愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.205
「聞こえが悪いかも?」、滲出性中耳炎
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「テレビの音が大きい」「呼んでも返事がない」、こうした違和感から見つかるのが滲出性中耳炎です。急性中耳炎と違って痛みも熱も出ないので、保護者の方がなんとなく気づく程度のことが多く、見逃されやすい病気です。そのまま長引くと言葉の発達にも影響するので、早めに気づいてあげたいところです。
Q1.「滲出性中耳炎って、どんな病気ですか?」
——子どもが最近テレビをすごく大きな音で見るんです
大事なサインですね。中耳(鼓膜の奥の空間)に滲出液がたまって、音がこもって聞こえる状態です [1]。急性中耳炎のように痛みも熱も出ない分、気づきにくいんですね
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 好発年齢 | 3〜7歳 [1] |
| 頻度 | 就学前までにほとんどの子が一度は経験 [1] |
| 主な原因 | 耳管機能の未熟さ、急性中耳炎の後の液体の残り |
| 痛み・発熱 | 通常なし |
| 難聴の程度 | 軽度〜中等度の伝音難聴 [1] |
急性中耳炎との違い:
| 病気 | 痛み | 発熱 | 主症状 |
|---|---|---|---|
| 急性中耳炎 | あり | あり | 耳痛 |
| 滲出性中耳炎 | なし | なし | 聞こえの悪さ |
ポイント
- 痛みがないぶん気づかれにくい
- 主症状は聞こえの悪さ
- 就学前までに多くの子が経験する
Q2.「痛みがないと、どうやって気づけばいいですか?」
——熱も出ないし、何となく気になるだけで受診していいものか……
気になった時点で受診してほしいです [2]。日常のちょっとした違和感が、いちばん早く気づけるサインです
| 家庭で気づくサイン | なぜ起こるか |
|---|---|
| テレビの音量が大きくなった | 聞こえにくさを補おうとしている |
| 呼んでも返事をしないことが増えた | 声が届いていない |
| 話し声が大きくなった | 自分の声が聞こえにくい |
| 言葉の発達が遅い気がする | 聞き取れない音がある |
| 授業や先生の話で落ち着かない | 聞こえない疲れ |
| 「え?」「なに?」と聞き返す | 単純に聞こえていない |
3歳児健診や就学時健診で指摘されて見つかることも多いです。保育園や幼稚園の先生から『最近聞き返しが多い』と言われたら、それも受診のきっかけになります
ポイント
- 音量・返事・聞き返しの3つに注目
- 発達や集中への影響にも要注意
- 気になったら耳鼻科か小児科へ
Q3.「検査や治療はどう進みますか?」
——耳鼻科ではどんなことをするのでしょうか?
耳鼻科では、鼓膜の様子と中耳の動き、聞こえの3点を組み合わせて診断します [3]
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 鼓膜所見 | 鼓膜の色・厚み・位置を直接観察 |
| ティンパノメトリー | 中耳の圧と鼓膜の動きを波形で確認 |
| 聴力検査 | 難聴の程度を数値化 |
治療の進め方:
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 経過観察(3か月) | 多くは自然に改善するためまず様子を見る [3] |
| 鼻の治療 | 鼻炎・副鼻腔炎があれば並行して治療 |
| 鼓膜換気チューブ留置術 | 3か月以上改善せず難聴が続く場合 [3] |
| アデノイド切除術 | 反復・再発例でアデノイド肥大がある場合 |
大事なのは、3か月以内に自然に治ることが多いという事実です [3]。だからまず焦らず経過観察。鼻のケアを並行すると治りが早くなることも多いです
ポイント
- 3か月の経過観察が基本
- 鼻のケアを並行する
- 改善がなければチューブ留置を検討
Q4.「言葉の発達に影響はありますか?」
——長引くと言葉が遅れる、と聞いて心配になっています
両側の滲出性中耳炎が長く続く場合は、言語発達に影響することがあります [4]。ただし、片側の軽いものが一時的にある程度なら、過度に心配する必要はありません
| 注意が必要な場合 | 内容 |
|---|---|
| 両側性 | 片側性より影響が大きい |
| 3か月以上持続 | 発達に影響する可能性が上がる |
| 発達特性の併存 | 聞き取りと処理の二重負担がかかる |
| 多言語環境 | 言語入力の量に差が出やすい |
逆に、片側だけ・数週間で消えた、という経過なら言葉への影響はほとんど出ません。心配な時は聴力検査を一度受けて、数値で安心するのがおすすめです
ポイント
- 両側性・長期化は要注意
- 一時的な片側性は過度に心配不要
- 不安な時は聴力検査で客観視する
Q5.「家庭で気をつけることは?」
——家で何かできることはありますか?
鼻のケアと、接し方の工夫の2つが柱です [5]。耳管は鼻とつながっているので、鼻の状態が中耳にそのまま影響します
| ケア | 内容 |
|---|---|
| 鼻吸引 | 鼻水が奥にたまる前にこまめに吸う |
| 鼻かみの練習 | 片側ずつ口を開けて優しくかむ |
| 声かけの工夫 | 近くで、顔を見て、ゆっくりはっきり話す |
| 受動喫煙の回避 | 家族の喫煙は治りを遅らせる |
| 定期的な耳鼻科受診 | 経過を客観的にフォロー |
聞こえが悪いお子さんを『話を聞いていない』と叱ってしまうのが、いちばんもったいないパターンです。聞こえていないだけと分かっていれば、接し方も変わります
ポイント
- 鼻のケアが中耳の治りを左右する
- 近くで顔を見て話しかける
- 叱る前に聞こえを疑う
今号のまとめ
- 滲出性中耳炎は痛みがなく気づかれにくい
- テレビの音量や返事の様子に注目
- 多くは3か月以内に自然に改善する
- 長引く場合は言語発達に影響する可能性
- 鼻のケアと定期受診が大切
あわせて読みたい
- Vol.204「急性中耳炎」
- Vol.207「子どもの難聴スクリーニング」
- Vol.206「外耳炎」
- Vol.128「言葉の発達の目安」
ご質問・ご感想
「聞こえが悪いか心配です」「チューブの手術を勧められました」など、ご経験やご質問がございましたら、お気軽にお寄せください。
愛育病院 小児科 おかもん先生
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