愛育病院 小児科おかもん だより Vol.55
「突然ブツブツが!」、子どもの蕁麻疹(じんましん)を正しく知ろう
今号のポイント
- 2子どもの蕁麻疹の多くは原因不明(特発性)か感染症がきっかけ。食物が原因は実は少数
- 4蕁麻疹だけなら慌てなくてOK。呼吸困難・顔の腫れがあればアナフィラキシーを疑い119番
- 6治療の主役は抗ヒスタミン薬。正しく使えばほとんどの蕁麻疹はコントロールできる
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「急にからだ中にポツポツが出て、かゆがって泣いているんです……」、子どもの蕁麻疹は突然やってきます。初めて見ると、「何かのアレルギー?」「食べ物が悪かったの?」と不安になりますよね。
実は、子どもの急性蕁麻疹の50%以上は原因がはっきりしない「特発性」か、風邪などの感染症がきっかけです [1][2]。食物アレルギーが原因のケースは全体の10〜20%程度にとどまります [3]。
今回は、子どもの蕁麻疹について、原因、受診のタイミング、アナフィラキシーとの見分け方、治療法まで、よくある質問にお答えします。
Q1.「蕁麻疹ってそもそも何ですか?どうしてなるんですか?」
——夕方から急にお腹と背中にポツポツが出てきて……。アレルギーでしょうか?
蕁麻疹は、皮膚の浅いところにあるマスト細胞(肥満細胞)からヒスタミンなどの物質が放出されて、血管が拡張し、血漿成分が漏れ出ることで膨疹(ぼうしん)、ふくらんだ赤い発疹、ができるものです [1]。いわば皮膚の中で一時的なアレルギー反応のようなことが起きている状態です
蕁麻疹の特徴:
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 見た目 | 赤く盛り上がった発疹(膨疹)。大きさは数mmから手のひら大まで [1] |
| かゆみ | 強いかゆみを伴うことが多い [1] |
| 形 | 地図状、リング状、線状などさまざま。形が変わる [1] |
| 経過 | 個々の膨疹は24時間以内に消える(跡が残らない)[1] |
| 出没 | 消えたと思ったら別の場所に出る。出たり引いたりする [1] |
蕁麻疹の最大の特徴は、出たり消えたりすることです。一つひとつの膨疹は通常数時間〜24時間以内に跡を残さず消えます [1]。逆に、24時間以上同じ場所にとどまる発疹は蕁麻疹以外の可能性がありますので、受診してください
蕁麻疹の分類:
定義
- 急性蕁麻疹
- 発症から6週間未満 [1]
- 慢性蕁麻疹
- 発症から6週間以上 [1]
特徴
- 急性蕁麻疹
- 子どもに多い。多くは数日〜1〜2週間で治まる
- 慢性蕁麻疹
- 成人に多い。子どもでも起こる
子どもの蕁麻疹のほとんどは急性蕁麻疹で、数日〜数週間で自然に治まります [2]。慢性化するのは全体の20〜30%程度です [4]
ポイント
- 蕁麻疹はマスト細胞からのヒスタミン放出が原因 [1]
- 個々の膨疹は24時間以内に消える(跡が残らない)[1]
- 子どもは急性蕁麻疹がほとんど。多くは数日〜2週間で治まる [2]
Q2.「蕁麻疹の原因は何ですか?食べ物でしょうか?」
——やっぱり何か食べ物が原因ですか?直前に食べたもののせいでしょうか?
