緊急受診 [7]
- 眼窩内膿瘍
- 緊急受診 [7]
- 硬膜下膿瘍・脳膿瘍
- 救急搬送 [7]
- 骨膜下膿瘍(Pott's puffy tumor)
- 緊急受診 [7]
これらは非常にまれですが、「目の周りが腫れてきた」「ひどい頭痛で嘔吐する」などの症状があれば、すぐに救急受診してください。
家庭でできるケア:
- 鼻吸引・鼻洗浄をこまめに行う [9]
- 加湿で鼻粘膜の乾燥を防ぐ
- 十分な水分摂取で粘液をサラサラに
- 頭を少し高くして寝ると後鼻漏が楽になる
- 鼻をかむ練習(3歳頃から。片方ずつやさしく)
ポイント
- 抗菌薬治療で改善しない場合、繰り返す場合、3ヶ月以上続く場合は耳鼻科受診を [5]
- 目の周りの腫れや激しい頭痛は合併症のサインであり、緊急受診が必要です [7]
- 鼻吸引・鼻洗浄・加湿・水分摂取が家庭でできる基本ケアです [9]
まとめ
子どもの副鼻腔炎のポイントを最後に整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 副鼻腔(鼻周囲の骨の空洞)に炎症・膿がたまる病態 [1] |
| 急性 vs 慢性 | 急性は30日未満、慢性は12週間以上 [1] |
| 副鼻腔の発達 | 上顎洞・篩骨洞は出生時から、前頭洞は7歳頃から発達 [2] |
| 疑うタイミング | 風邪の鼻水が10日以上改善しない、二峰性悪化、高熱+膿性鼻漏3日以上 [3][4] |
| 診断 | 臨床診断が基本。レントゲンは原則不要 [4][6] |
| 治療 | 第一選択はアモキシシリン10〜14日間。鼻洗浄も有効 [4][8][9] |
| 耳鼻科受診 | 難治例、反復例、慢性化、合併症が疑われる場合 [5][7] |
| 注意すべき合併症 | 眼窩周囲蜂窩織炎、頭蓋内感染(まれだが緊急)[7] |
「ただの鼻水」と思わず、10日以上続く場合は一度ご相談ください。早めの診断と適切な治療で、お子さんの長引く鼻水を楽にしてあげましょう。
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