愛育病院 小児科おかもん だより Vol.45
「予防接種のスケジュール、どう組めばいいですか?」、迷わないためのワクチン接種の考え方
今号のポイント
- 20〜1歳で受けるワクチンは6種類。生後2ヶ月から開始が鉄則
- 4同時接種は安全で推奨される。単独接種より早く免疫が得られる
- 6遅れても大丈夫。「今から最適なスケジュール」を組み直せる
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「予防接種のスケジュールが複雑すぎて、何から始めればいいかわかりません……」、これ、本当によく聞かれる質問です。特に第一子のお子さんの場合、0〜1歳で受けるべきワクチンは6種類、接種回数は計15回以上。混乱するのも無理はありません [1]。
今回は、予防接種のスケジュールの立て方、同時接種の安全性、遅れた時の対処法について、よくある質問にお答えします。
Q1.「0歳で受けるワクチンって、どれくらいありますか?」
——予防接種の予診票をもらったんですが、こんなにたくさん受けないといけないんですか?
はい。0〜1歳で受けるべきワクチンは6種類、接種回数は計15回以上あります [1]。多いですよね。でも、これには理由があるんです
0〜1歳で受けるワクチン(定期接種):
| ワクチン | 病気 | 接種回数(0歳) | 開始時期 |
|---|---|---|---|
| 五種混合(DPT-IPV-Hib) [5] | ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、Hib感染症 | 3回 | 生後2ヶ月〜 |
| 小児用肺炎球菌 [2] | 細菌性髄膜炎、肺炎 | 3回 | 生後2ヶ月〜 |
| B型肝炎 [3] | B型肝炎 | 3回 | 生後2ヶ月〜 |
| ロタウイルス [4] | ロタウイルス胃腸炎 | 2〜3回 | 生後2ヶ月〜 |
| BCG [6] | 結核 | 1回 | 生後5〜8ヶ月(標準)※1歳未満まで定期接種 |
| 麻疹風疹(MR) [7] | 麻疹、風疹 | 1回 | 1歳〜 |
0歳の赤ちゃんは免疫が未熟で、感染症にかかると重症化しやすいんです [2]。細菌性髄膜炎(ヒブ・肺炎球菌が原因)は、適切な治療をしても致命率が3〜5%、生存しても約20%に難聴などの後遺症が残ると報告されています [2]。だから生後2ヶ月で早めに免疫をつけておきたいんですね
なぜ生後2ヶ月から?
- 母親からもらった免疫(移行抗体)が生後3〜6ヶ月で減る [8]
- 免疫の空白期間を作らないため、生後2ヶ月から開始 [1]
- 遅れるほど重症感染症のリスクが高まる [8]
ポイント
- 0〜1歳で6種類、計15回以上のワクチン接種 [1]
- 生後2ヶ月から開始が鉄則 [1]
- 0歳児は免疫が未熟。早く免疫をつけることが重症化予防のカギ [2][8]
Q2.「同時接種って安全ですか? 1本ずつのほうがいいのでは?」
——同時に何本も注射して、体に負担はないんですか? 1本ずつのほうが安全な気がするんですが……
お気持ちはわかります。でも、同時接種は安全で、世界中で推奨されています [9]。むしろ、単独接種のほうがリスクが高いんです
同時接種のメリット:
① 早く免疫がつく [9]
- 1本ずつ接種すると、すべて終わるのに数ヶ月〜1年かかる
- その間、病気にかかるリスクが高い
- 同時接種なら最短で免疫が得られる
② 通院回数が減る [9]
- 仕事を休む回数が減る
- 赤ちゃんの負担も減る
- 医療機関の混雑緩和
③ 接種忘れが減る [9]
- スケジュールが複雑にならない
- 接種漏れのリスクが下がる
同時接種の安全性:
| 懸念 | 科学的根拠 |
|---|---|
| 副反応が増える? | 増えない [9][10] |
| 免疫がつきにくい? | つきにくくならない [9] |
| 体に負担? | 負担は増えない [9] |
日本小児科学会は「同時接種は安全で有効。積極的に推奨する」と明言しています [9]。世界中で何億人もの子どもが同時接種を受けていて、問題は報告されていません [10]
——でも、1本ずつのほうが何かあった時に原因がわかりやすいのでは?
これもよく言われますが、実は逆なんです。1本ずつ接種すると、接種間隔が空いて、その間に風邪を引いたり、別の原因で熱が出たりします。そうすると、「ワクチンのせいか、風邪のせいか」がわからなくなります。同時接種のほうが、接種日が少ないので、因果関係が明確なんですよ
日本と世界の同時接種:
- アメリカ: 生後2ヶ月で6本同時接種が標準 [11]
- 日本: 4〜6本同時接種が一般的
- WHOも同時接種を推奨 [12]
ポイント
- 同時接種は安全。副反応は増えない [9][10]
- 早く免疫がつく、通院回数が減る、接種忘れが減る [9]
- 日本小児科学会も積極的に推奨 [9]
Q3.「具体的なスケジュールを教えてください」
——どのワクチンを、いつ、どの順番で受けるのがベストですか?
