愛育病院 小児科おかもん だより Vol.064
「目が赤い!」、子どもの結膜炎ガイド
今号のポイント
- 2結膜炎には「ウイルス性」「細菌性」「アレルギー性」の3タイプがあり、治療法が異なる
- 4「はやり目」はアデノウイルスが原因で感染力が非常に強い、登園停止の対象になる
- 6目やにの色・量・かゆみの有無で、ある程度タイプの見当がつく
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「朝起きたら子どもの目が真っ赤で、目やにで目が開かない!」「保育園で結膜炎が流行っていると連絡があった」、お子さんの目のトラブルは、保護者の方にとって焦る瞬間のひとつですよね。
結膜炎は小児で非常によく見られる疾患ですが、原因によって対応が大きく異なります。今回は、保護者の方からいただく質問にお答えしながら、子どもの結膜炎について詳しく解説します。
Q1.「結膜炎にはどんな種類がありますか?見分け方は?」
——子どもの目が赤くなって目やにが出ています。結膜炎だと思うのですが、種類がいろいろあると聞きました。どうやって見分ければいいですか?
お子さんの目が赤いと心配ですよね。結膜炎は大きく3つのタイプに分けられます。目やにの特徴やかゆみの有無で、ある程度の見当をつけることができます。
結膜とは、まぶたの裏側と白目の表面を覆っている薄い透明な膜のことです。この結膜に炎症が起きた状態が「結膜炎」です [1]。
| ウイルス性結膜炎 | 細菌性結膜炎 | アレルギー性結膜炎 | |
|---|---|---|---|
| 原因 | アデノウイルス、エンテロウイルスなど [1][2] | インフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌など [1][3] | 花粉、ダニ、ハウスダストなど [1][4] |
| 目やにの色 | 水っぽい(漿液性)〜白色 [1] | 黄色〜黄緑色(膿性)[1][3] | 白色〜透明、糸を引くような粘液性 [4] |
| 目やにの量 | 中等度 | 多い | 少〜中等度 |
| かゆみ | 少ない | 少ない | 強い(最大の特徴)[4] |
| 充血 | 強い | 中等度 | 中等度 |
| 涙目 | 強い | 中等度 | あり |
| 片目・両目 | 片目から始まり両目に [2] | 片目または両目 [3] | 最初から両目 [4] |
| その他の特徴 | 耳前リンパ節の腫れ、発熱 [2] | まぶたの腫れ | くしゃみ・鼻水を伴うことが多い [4] |
| 感染性 | 非常に強い | あり(接触感染) | なし |
| 好発時期 | 夏〜秋に多い | 通年 | 春(花粉)、通年(ダニ) |
ポイント
- 「黄色いドロッとした目やに」→ 細菌性を疑う [1][3]
- 「水っぽい目やに+耳の前のリンパ節が腫れている」→ ウイルス性(はやり目)を疑う [2]
- 「とにかくかゆい+両目+くしゃみ鼻水」→ アレルギー性を疑う [4]
- ただし、見た目だけでは判断が難しいこともあるため、必ず受診してください [1]
Q2.「はやり目(流行性角結膜炎)とは何ですか?どのくらいうつりますか?」
——保育園で『はやり目が出ました』とお知らせがありました。どんな病気ですか?うちの子がかかったら、どのくらいお休みしないといけないですか?
はやり目は、結膜炎のなかでも特に感染力が強いものです。正しい知識を持っておくことが大切です。
はやり目(流行性角結膜炎: epidemic keratoconjunctivitis, EKC)は、主にアデノウイルス(8型、19型、37型、53型、54型など)が原因で起こる結膜炎です [2][5]。
はやり目の特徴:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因ウイルス | アデノウイルス(主に8型、37型、53型、54型)[2][5] |
| 潜伏期間 | 約5〜14日(平均8日)[2] |
| 感染経路 | 接触感染が主体(手→目)。飛沫感染は少ない [2][5] |
| 感染力のある期間 | 発症から約2週間 [2] |
| 典型的な経過 | 片目に発症→数日後にもう片方にも広がることが多い [2] |
| 症状のピーク | 発症から約1週間がもっとも症状が強い |
| 角膜への影響 | 発症2〜3週間後に点状の角膜混濁(多発性角膜上皮下浸潤)が見られることがある [5] |
アデノウイルスは環境中での生存力が強いウイルスです。タオル、ドアノブ、おもちゃなどの表面で数日〜数週間生存できるため、家庭内や保育園での集団感染が起こりやすいのです [2][5]。
アデノウイルスが引き起こす「目の病気」の比較:
主な原因型
- 流行性角結膜炎(はやり目)
- 8, 19, 37, 53, 54型 [2]
- 咽頭結膜熱(プール熱)
- 3, 4, 7型 [5]
- 急性濾胞性結膜炎
- 1〜11型など多数 [2]
特徴
- 流行性角結膜炎(はやり目)
- 角膜にも炎症が及ぶ。最も重症化しやすい
- 咽頭結膜熱(プール熱)
- 発熱+咽頭炎+結膜炎の3症状(※ vol054_アデノウイルス(プール熱) も参照)
- 急性濾胞性結膜炎
- 比較的軽症で自然治癒しやすい
ポイント
- はやり目の感染力は非常に強く、家庭内で広がりやすいです [2][5]
- アデノウイルスは環境中で長期間生存するため、タオル・食器の共有は厳禁 [5]
- 発症2〜3週後に角膜混濁が生じることがあり、長期経過観察が必要な場合も [5]
- アデノウイルスによる結膜炎にはプール熱もあります( vol054_アデノウイルス(プール熱) 参照)
Q3.「結膜炎の治療はどうしますか?目薬で治りますか?」
——小児科を受診したら目薬を処方されました。結膜炎は目薬で治るのですか?どのくらいで良くなりますか?
