愛育病院 小児科おかもん だより Vol.351
入園・入学前の予防接種、忘れていませんか?、小児科医が教える「いま打つべきワクチン」チェックリスト
今号のポイント
- 2年長の3月までにMR(麻疹風疹)2期を接種しないと定期接種の機会を逃す
- 4日本脳炎1期の追加(3回目)を忘れている家庭が意外と多い
- 6おたふくかぜワクチンの2回目は任意だが、難聴予防のために強く推奨
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
入園・入学シーズンが近づくと、制服や持ち物の準備で毎日バタバタしますよね。そんな中で見落とされやすいのが母子手帳です。この時期に打ち忘れると、定期接種のまま無料で受けられるチャンスを逃してしまうワクチンがいくつかあります。
毎年、年度末になって「先生、MR2期まだ打ってなかった!」と駆け込まれる保護者の方が少なくありません [1]。集団生活が始まると感染症のリスクは一気に上がります。今のうちに母子手帳を確認して、打ち漏らしがないか一緒にチェックしていきましょう。
Q1.「入園・入学前に確認すべきワクチンは、どれですか?」
——予防接種は赤ちゃんの頃に全部済ませたと思っていたんですが、まだ打つものがあるんですか?
はい。3〜6歳の時期に接種すべきワクチンは複数あります。赤ちゃんの頃に打ったワクチンの追加接種(ブースター)が必要なものや、この年齢で初めて対象になるものがあるんです [1]
入園・入学前チェックリスト:
| ワクチン | 種別 | 対象年齢 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| MR(麻疹風疹)2期 | 定期 | 年長児(5〜6歳) | 小学校入学前の3月31日まで [1] |
| 日本脳炎 1期追加(3回目) | 定期 | 3歳(標準)〜7歳6ヶ月 | 1期初回(2回)から約1年後 [2] |
| 三種混合(DPT)追加 | 任意 | 就学前 | 百日咳の免疫低下を補う [3] |
| おたふくかぜ 2回目 | 任意 | 年長児推奨 | 難聴予防に強く推奨 [4] |
| 不活化ポリオ 追加 | 任意 | 就学前 | 免疫の持続を高める [3] |
特にMR2期と日本脳炎1期追加の2つは定期接種ですから、期限を過ぎると全額自費になります。母子手帳の予防接種ページを今すぐ確認してくださいね
Q2.「MR2期を打ち忘れると、どうなりますか?」
——年長のうちに打たないとダメなんですか? 小学校に入ってからでも大丈夫ですよね?
残念ながら、MR2期の定期接種は小学校入学前の3月31日が期限です [1]。この日を過ぎると任意接種(自費)となり、1回あたり約8,000〜10,000円の費用がかかります
MR2期が重要な理由:
- 1歳で打ったMR1期だけでは、免疫が十分に持続しないことがある [5]
- 2回接種で麻疹の予防効果は97〜99%に上昇する [5]
- 麻疹は感染力が非常に強く(基本再生産数R0=12〜18)、空気感染する [5]
- 近年も国内で麻疹の散発的な流行が報告されている [6]
麻疹は『1人の患者から12〜18人に感染する』ほど感染力が強い病気です [5]。インフルエンザ(R0=2〜3)と比べると、桁違いなのがわかりますよね。2回目の接種で"免疫の壁"をしっかり高くしておくことが大切です
ポイント: 年長の秋〜冬は体調を崩しやすい時期です。余裕をもって早めに接種しましょう。
Q3.「日本脳炎の3回目、打ったかどうか覚えていません」
——日本脳炎って3回も打つんですか? 2回で終わりだと思っていました……
日本脳炎ワクチンの1期は全部で3回です。3歳頃に1〜4週間隔で2回(1期初回)打ち、その約1年後にもう1回(1期追加)を打ちます [2]。実はこの3回目を忘れている方がとても多いんです
日本脳炎ワクチンのスケジュール:
時期
- 1期初回 1回目
- 3歳(標準)
- 1期初回 2回目
- 3歳(標準)
- 1期追加(3回目)
- 4歳(標準)
- 2期
- 9〜12歳
間隔
- 1期初回 1回目
- 、
- 1期初回 2回目
- 1回目から1〜4週間後
- 1期追加(3回目)
- 2回目から約1年後
- 2期
- 、
日本脳炎ウイルスは蚊(コガタアカイエカ)が媒介します [2]。国内でもブタの日本脳炎ウイルス抗体保有率は高い地域があり、感染リスクはゼロではありません [7]。3回目を打たないと十分な免疫が得られないので、母子手帳で接種回数を確認してください
ポイント: 1期追加の定期接種期限は7歳6ヶ月の前日までです [2]。年長で気づけばまだ間に合います。
Q4.「おたふくかぜワクチンの2回目は、本当に必要ですか?」
——任意接種で自費ですよね。1回打っていれば十分じゃないですか?
お気持ちはわかります。でも、おたふくかぜの最も怖い合併症は「ムンプス難聴」で、約1,000人に1人の頻度で発症するとされています [4]。一度起こると回復は見込めません
なぜ2回接種が推奨されるのか:
- 1回接種の予防効果は約78%、2回接種で約88%まで上昇する [4]
- 日本小児科学会は1歳でのMRとの同時接種(1回目)+年長でのMR2期との同時接種(2回目)を推奨 [4]
- 世界の多くの国では定期接種として2回接種が行われている [4]
ムンプス難聴は片耳だけのことが多いため、お子さん自身が気づかず、就学後の聴力検査で初めて発覚するケースもあります [4]。難聴には有効な治療法がないため、ワクチンによる予防が唯一の手段です。MR2期と同時に打てますので、ぜひご検討ください
ポイント: 港区ではおたふくかぜワクチンの費用助成を行っています。お住まいの自治体の助成制度も確認しましょう。
Q5.「接種スケジュールが遅れてしまいました。今からでも間に合いますか?」
——下の子の世話でバタバタして、気づいたら予定より半年以上遅れてしまって……
大丈夫です。遅れても、打っていないよりは打ったほうがずっといい。これが予防接種の大原則です [1]。まずはかかりつけの小児科に相談して、"今からのベストスケジュール"を一緒に組み直しましょう
遅れた場合の対応ポイント:
- 定期接種には年齢の期限があるため、まず期限の近いものから優先する [1]
- 複数のワクチンが未接種の場合は同時接種で効率よくキャッチアップできる [8]
- 同時接種の安全性は科学的に十分確認されている [8]
- 接種間隔の上限はない(最初からやり直す必要はない) [1]
"遅れちゃったから恥ずかしい"と感じる方もいらっしゃいますが、小児科医はまったく気にしません。お子さんを守りたいという気持ちで来てくださるだけで十分です。遠慮なく相談してくださいね
入園・入学前ワクチンチェックの手順:
- 2母子手帳の予防接種ページを開く
- 4上記チェックリスト(Q1の表)と照合する
- 6未接種・接種回数が足りないものに印をつける
- 8かかりつけ小児科に電話して予約する