「生後2ヶ月に1回目、生後3ヶ月に2回目、生後4ヶ月に3回目」という流れが基本です [1]
標準的な予防接種スケジュール(0〜1歳):
生後2ヶ月(1回目)【最重要!】
- 五種混合 ① [5]
- 小児用肺炎球菌 ①
- B型肝炎 ①
- ロタウイルス ①
合計4本の同時接種(※五種混合にヒブが含まれるため、従来より1本減)
生後3ヶ月(2回目)
- 五種混合 ②
- 小児用肺炎球菌 ②
- B型肝炎 ②(※3〜8週間隔)
- ロタウイルス ②
合計4本の同時接種
生後4ヶ月(3回目)
- 五種混合 ③
- 小児用肺炎球菌 ③
- ロタウイルス ③(※ロタテックの場合のみ)
合計2〜3本の同時接種
生後5〜8ヶ月
- BCG(1回)
- 標準的な接種期間は生後5〜8ヶ月(定期接種は1歳未満まで)[6]
生後7〜8ヶ月
- B型肝炎 ③(※1回目から20〜24週間後)[3]
1歳(追加接種)
- 麻疹風疹(MR)①(最優先)[7]
- 五種混合 ④(追加)
- 小児用肺炎球菌 ④(追加)
- 水痘(みずぼうそう)①
この中で最も重要なのが「生後2ヶ月」です。ここでスタートを切れるかどうかが、その後のスケジュールを大きく左右します [1]
生ワクチンと不活化ワクチンの接種間隔:
- 注射生ワクチン(BCG、MR、水痘)→ 次の注射生ワクチンまで27日以上空ける [13]
- 経口生ワクチン(ロタウイルス)→ 接種間隔の制限なし [13]
- 不活化ワクチン(五種混合、肺炎球菌、B肝など)→ 次のワクチンまで制限なし(翌日でもOK)[13]
ポイント
- 生後2ヶ月に1回目が最重要 [1]
- 基本は生後2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月に接種 [1]
- 不活化ワクチンは翌日でも次のワクチンが打てる [13]
Q4.「スケジュールが遅れてしまいました。どうすればいいですか?」
——風邪を引いたりして、予定より遅れてしまいました。最初からやり直しですか?
大丈夫です。遅れても最初からやり直す必要はありません [14]。今から最適なスケジュールを組み直せます
スケジュールが遅れた時の考え方:
原則
- 打った分は有効。最初からやり直さない [14]
- 残りの回数を、推奨間隔で接種すればOK
- 早くキャッチアップすることを優先
ケース別の対応
ケース1: 生後4ヶ月で、まだ1回も打っていない
- 今すぐ開始
- 生後2ヶ月開始の標準スケジュールに準じて接種
- 同時接種でキャッチアップ
ケース2: ヒブ・肺炎球菌を生後6ヶ月で1回しか打っていない
- 開始月齢によって接種回数が変わる [2]
- 生後2〜6ヶ月開始: 初回3回 + 追加1回
- 生後7〜11ヶ月開始: 初回2回 + 追加1回
- 1〜4歳開始: 1回のみ
- かかりつけ医と相談
ケース3: BCGを生後8ヶ月過ぎてしまった
- 標準的な接種期間(生後5〜8ヶ月)は過ぎているが、1歳未満なら定期接種として接種可能 [6]
- 1歳を過ぎると定期接種の対象外
- かかりつけ医に相談し、早めに接種を
ケース4: 1歳になってもMRを打っていない
- 最優先で接種 [7]
- 麻疹は感染力が非常に強く、重症化しやすい [7]
- 保育園・幼稚園の入園前に必須
「遅れた」と気づいた時点で、すぐにかかりつけ医に相談してください [14]。「今から最適なスケジュール」を一緒に考えましょう。焦らず、でも着実に進めることが大切です
ポイント
- 遅れても最初からやり直さない [14]
- 残りの回数を推奨間隔で接種すればOK
- 同時接種でキャッチアップ
- 気づいた時点ですぐにかかりつけ医に相談 [14]
Q5.「任意接種のワクチンも受けたほうがいいですか?」
——おたふくかぜやインフルエンザは任意接種ですよね。お金もかかるし、受けなくてもいいのでは?
これ、大きな誤解です。「任意接種」=「受けなくてもいい」ではありません [15]
定期接種 vs 任意接種:
定期接種
- 重要度
- 高い
- 費用
- 公費(無料)
- 接種の推奨度
- 強く推奨
任意接種
- 重要度
- 同じく高い [15]
- 費用
- 自費(有料)※一部助成あり
- 接種の推奨度
- 強く推奨 [15]
「定期」と「任意」の違いは、国が費用を負担するかどうかだけです [15]。病気の重要度は変わりません。日本小児科学会は「任意接種も定期接種と同じく重要」と明言しています [15]
主な任意接種ワクチン:
① おたふくかぜ(ムンプス)[16]
- 合併症が怖い: 難聴(1,000人に1人)、髄膜炎、精巣炎
- 1歳と小学校入学前の2回接種を推奨 [16]
- 先進国で定期接種でないのは日本だけ
② インフルエンザ [17]
- 生後6ヶ月から接種可能
- 毎年10月〜12月に2回接種(13歳未満)[17]
- 重症化予防が主目的
③ ロタウイルス(2020年10月から定期接種)[4]
- 生後2ヶ月から接種開始
- 初回は生後14週6日までに接種 [4]
- 重症の胃腸炎を予防
費用について:
- 自治体によって助成がある場合も
- お住まいの自治体のホームページを確認
- かかりつけ医に相談
特におたふくかぜは、合併症の難聴が一生治らないこともあります [16]。費用はかかりますが、病気にかかるリスクと比較して、ぜひ接種を検討してください
ポイント
- 「任意」=「受けなくてもいい」ではない [15]
- 任意接種も定期接種と同じく重要 [15]
- おたふくかぜ、インフルエンザは推奨 [16][17]
- 自治体の助成制度を確認
まとめ
- 0〜1歳で6種類、計15回以上のワクチン接種 [1]
- 生後2ヶ月から開始が鉄則。遅れるほどリスク [1][8]
- 同時接種は安全で推奨。副反応は増えない [9][10]
- スケジュールが遅れても大丈夫。今から最適なスケジュールを [14]
- 任意接種も重要。「任意」=「受けなくてもいい」ではない [15]
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