多くの親御さんが食べ物を疑いますが、実は子どもの急性蕁麻疹で食物アレルギーが原因のケースは10〜20%程度です [3]。最も多いのは原因不明(特発性)と感染症がきっかけのケースです [2]
子どもの蕁麻疹の原因:
頻度
- 特発性(原因不明)
- 約50% [2]
- 感染症
- 約30〜40% [2][5]
- 食物
- 約10〜20% [3]
- 薬剤
- 数% [1]
- 物理的刺激
- 数% [1]
詳細
- 特発性(原因不明)
- 最も多い。原因が特定できない
- 感染症
- 風邪、胃腸炎、溶連菌感染、アデノウイルスなどのウイルス・細菌感染がトリガーに
- 食物
- 鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、果物など。食後2時間以内に発症
- 薬剤
- NSAIDs(解熱鎮痛薬)、抗生物質など
- 物理的刺激
- 寒冷、温熱、圧迫、日光、運動
感染症と蕁麻疹の関係
風邪を引いた後や、胃腸炎のあとに蕁麻疹が出ることはよくあります。これは感染による免疫反応が引き金になってマスト細胞が活性化するためです [5]。風邪の症状が治まれば、蕁麻疹も自然に消えます
感染関連蕁麻疹の特徴 [5]:
- 発熱、咳、鼻水、下痢などの感染症状に前後して蕁麻疹が出現
- 抗生物質を飲み始めた後に出ることも(薬疹との鑑別が必要)
- 1〜2週間で自然軽快することが多い
食物アレルギーによる蕁麻疹の特徴
食物が原因の蕁麻疹には、以下のような時間的な関連があります [3][6]:
- 食後30分〜2時間以内に発症(即時型アレルギー)
- 原因食物を食べるたびに再現性がある(毎回同じ食物で起こる)
- 蕁麻疹だけでなく、口のかゆみ、嘔吐、腹痛を伴うことがある [6]
「蕁麻疹=食物アレルギー」と考えて、あれこれ食物を除去してしまう方がいますが、原因がはっきりしないうちに食物除去をするのは避けてください [6]。不必要な食物除去は栄養不足の原因にもなります。血液検査で特異的IgEが陽性でも、それだけでは食物アレルギーとは言えません [6]
ポイント
- 子どもの蕁麻疹の50%は原因不明、30〜40%は感染症がきっかけ [2][5]
- 食物アレルギーが原因のケースは10〜20%程度 [3]
- 食物が原因なら食後2時間以内に発症し、再現性がある [3][6]
- 原因不明のうちに食物除去をしない [6]
Q3.「すぐに病院に行くべきですか?救急車を呼ぶのはどんな時ですか?」
——蕁麻疹だけで救急に行っていいのか迷います。受診の目安を教えてください
蕁麻疹だけなら、基本的に命に関わることはありません [1]。ただし、蕁麻疹+他の症状がある場合は要注意です。特にアナフィラキシーのサインがあれば、すぐに119番です [7]
受診の目安チェックリスト:
今すぐ119番、アナフィラキシーの疑い
以下のうち1つでも当てはまったら、すぐに救急車を呼んでください [7][8]:
- 呼吸がゼーゼー・ヒューヒューしている
- 声がかすれている、出にくい(喉頭浮腫の疑い)
- 唇・舌・のどが腫れている
- 顔色が悪い、ぐったりしている
- 意識がぼんやりしている
- 繰り返し吐いている
- 血圧が下がっている(立ちくらみ、脈が速い)
当日中に受診
- 全身に広がっている蕁麻疹
- 目の周りや唇が腫れている(血管浮腫)[1]
- 腹痛や嘔吐を伴う [8]
- 蕁麻疹が初めて出た(原因評価が必要)
- 抗ヒスタミン薬を飲んでも改善しない
翌日〜数日以内に受診
- 蕁麻疹が3日以上続いている
- 繰り返し出現する
- 原因がわからない
自宅で様子をみてOK
- 蕁麻疹が軽度で、皮膚症状のみ
- 数時間で消退する
- 以前にも同様の蕁麻疹が出て、自然に治まった経験がある
- 抗ヒスタミン薬を飲んで改善している
アナフィラキシーとは?
アナフィラキシーは、皮膚+呼吸器、消化器、循環器のうち2つ以上の臓器に症状が出る全身性のアレルギー反応です [7][8]。
| 臓器 | 症状 |
|---|---|
| 皮膚 | 蕁麻疹、紅潮(赤くなる)、かゆみ、浮腫 |
| 呼吸器 | 喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難、咳、嗄声(声がれ) |
| 消化器 | 腹痛、嘔吐、下痢 |
| 循環器 | 血圧低下、頻脈、意識障害 |
蕁麻疹だけなら慌てなくて大丈夫です [1]。でも、皮膚の症状に加えて、呼吸が苦しい、何度も吐く、ぐったりしているなら、すぐに救急車を呼んでください [7]。エピペン(アドレナリン自己注射薬)を処方されている方は迷わず使ってください [8]
ポイント
- 蕁麻疹だけなら命に関わることはまれ [1]
- 蕁麻疹+呼吸困難・嘔吐・ぐったり→アナフィラキシーの疑い→119番 [7][8]
- アナフィラキシーは皮膚+他の臓器に症状が出る全身反応 [7]
- エピペンを持っている場合は迷わず使う [8]
Q4.「蕁麻疹の治療はどうするんですか?薬は何を使いますか?」
——蕁麻疹が出た時、とりあえず何をしたらいいですか?
