愛育病院 小児科おかもん だより Vol.479
2026年版 咽頭結膜熱(プール熱)、症状・登園・予防
今号のポイント
- 2三主徴は高熱・咽頭痛・結膜炎。アデノウイルス3型が主因で、コロナ禍明けの2023年は警報レベルを超えた
- 4登園・登校の再開は、三主徴が消退してから2日経過後が基準
- 6アルコール消毒は効きにくい。タオル共用回避と次亜塩素酸消毒が予防の要
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
「プール熱」という言葉は多くの保護者の方に馴染みがあると思います。 正式名称は「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」、原因はアデノウイルスです。
2023年、この感染症がふだんとは違う顔を見せました。 2023年第45週には定点当たりの報告数が3.23人に達し、1999年の感染症法施行以来、初めて全国値が警報基準(3.0)を超えたのです。 北海道では7.99人、福岡は7.24人。コロナ禍の3年間でアデノウイルスへの曝露が減り、感受性を持つ子どもが積み上がっていたことが要因とみられています。
2026年の今、大規模流行は一段落しています。 それでも保育所や幼稚園での局所的な集団感染は毎シーズン繰り返されます。 今号では基本事項を整理した上で、2023年に明らかになった「型シフト」の話もお伝えします。
Q1: 「プール熱と言われましたが、プールに行っていないのにうつるんですか?」
「プール熱」は俗称です。 プールでの集団感染がきっかけで名前が広まりましたが、現在の厚生労働省や国立感染症研究所(JIHS)の公式名称は「咽頭結膜熱」です。 タオルの共用管理が進んだこともあり、プール経由の感染報告は以前より大きく減っています。
感染の主な経路は飛沫と接触です。 感染者の咳・くしゃみ、あるいはウイルスのついた手でドアノブやおもちゃを触り、それを別の子が触って目や口に運ぶというかたちで広がります。 プールに行かなくても、保育所の教室や家庭内で十分に感染します。
三主徴は次の三つです。
- 発熱(38〜40度、1日の中で上下しながら3〜5日続く)
- 咽頭炎(強い咽頭痛、扁桃の発赤や滲出物、咽頭後壁のリンパ濾胞腫脹)
- 結膜炎(片側から始まり対側へ広がる。下眼瞼の充血が強い)
頸部リンパ節腫脹を伴うことも多く、目の症状では角膜上皮下浸潤を伴うことがあります。 角膜の浸潤は視力に影響することがあるため、目の充血が強い場合は眼科への受診もご検討ください。
ちなみに2023年の流行を引き起こしたアデノウイルスはHAdV-B3(3型)です。 大阪府の調査では、3型は2020年3月から2022年12月の約3年間、ほぼ検出されませんでした。 その間に免疫を持たない子どもが増え、2023年に一気に感染が広がったと考えられています。
Q2: 「いつから保育園や幼稚園に行けますか? 熱が下がっただけではダメですか?」
学校保健安全法による出席停止の基準は、「主要症状が消退した後2日を経過するまで」です。
「主要症状が消退した」というのは、三つの症状すべてが落ち着いたことを意味します。 発熱が引いただけでは足りません。 咽頭炎も、結膜炎も、おおむね治まった状態を確認してください。
外来でよく受ける質問に「2日というのはその日を含めて?」というものがあります。 症状消退の翌日を1日目として数え、その翌日(合計2日後)以降に登園・登校が可能です。
保育所・幼稚園の多くで、医師が記載した意見書や治癒証明書の提出を求めています。 港区でも「患者の約82%は5歳以下の小児」とされており、保育施設での感染拡大防止のため、手続きを丁寧に踏むことが求められています。 詳しくは各施設にご確認ください。
一点補足しておきます。 アデノウイルスは症状が消えた後も便の中に1か月程度排出され続けます。 ただし登園基準は症状ベースです。症状が消退して2日経過すれば、ウイルスが便中に残っていても登園できます。 登園再開後も手洗い、おむつ替え後の手洗いはしばらく丁寧に続けてください。
Q3: 「2023年は過去最多と聞きました。2026年もまた大流行しますか? 受診の目安も教えてください」
2023年の流行は、コロナ禍による「感受性集団の蓄積」が一気に解放されたことによるものでした。 2024年は通常レベルに戻り、警報を超えるような状況にはなりませんでした。
2026年の現時点で全国的な大流行の兆候は認められていません。 ただし保育所・幼稚園での局所的な集団感染は毎シーズン発生します。 施設から「咽頭結膜熱が出ています」と連絡が入ることは珍しくありません。
受診を急ぐ目安をまとめます。
- 高熱が4日以上続く
- 目の充血が強い、もしくは視力がぼやけると訴える
- 水分をまったく摂れない、または排尿が著しく減っている
- ぐったりして反応が乏しい
上記に当てはまらなければ、多くは自宅で休養しながら経過を見ることができます。 発熱時の解熱剤はアセトアミノフェン(カロナールなど)を使い、水分補給を優先してください。 咽頭痛が強くて飲み込みにくい場合は、冷たいゼリーや経口補水液を少量ずつ試してみてください。
予防についてひとつ覚えておいてほしいことがあります。 アデノウイルスはアルコール系消毒薬が効きにくいウイルスです。 ドアノブやおもちゃを拭く際は次亜塩素酸ナトリウム(0.05〜0.1%)か、煮沸消毒を使ってください。 流水と石鹸での手洗いは引き続き有効です。 ワクチンはありません。