愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.459
日本脳炎ワクチン、なぜ3歳からなのか
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「日本脳炎のワクチンは3歳からと聞きましたが、もっと早くから打てないのですか?」「そもそも日本脳炎ってまだあるんですか?」。3歳前後のお子さんの定期健診で、よくいただくご質問です。
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを持った蚊(コガタアカイエカ)に刺されることで感染する病気です [1]。国内の患者数は年間10例未満と少なくなりましたが、ウイルスそのものは消えておらず、ワクチンによる予防が引き続き重要です。
接種スケジュール
日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、計4回の接種が必要です [2]。
時期
- 1期初回(1回目)
- 3歳
- 1期初回(2回目)
- 3歳(1回目から6〜28日後)
- 1期追加
- 4歳(2回目からおおむね1年後)
- 2期
- 9歳
内容
- 1期初回(1回目)
- 1回目
- 1期初回(2回目)
- 2回目
- 1期追加
- 3回目
- 2期
- 4回目
定期接種として無料で受けられる期間は、1期が生後6か月〜7歳6か月の前日まで、2期が9歳〜13歳未満です [2]。
標準的な開始年齢が3歳とされている理由は、日本脳炎ウイルスを媒介する蚊への曝露機会が3歳頃から増えることと、以前のマウス脳由来ワクチン時代に低年齢での副反応データが十分でなかったためです [3]。現在は乾燥細胞培養ワクチン(ジェービックV)に切り替わっており、日本小児科学会は流行地域に居住する場合、生後6か月からの早期接種を推奨しています [3]。
西日本や養豚場の近くなど、蚊の多い環境にお住まいの場合は、かかりつけ医と早期接種を相談しましょう。
日本脳炎はどんな病気か
感染しても多くの場合は無症状ですが、100〜1,000人に1人の割合で脳炎を発症します [1]。発症した場合の致死率は20〜40%と非常に高く、回復しても半数近くに神経学的後遺症が残ります [1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病原体 | 日本脳炎ウイルス(フラビウイルス科) |
| 感染経路 | コガタアカイエカ(蚊)が媒介 |
| 増幅動物 | 豚 |
| 潜伏期間 | 6〜16日 |
| 発症率 | 感染者の0.1〜1% [1] |
| 発症時の致死率 | 20〜40% [1] |
| 後遺症 | 運動障害、知的障害、てんかんなど |
国内の患者数は年間数例ですが、豚の日本脳炎抗体保有率は西日本を中心に依然として高い水準にあり [4]、ウイルスの流行は続いています。患者が少ないのはワクチン接種率が高いおかげです。
副反応について
現在使用されている乾燥細胞培養ワクチンは、以前のマウス脳由来ワクチンと比べて副反応が少なくなっています [5]。
| 副反応 | 頻度 |
|---|---|
| 接種部位の発赤・腫脹 | 10〜30% |
| 発熱(37.5度以上) | 数% |
| 機嫌が悪い・だるさ | 数% |
| 重篤な副反応(急性散在性脳脊髄炎など) | 極めてまれ |
以前のマウス脳由来ワクチンでは急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の報告があり、2005年から一時的に積極的勧奨が差し控えられていました [5]。2009年に新しい細胞培養ワクチンに切り替わり、2010年から積極的勧奨が再開されています。
2005〜2009年度の勧奨差し控えにより接種機会を逃した方(特例対象者)は、20歳になるまでの間に不足分を定期接種として無料で受けられます。
接種を逃してしまったら
1期の接種期間(7歳6か月の前日まで)を過ぎてしまった場合でも、特例措置に該当する方は接種が可能です [2]。該当しない場合は任意接種(自費)となります。
接種が途中で止まっている場合、最初からやり直す必要はありません。残りの回数を続けて接種します。

おかもん先生より
3歳健診で「日本脳炎ワクチンをまだ打っていません」というご家庭は珍しくありません。乳児期のワクチンラッシュが終わって一段落し、つい忘れてしまうのです。先日も「3歳の案内が届いて初めて知りました」というお父さんがいらっしゃいました。一方で、港区のような都市部でも蚊は飛んでいます。数は少なくても重症化すると取り返しのつかない病気なので、案内が届いたらなるべく早く予約をお願いします。
今号のまとめ
- 日本脳炎ワクチンは3歳から開始し、計4回接種する定期接種
- 発症すると致死率20〜40%、後遺症率も高い重篤な病気
- 患者数が少ないのはワクチンのおかげ。ウイルスは今も存在する
- 流行地域では生後6か月から早期接種が可能
- 勧奨差し控え期間に逃した方は特例措置で無料接種が可能
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ご質問・ご感想
「うちの子は早期接種したほうがいいですか?」など、外来でお気軽にどうぞ。
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