結膜炎の治療は、原因のタイプによって異なります。すべてが目薬で治るわけではないのですが、それぞれのアプローチをご説明します。
タイプ別の治療方針:
治療法
- ウイルス性
- 特効薬はなし。対症療法(冷湿布、人工涙液)[1][2]。二次感染予防に抗菌点眼薬を処方することがある
- 細菌性
- 抗菌点眼薬(トブラマイシン、レボフロキサシンなど)[1][3]
- アレルギー性
- 抗アレルギー点眼薬(クロモグリク酸、オロパタジンなど)[4][6]。重症例にはステロイド点眼
治癒までの目安
- ウイルス性
- 1〜3週間で自然治癒 [2]
- 細菌性
- 5〜7日間の点眼で改善 [3]
- アレルギー性
- アレルゲン回避と点眼の継続で管理 [4]
各タイプの治療で知っておいていただきたいこと:
ウイルス性結膜炎(はやり目を含む)の場合:
- アデノウイルスに直接効くお薬は現時点ではありません [2]
- 処方される点眼薬(抗菌薬入り)は、細菌の二次感染を防ぐ目的です [2]
- 体の免疫力でウイルスを排除するため、自然経過で1〜3週間かかります
- 角膜混濁が生じた場合は、ステロイド点眼薬を使用することがあります [5]
細菌性結膜炎の場合:
- 適切な抗菌点眼薬で比較的速やかに改善します [3]
- 自然治癒することもありますが(約60%が7日以内 [3])、治療したほうが治りが早く、感染拡大も防げます
- 点眼は処方された日数分をきちんと使い切ることが大切です
アレルギー性結膜炎の場合:
- かゆくても目をこすらないよう、お子さんに伝えてください [4]
- 冷たいタオルで冷やすとかゆみが楽になります
- 花粉症の時期は、外出後に顔を洗う・目を洗うことで症状を和らげられます [6]
- 重症例では眼科医による管理が必要です
小児によく使われる点眼薬:
| 点眼薬 | 種類 | 適応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| トブラマイシン | 抗菌薬 | 細菌性結膜炎 [3] | 1日3〜4回 |
| レボフロキサシン | 抗菌薬 | 細菌性結膜炎 [3] | 1日3回 |
| クロモグリク酸 | 抗アレルギー薬 | アレルギー性結膜炎 [4] | 予防的に使用開始すると効果的 |
| オロパタジン | 抗アレルギー薬 | アレルギー性結膜炎 [6] | 抗ヒスタミン作用あり。1日2回 |
ポイント
- ウイルス性には特効薬がなく、自然治癒を待ちます。抗菌点眼は二次感染予防です [2]
- 細菌性には抗菌点眼薬が有効。処方日数分を使い切ることが大切です [3]
- アレルギー性は「かゆみ対策」が重要。冷湿布と抗アレルギー点眼薬が基本です [4][6]
- お子さんへの点眼のコツ: 嫌がる場合は、仰向けに寝かせてまぶたの上に1滴落とし、目をパチパチさせると入りやすいです
Q4.「保育園はいつから行けますか?登園停止になりますか?」
——はやり目と診断されました。保育園はどのくらい休まないといけないですか?登園許可証が必要でしょうか?
