小児科おかもん先生 だより Vol.482
エピペンの使い方、練習していますか?保護者のための実践ガイド
今号のポイント
- 2エピペンは「迷ったら打つ」が原則。遅れるほどリスクが高まる
- 4太ももの外側に垂直に押し当て、カチッと音がしたら10秒間保持する
- 6処方されたら練習用トレーナーで定期的に手順を確認し、有効期限も管理する
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
食物アレルギーをお持ちのお子さんにエピペンが処方されたとき、「本当にいざというとき使えるだろうか」と不安に思う保護者は多いです。エピペンはアナフィラキシーという命に関わるアレルギー反応に対する最も重要な応急処置です。使うべきタイミングで使えるように、平時からの準備が大切です。
今回は、エピペンの具体的な使い方と管理のポイントをお伝えします。
どんなときにエピペンを使うのですか
エピペンは、アナフィラキシーが疑われるときに使用します。アナフィラキシーとは、複数の臓器に急速に症状が広がる重篤なアレルギー反応です [1]。
エピペンを使うべき症状 [1][2]:
| 臓器 | 症状 |
|---|---|
| 呼吸器 | 咳が止まらない、ゼーゼーする、声がかすれる、息苦しい |
| 循環器 | 顔色が悪い、唇が青い、ぐったりする、意識がもうろうとする |
| 消化器 | 繰り返す嘔吐、持続する強い腹痛 |
| 全身 | 上記の複数が同時に出現 |
「迷ったら打つ」が基本原則です [2]。エピペンの副作用(動悸、手の震えなど)は一時的で軽微なものがほとんどです。一方、アナフィラキシーへの対応が遅れると命に関わります。「打って後悔」より「打たずに後悔」のほうがはるかに危険です。
エピペンは一時的に症状を抑える薬です。効果は10〜20分程度で、症状が再び悪化することがあります(二相性反応)。エピペンを打ったら、必ず救急車を呼んでください。
エピペンの具体的な使い方を教えてください
エピペンの使用手順 [2][3]:
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 準備 | 青い安全キャップを外す |
| 2. 構える | オレンジ色の先端を下にして、利き手でしっかり握る |
| 3. 打つ | 太ももの外側に、衣服の上からでもよいので垂直に強く押し当てる |
| 4. 保持 | 「カチッ」と音がしたら、そのまま10秒間保持する |
| 5. 抜く | まっすぐ引き抜く。オレンジ色のカバーが伸びて針が収納される |
| 6. 記録 | 打った時刻を記録し、119番に連絡する |
打つ場所:
- 太ももの外側の中央あたり
- 衣服の上からでもよい(ズボンの上から打てる)
- お子さんが動く場合は、膝の上に座らせて太ももを固定する
エピペンには体重に応じて2つの規格があります [3]:
体重
- エピペン 0.15mg
- 15〜30kg
- エピペン 0.3mg
- 30kg以上
アドレナリン量
- エピペン 0.15mg
- 0.15mg
- エピペン 0.3mg
- 0.3mg
エピペンには薬液の入っていない練習用トレーナーが付属しています。3〜6ヶ月に1回は家族で練習し、祖父母や保育園の先生など日常的にお子さんを見る方にも手順を共有してください。
エピペンの保管と管理で気をつけることは何ですか
エピペンは適切に保管しないと、いざというときに使えません [3][4]。
| 項目 | 注意点 |
|---|---|
| 保管温度 | 15〜30℃の室温保存。冷蔵庫には入れない |
| 光 | 直射日光を避ける。携帯ケースに入れる |
| 有効期限 | 通常1年程度。期限を過ぎたら交換 |
| 外観チェック | 窓から見える液が変色していたら使用しない |
| 携帯 | 常に持ち歩く。車の中に放置しない(高温になる) |
有効期限の管理には、スマートフォンのリマインダーを活用するのがおすすめです。期限の1ヶ月前にアラームを設定しておくと、交換し忘れを防げます。
保育園や学校での対応はどうすればいいですか
保育園や学校でのアナフィラキシー対応には、事前の計画と情報共有が不可欠です [4][5]。
| 準備すること | 内容 |
|---|---|
| 緊急時個別対応計画書 | かかりつけ医に記入してもらう |
| エピペンの預け入れ | 園・学校に預ける。保管場所を複数の職員が把握 |
| 職員研修 | エピペンの使い方を園・学校の職員にも共有 |
| 連絡先リスト | 保護者、かかりつけ医、救急の連絡先を一覧に |
2008年の学校保健安全法改正以降、教職員によるエピペンの使用は法的に認められています [5]。「医療行為だから先生は打てない」ということはありません。

おかもん先生より
エピペンを処方したご家庭に「使い方は大丈夫ですか?」と聞くと、多くの方が「練習していません」とおっしゃいます。実は医療者でも、エピペンを打つ瞬間は緊張するものです。練習なしに本番で冷静に使えると思わないでください。練習用トレーナーを使って、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなで一度やってみてください。その5分の練習が、お子さんの命を守る5秒につながります。
まとめ
- アナフィラキシーが疑われたら「迷わず打つ」
- 太ももの外側に垂直に押し当て、カチッと音がしたら10秒保持
- 打ったら必ず119番。二相性反応に備える
- 室温保存、有効期限管理、定期的な練習が三本柱
- 保育園・学校にも預け入れと情報共有を
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おかもん先生
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