愛育病院 小児科おかもん だより Vol.341
「学校の尿検査で異常と言われたら」、蛋白尿・血尿の正しい受け止め方
今号のポイント
- 2学校検尿は1973年から続く日本独自の制度。IgA腎症などの早期発見に大きく貢献しています
- 4蛋白尿の多くは「体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)」で、思春期の2〜5%程度に見られる良性の所見です
- 6蛋白尿+血尿の組み合わせは腎炎の可能性があるため、必ず精密検査を受けましょう
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
新学期の学校検尿で「異常あり」と結果が返ってくると、腎臓の病気かもしれないと心配になりますよね。でも、尿の異常にはいくつも原因があって、その多くは治療のいらない良性のものです。今回は学校検尿の仕組みと、蛋白尿・血尿を指摘されたときにどう考えればよいかをお話しします。
Q1. 学校検尿はどんな制度ですか?
お母さん:学校で尿検査があるのは日本だけなんですか?
おかもん先生:はい、学校検尿は1973年に学校保健法(現・学校保健安全法)の改正によって始まった、日本が世界に先駆けて導入した制度です[1]。毎年、全学年の児童・生徒を対象に実施されています。
お母さん:何を調べているのですか?
おかもん先生:主に以下の項目を調べています:
- 蛋白(たんぱく):腎臓のフィルター機能に問題がないか
- 潜血(血尿):尿に血液が混じっていないか
- 糖:糖尿病のスクリーニング
一次検尿で陽性が出た場合、二次検尿(再検査)を行い、それでも陽性であれば精密検査が勧められるという流れです[2]。
お母さん:この制度で実際に病気が見つかることはあるのですか?
おかもん先生:大きな成果がありますよ。特にIgA腎症(免疫グロブリンA腎症)の早期発見に大きく貢献しています。学校検尿が導入される前は、IgA腎症が発見されたときにはすでに腎機能が低下していることが多かったのですが、検尿制度のおかげで無症状のうちに発見できるようになり、予後が大幅に改善しました[3]。日本の小児IgA腎症の腎不全への進行率は、検尿制度のない国と比べて明らかに低いことが報告されています。
ポイント:学校検尿は日本発の制度で、IgA腎症の早期発見と予後改善に大きく貢献しています。
Q2. 蛋白尿が出たと言われました。腎臓の病気ですか?
お父さん:うちの子の尿に蛋白が出ていると言われたんですが、腎臓が悪いのでしょうか?
おかもん先生:蛋白尿にはいくつかの種類があり、その多くは心配のないものです。
最も多いのが体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)です。これは立っている姿勢のときだけ尿に蛋白が混じる現象で、思春期の子どもの2〜5%程度に見られると報告されています[4]。横になっているとき(寝ている間)の尿には蛋白が出ません。成長とともに自然に消失することがほとんどで、腎臓の病気ではありません。
お父さん:それはどうやって見分けるのですか?
おかもん先生:早朝尿(起床直後の尿)を調べます。早朝尿で蛋白が陰性であれば、体位性蛋白尿と考えられます[5]。再検査の際に早朝尿の提出を求められるのはこのためです。
早朝尿の正しい採り方は:
- 2前夜、寝る前にトイレに行く
- 4朝起きたら、体を起こしてすぐにトイレに行き、最初の尿を採取する
- 6起き上がってから時間が経つと体位性蛋白尿が出てしまうので、なるべくすぐに採る
お父さん:早朝尿でも蛋白が出ている場合は?
おかもん先生:その場合は腎臓に何らかの問題がある可能性があるので、精密検査が必要です。ただし、発熱や激しい運動の後にも一時的に蛋白尿が出ることがある(機能性蛋白尿)ので、体調が良いときに再検査することが大切です[4]。
ポイント:蛋白尿の多くは体位性蛋白尿(良性)です。早朝尿での再検査が鑑別の鍵になります。
Q3. 血尿はどう考えればいいですか?
お母さん:尿に血が混じっていると言われました。見た目は普通の色なのですが……。
おかもん先生:学校検尿で見つかる血尿のほとんどは「顕微鏡的血尿」といって、見た目ではわからないけれど、顕微鏡で見ると赤血球が混じっているものです。肉眼で赤い尿が出る「肉眼的血尿」とは区別されます。
顕微鏡的血尿だけ(蛋白尿を伴わない)の場合、最も多い原因は良性家族性血尿(菲薄基底膜病)です[6]。これは腎臓の糸球体基底膜がわずかに薄いだけで、腎機能には影響しません。家族歴を聞くと、お父さんやお母さん、ご兄弟にも血尿がある場合が多いです。
お母さん:それなら安心していいのですか?
おかもん先生:血尿だけで蛋白尿がなければ、多くの場合は経過観察で問題ありません。ただし、定期的なフォローアップは大切です。
一方、血尿と蛋白尿が両方ある場合は注意が必要です。糸球体腎炎(IgA腎症など)の可能性があるため、腎臓専門医での精密検査が推奨されます[7]。精密検査では血液検査(補体・免疫グロブリン・腎機能)や腎エコー、場合によっては腎生検が行われます。
ポイント:血尿のみは良性家族性血尿が多く経過観察で十分なことが多いですが、蛋白尿+血尿の組み合わせは腎炎を疑い精密検査が必要です。
Q4. 精密検査ではどんなことをしますか?
お父さん:精密検査と聞くと大変なイメージですが、具体的にはどのような検査ですか?
おかもん先生:段階を踏んで行いますので、いきなり大がかりな検査をするわけではありません。
初期の精密検査:
- 尿検査の再検(早朝尿を含む):蛋白尿の性状を詳しく調べます
- 血液検査:腎機能(クレアチニン・BUN)、補体(C3・C4)、免疫グロブリン(IgA・IgG)、ASO(溶連菌感染の既往)などを調べます
- 腎エコー:腎臓の形や大きさに異常がないかを確認します。痛みのない検査です
さらに必要な場合:
- 腎生検:腎臓に細い針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べる検査です。IgA腎症などの確定診断に必要な場合があります[8]。通常は入院して行います
お父さん:腎生検は怖そうですね……。
おかもん先生:確かに腎生検は侵襲的な検査ですが、必要と判断された場合は早期診断・早期治療につながる大切な検査です。すべての子どもに行うわけではなく、蛋白尿+血尿が持続する場合や、蛋白尿の量が多い場合などに限って行われます。IgA腎症であれば、早期に治療を開始することで腎機能を守ることができます[3]。
ポイント:精密検査は段階的に行われます。腎生検は全員に行うものではなく、必要な場合に限り実施されます。
まとめ
- 学校検尿は1973年から続く日本独自の優れた制度です
- 蛋白尿の多くは体位性蛋白尿(起立性蛋白尿)で、良性で治療不要です
- 血尿のみの場合は良性家族性血尿が多く、経過観察で十分なことがほとんどです
- 蛋白尿+血尿の組み合わせは腎炎(IgA腎症など)の可能性があり、精密検査が必要です
- 早朝尿での再検査が正しい評価の鍵になります
- 学校検尿はIgA腎症の早期発見に大きく貢献し、予後を改善しています
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