愛育病院 小児科おかもん だより Vol.480
夏の子どもの皮膚3点セット、あせも・水いぼ・とびひの見分けと対処
今号のポイント
- 2あせも3型の見分けと治療。3日治らないか24時間で悪化なら受診(AAP)
- 4水いぼのプール禁止は医学的根拠なし。3学会統一見解で「一律禁止としない」
- 6とびひは病変を覆えば登園可。3日改善しなければ再受診を
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
夏になると外来で必ず増える相談が3つあります。
あせも、水いぼ、とびひ。
この3つは見た目が似ていることもあるし、対処がまったく違うことも多い。 とくに水いぼのプール問題は、保護者のみなさんと保育園・学校の間で今も混乱を生んでいます。
今回は3つまとめて、見分け方・治療・登園基準まで整理します。
Q1: あせもなのかアトピーなのか判別できません。治療は?
あせも(汗疹)は、汗管が詰まって汗が皮膚内にたまる病気です [1]。 詰まる深さによって3型に分かれます。
水晶様汗疹は角層内の閉塞で、透明な小水疱ができます。 かゆみはほぼなく、数日で自然に消えます。
紅色汗疹は表皮内の閉塞で、赤い丘疹とかゆみが出ます。 日常的に「あせも」と呼ばれているのはこのタイプです。 首・わきの下・ひじ・ひざ裏・背中によくできます。
深在性汗疹は真皮表層の閉塞で、淡白色の丘疹が出ます。 子どもではまれです。
アトピー性皮膚炎との違いは、経過にあります。 あせもは原因(蒸れ・暑さ)を取り除けば数日で消えます。 アトピーは慢性経過をたどり、乾燥肌を背景にして繰り返します。 同じひじ裏・ひざ裏でも、あせもは短期間で改善し、アトピーは何週間も続きます。
治療は清潔・冷却・通気が基本です [1][2]。 汗をかいたらすぐ冷水で洗い流す。 綿素材の服を着せる。 エアコンや扇風機で室温を下げる。
炎症が強ければ弱めのステロイド外用薬を使います。
AAPは「3日経って治らない、または24時間で悪化する場合は受診を」としています [2]。 この目安を保護者に伝えておくと、外来受診のタイミングで迷いません。
Q2: 水いぼ、プール禁止じゃないんですか?取るべき?
「プールに入れてもらえない」というご相談が毎年来ます。
まず、公式見解を確認してください。
日本小児皮膚科学会・日本臨床皮膚科医会・日本皮膚科学会の3学会は2002年から統一見解を出しています [3]。
「プール水を介して感染することはない。一律にプール禁止としない」。
感染するのは、タオル・浮き輪・ビート板などを共用した場合や、直接の皮膚接触によるものです。 だからプール自体を禁止する根拠はなく、共用を避けることが適切な対策です。
CDCも同じ立場です [4]。 「学校・保育園・プールから子どもを排除する必要はない」。
取るかどうかは、別の話です。
水いぼ(伝染性軟属腫)は、海外文献では平均6〜12か月、日本小児皮膚科学会QAでは6か月〜3年で自然に消えるとされています [3][4][5]。 個々の病変は2か月以内に消退し、全体でも最長2〜4年です。
治療の第一選択は経過観察です [5][6]。 子どもに痛みや心理的負担を与えてまで急ぐ必要は通常ありません。
どうしても取りたい場合の選択肢としては、ピンセットによる摘除、凍結療法、カンタリジン、KOH溶液などがあります。 どれを選ぶかはかかりつけ医と相談してください。
Q3: とびひ、薬を塗っているのに広がります。抗生剤はいつまで?登園基準は?
とびひ(伝染性膿痂疹)には2型あります。
水疱性は黄色ブドウ球菌が原因で、薄い水疱が破れてびらんになります。 乳幼児に多く、夏に増えます。
痂皮性はA群β溶連菌が原因で、厚い黄色のかさぶたができます。 季節を問いません。
治療の選択は病変の範囲によって変わります [7]。
軽症(10病変以下、または36cm²以下)なら、外用抗菌薬だけで対応できます。 ムピロシン、フシジン酸、ナジフロキサシン、オゼノキサシンが選択肢です。 中等症以上は経口抗菌薬を追加します。 第1世代セフェムが第一選択です。
日本ではMRSAが増加していることを念頭に置いてください [8]。 2008〜2010年の小児とびひ136株でMRSA 10.3%との報告があり、近年さらに上昇しているとも言われます。 外用3日で改善しなければ再診して培養・感受性を確認するほうが安全です。
登園・登校の基準は「学校保健安全法」上は第三種で、症状や病変の範囲に応じて出席停止が判断されます。 日本皮膚科学会と日本小児皮膚科学会の統一見解では、「病変をガーゼで覆い、浸出液が外に出ない状態であれば登園・登校可」とされています。 広範囲に広がっている場合や発熱がある場合は、自宅で休養させてください。
受診のタイミング(3疾患共通)
- 発熱を伴う皮疹
- 24〜48時間で急速に拡大する
- 黄色い膿・悪臭がある
- かゆみが強くて眠れない
- 治療開始から3日で改善しない
これらの場合は早めに受診してください。