はやり目は感染力が非常に強いため、登園停止の対象になります。タイプによって基準が異なるので、整理してお話しします。
結膜炎のタイプ別・登園・登校基準:
| タイプ | 法的根拠 | 出席停止基準 | 登園許可証 |
|---|---|---|---|
| 流行性角結膜炎(はやり目) | 学校保健安全法 第三種 [7] | 「医師が感染のおそれがないと認めるまで」出席停止 | 必要 [7][8] |
| 咽頭結膜熱(プール熱) | 学校保健安全法 第二種 [7] | 「主要症状消退後2日を経過するまで」出席停止 | 必要 [7][8] |
| 急性出血性結膜炎 | 学校保健安全法 第三種 [7] | 「医師が感染のおそれがないと認めるまで」出席停止 | 必要 [7] |
| 細菌性結膜炎 | 規定なし | 明確な出席停止基準はない | 園の方針による [8] |
| アレルギー性結膜炎 | 規定なし | 出席停止の対象外(感染しない) | 不要 [8] |
はやり目の具体的な登園再開の目安:
| チェック項目 | 基準 |
|---|---|
| 充血 | 明らかな充血がほぼ消失している |
| 目やに | ほとんど出なくなっている |
| 発症からの日数 | 通常、発症から約2週間が目安 [2] |
| 医師の判断 | 眼科医または小児科医が「感染のおそれがない」と判断 [7] |
ポイント
- はやり目・プール熱は学校保健安全法に基づく出席停止の対象です [7]
- はやり目は発症から約2週間の休みが必要になることが多いです [2]
- 細菌性結膜炎は法的な登園停止基準はありませんが、園の方針に従ってください [8]
- アレルギー性結膜炎は感染性がないため、登園制限はありません [8]
- 保育園入園後の感染症全般については vol031_保育園入園後の風邪ラッシュ もご覧ください
Q5.「家庭内でうつらないようにするには?」
——上の子(4歳)がはやり目にかかりました。下に0歳の赤ちゃんがいます。家庭内で感染を防ぐにはどうすればいいですか?
0歳のお子さんがいるとなると、特に気をつけたいですね。アデノウイルスは接触感染が主体なので、『手』と『モノ』の管理がポイントです。
家庭内感染予防のチェックリスト:
具体的な方法
- 手洗い
- 石鹸と流水で丁寧に。感染したお子さんのお世話の後は必ず。アルコール消毒はエンベロープを持たないアデノウイルスには効きが弱めなので、石鹸と流水を優先 [5][9]
- タオルの個別化
- 家族全員が個別のタオルを使用。ハンドタオルの共用は厳禁 [5]
- 目を触らない
- 感染したお子さんが目をこすった手であちこち触らないよう見守る [2]
- 寝具の分離
- 枕カバー・シーツは頻繁に交換。可能なら寝る場所を分ける [5]
- おもちゃの消毒
- 次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)で拭く。煮沸消毒も有効 [9]
- 入浴順序
- 感染したお子さんは最後に入浴 [5]
- 洗濯
- 感染したお子さんの衣類・タオルは別に洗濯するか、高温で乾燥 [9]
重要度
- 手洗い
- 最重要
- タオルの個別化
- 最重要
- 目を触らない
- 最重要
- 寝具の分離
- 重要
- おもちゃの消毒
- 重要
- 入浴順序
- 重要
- 洗濯
- 推奨
アデノウイルスの消毒のポイント:
効果
- 石鹸と流水
- 有効
- 次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)
- 有効
- 煮沸(80℃以上、10分)
- 有効
- アルコール消毒
- 効きが弱め
- 紫外線
- 有効
備考
- 石鹸と流水
- 手洗いの基本。20秒以上 [9]
- 次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)
- ドアノブ、おもちゃの消毒に [9]
- 煮沸(80℃以上、10分)
- タオル、ガーゼなどの布製品に
- アルコール消毒
- アデノウイルスはノンエンベロープウイルスで、一般のエンベロープウイルスより不活化しにくい。使うなら十分な接触時間を確保 [5][9]
- 紫外線
- 天日干しも一定の効果あり
特に0歳の赤ちゃんへの注意:
- 新生児〜乳児のアデノウイルス結膜炎は重症化することがあります [10]
- 目やに・充血が出たら、早めに小児科または眼科を受診してください
- 上のお子さんが目をこすった手で赤ちゃんに触れないよう、注意が必要です
ポイント
- アデノウイルスはアルコール消毒の効きが弱めなので、石鹸と流水での手洗いを基本に [5][9]
- タオルの共用は感染拡大の最大のリスク。必ず個別にしましょう [5]
- 「目を触らない→手を洗う」の習慣が最も効果的な予防策です [2]
- 0歳児は免疫が未熟なため、感染したお子さんとの接触を最小限にしてください [10]
まとめ
子どもの結膜炎について、ポイントを整理します。
| 項目 | ウイルス性 | 細菌性 | アレルギー性 |
|---|---|---|---|
| 最大の特徴 | 水っぽい目やに、リンパ節腫脹 | 黄色い膿性の目やに | 強いかゆみ |
| 治療 | 対症療法(自然治癒) | 抗菌点眼薬 | 抗アレルギー点眼薬 |
| 治癒期間 | 1〜3週間 | 5〜7日間 | アレルゲン管理で継続治療 |
| 感染性 | 非常に強い | あり | なし |
| 登園停止 | あり(はやり目) | 明確な規定なし | なし |
| 予防のカギ | 手洗い、タオル分離 | 手洗い | アレルゲン回避 |
お子さんの目が赤くなったら、まずは自己判断せずに小児科または眼科を受診してください。適切な診断に基づいた治療が、早い回復と感染拡大の防止につながります。
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