蕁麻疹の治療の柱は抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)です [9][10]。まずは自宅でできることと、お薬の使い方をお話ししますね
自宅でできる応急処置
- 2冷やす: 蕁麻疹が出ている部分を冷たいタオルや保冷剤(タオルで包んで)で冷やすと、かゆみが軽くなります [1]。ただし、寒冷蕁麻疹(冷たい刺激で悪化するタイプ)の場合は逆効果
- 4掻かない: 掻くと悪化します(機械的蕁麻疹)。小さい子は爪を短く切っておく
- 6ゆったりした服: 締め付ける衣類は避ける(圧迫蕁麻疹の予防)
- 8入浴はぬるめに: 熱いお風呂は血管を拡張させて悪化します [1]
薬物治療、抗ヒスタミン薬が第一選択
蕁麻疹の薬物治療は、第二世代抗ヒスタミン薬が第一選択です [9][10]。第一世代(旧世代)に比べて、眠気が少なく、効果が長持ちするのが特徴です
小児に使われる主な抗ヒスタミン薬:
| 薬剤名 | 一般名 | 特徴 | 使用可能年齢 |
|---|---|---|---|
| ザイザル | レボセチリジン | 効果が強い。1日1回 [10] | 6ヶ月〜 |
| アレグラ | フェキソフェナジン | 眠気が少ない。1日2回 [10] | 6ヶ月〜(DS) |
| アレロック | オロパタジン | 効果が強い。1日2回 [10] | 2歳〜 |
| クラリチン | ロラタジン | 眠気が少ない。1日1回 [10] | 3歳〜 |
| ザジテン | ケトチフェン | 旧世代だが乳児にも使える。眠気あり [9] | 6ヶ月〜 |
抗ヒスタミン薬で大切なのは、蕁麻疹が出てから飲むのではなく、出ないように予防的に飲むことです [9]。蕁麻疹が続いている間は、症状がなくても毎日決まった時間に飲み続けるのが効果的です
抗ヒスタミン薬の使い方のコツ
| ポイント | 説明 |
|---|---|
| 毎日飲む | 症状がなくても、蕁麻疹が続く間は毎日飲む [9] |
| 自己判断でやめない | 症状が落ち着いても、医師の指示なく中止しない [9] |
| 効果不十分なら増量 | 通常量で効かない場合、医師の判断で2〜4倍まで増量できる [10] |
| 2種類併用 | 1種類で効かない場合、作用の異なる2種類を併用することがある [10] |
第一選択で効かない場合のステップアップ治療
通常量の抗ヒスタミン薬で治まらない場合は、以下のようなステップアップ治療を行います [10]
| ステップ | 治療内容 |
|---|---|
| ステップ1 | 第二世代抗ヒスタミン薬を通常量で開始 [10] |
| ステップ2 | 抗ヒスタミン薬を増量(2〜4倍量)、または2種類併用 [10] |
| ステップ3 | H2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)や抗ロイコトリエン薬(モンテルカストなど)を追加 [10] |
| ステップ4 | 難治性の場合、オマリズマブ(ゾレア)(抗IgE抗体)を検討 [10][11] |
ほとんどの子どもの蕁麻疹は、ステップ1〜2の治療で十分コントロールできます [9]。ステロイドの内服は短期間(3〜5日)使うこともありますが、長期使用は避けます [10]
ポイント
- 治療の主役は第二世代抗ヒスタミン薬 [9][10]
- 毎日飲み続けることが大切。出た時だけ飲むのはNG [9]
- 効かなければ増量→併用→ステップアップ [10]
- 自宅では冷やす、掻かない、ぬるめの入浴が基本 [1]
Q5.「蕁麻疹が繰り返します。検査は必要ですか?食べ物を制限した方がいいですか?」
——もう2週間も蕁麻疹が出たり消えたりしています。アレルギー検査を受けた方がいいですか?
蕁麻疹が繰り返す場合、検査について悩まれる方が多いですね。結論から申しますと、急性蕁麻疹でルーチンに血液検査や食物アレルギー検査をすることは推奨されていません [9][12]
検査が必要な場合・不要な場合
検査
- 特定の食物を食べた後に蕁麻疹が出る(再現性あり)
- 必要 [6]
- 蕁麻疹が6週間以上続く(慢性蕁麻疹)
- 必要 [12]
- アナフィラキシーを起こした
- 必要 [8]
- 原因不明の急性蕁麻疹(数日〜2週間で軽快)
- 不要 [9]
理由
- 特定の食物を食べた後に蕁麻疹が出る(再現性あり)
- 食物アレルギーの診断のため
- 蕁麻疹が6週間以上続く(慢性蕁麻疹)
- 甲状腺疾患、自己免疫疾患の除外
- アナフィラキシーを起こした
- 原因の特定が必須
- 原因不明の急性蕁麻疹(数日〜2週間で軽快)
- 大部分が感染症か特発性。検査しても原因が見つからないことが多い
血液検査で食物の特異的IgEが陽性でも、それだけでは「食べたら蕁麻疹が出る」とは言えません [6][12]。IgE陽性=食物アレルギーではないのです。不要な食物除去は、栄養バランスの偏りや、かえってアレルギーを悪化させるリスクがあります [6]
慢性蕁麻疹の場合に行う検査
6週間以上蕁麻疹が続く場合は、以下の検査を行うことがあります [12]:
| 検査項目 | 目的 |
|---|---|
| 血算(CBC) | 好酸球増多、感染の有無 |
| CRP、ESR | 炎症の有無 |
| 甲状腺機能(TSH、FT4) | 甲状腺疾患の除外 [12] |
| 抗核抗体(ANA) | 自己免疫疾患の除外 |
| IgE | アレルギー素因の確認 |
| 自己免疫検査(抗TPO抗体など) | 自己免疫性蕁麻疹の評価 [12] |
子どもの慢性蕁麻疹の予後:
慢性蕁麻疹と聞くと不安になるかもしれませんが、子どもの慢性蕁麻疹の約50%は1年以内に、80%は5年以内に自然寛解するという報告があります [4][13]。大人より予後が良いのが特徴です
| 期間 | 自然寛解率 |
|---|---|
| 1年以内 | 約50% [4][13] |
| 3年以内 | 約70% [13] |
| 5年以内 | 約80% [13] |
焦らず、抗ヒスタミン薬でしっかりコントロールしながら、蕁麻疹が出なくなる日を待ちましょう [9]。薬は「治す薬」ではなく「症状を抑える薬」ですが、時間とともに体質が変わって出なくなることが多いです
ポイント
- 急性蕁麻疹でルーチンのアレルギー検査は不要 [9][12]
- IgE陽性=食物アレルギーではない。不要な食物除去は避ける [6]
- 慢性蕁麻疹は甲状腺・自己免疫の検査を行うことがある [12]
- 子どもの慢性蕁麻疹は80%が5年以内に自然寛解 [4][13]
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 蕁麻疹とは | マスト細胞からヒスタミンが放出され、赤く盛り上がった膨疹ができる。24時間以内に消える [1] |
| 原因 | 50%が原因不明、30〜40%が感染症、食物は10〜20% [2][3] |
| 受診の目安 | 蕁麻疹だけなら様子見OK。呼吸困難・嘔吐・ぐったり→119番 [7] |
| 治療 | 第二世代抗ヒスタミン薬を毎日内服。効かなければ増量・併用 [9][10] |
| 検査 | 急性ではルーチン不要。慢性(6週超)では甲状腺・自己免疫を確認 [9][12] |
| 予後 | 子どもの慢性蕁麻疹の80%は5年以内に寛解 [4][13] |
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