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発熱と解熱剤、外来でよく聞かれる8つの疑問
Vol.506感染症

発熱と解熱剤、外来でよく聞かれる8つの疑問

発熱と解熱剤の最新エビデンス。体温計の使い方、併用療法、回復への影響まで、外来で頻度の高い8つの疑問にお答えします

感染症全年齢20
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 12·Q&A 8問収録

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この記事のポイント

  • 感染症の発熱で脳がやられることはない。脳のサーモスタットが41℃前後で上限を作る
  • 解熱剤は『つらさを和らげる薬』。判断基準は体温の数字ではなくお子さんの様子
  • アセトアミノフェンとイブプロフェンの併用は効果は上回るが、原則は単剤で十分
  • 解熱剤を使っても病気の回復が明確に遅れるエビデンスはない
  • 受診の判断は体温の数字ではなく、お子さんの全身状態で決める

愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.506

発熱と解熱剤、外来でよく聞かれる8つの疑問

今号のポイント

  1. 2
    感染症の発熱で脳がやられることはない。脳のサーモスタットが41℃前後で上限を作る
  2. 4
    解熱剤は『つらさを和らげる薬』。判断基準は体温の数字ではなくお子さんの様子
  3. 6
    アセトアミノフェンとイブプロフェンの併用は効果は上回るが、原則は単剤で十分
  4. 8
    解熱剤を使っても病気の回復が明確に遅れるエビデンスはない
  5. 10
    受診の判断は体温の数字ではなく、お子さんの全身状態で決める

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。

外来で発熱について受ける質問は、本当に多岐にわたります。今回はそのなかでも頻度の高い8つを取り上げ、最新の研究も交えてお答えしていきます。

「以前にも同じような話を聞いた」と思った方こそ、ぜひ読んでみてください。ここ数年でいくつかの研究結果が出てきていて、考え方の整理が必要な部分もあります。

40度の熱で脳がやられることはありますか?

昨夜39.8度まで上がって、もう少しで40度になりそうでした。義母から『脳に障害が出るから早く下げなさい』と言われて……

外来で最もよく聞かれる質問のひとつです。結論から言いますと、感染症による発熱で脳にダメージが出ることは、まずありません [1]

脳にダメージが出る可能性があるのは、体温が42℃を超えた場合です [1]。しかし感染症による発熱、たとえば風邪やインフルエンザで体温が42℃まで上がることは通常ありません。脳の視床下部(ししょうかぶ=体温の司令塔)に体温のサーモスタットがあって、感染症による発熱では41℃程度で頭打ちになるよう調節されているからです [1]

42℃を超えるのは、熱中症のように体の温度調節が破綻した場合です。たとえば真夏の車内に閉じ込められるようなケースですね。こうしたときは体のサーモスタットが機能しなくなり、体温が際限なく上がってしまいます。感染症の発熱とはメカニズムがまったく違います。

実は1980年に、Schmittという小児科医が『Fever Phobia(発熱恐怖症)』という論文で、多くの保護者が低い熱でも脳へのダメージを心配していると報告しました [2]。20年後の追跡調査でも、この誤解はほとんど変わっていなかったとされています [3]。親の不安は40年以上前からずっと続いているのですが、科学的にはその心配はいりません。

ポイント

  • 感染症の発熱で脳がやられることはない [1]
  • 41℃前後で体温上昇は頭打ちになる(脳のサーモスタット)[1]
  • 42℃超は熱中症など体温調節が破綻したときだけ
  • 「高熱=脳がやられる」は40年続く誤解 [2][3]

解熱剤はいつ使えばいいですか? 37.5度で使っていい?

熱が出たら早めに解熱剤を、と思っているんですが、目安は何度くらいですか?

ここに大きな誤解があります。解熱剤の目的は、ただひとつ。お子さんのつらさを和らげることです [4][8]

アメリカ小児科学会(AAP)の公式見解では、『発熱のあるお子さんへの治療の目的は、体温を正常化させることではなく、全体的な快適さを改善すること』と明記されています [4]。同じ報告で『発熱は感染症と闘うための生理的なメカニズムであり、発熱そのものが病気の経過を悪化させるというエビデンスはない』とも述べられています [4]。発熱は、体がウイルスや細菌と戦っている証拠でもあります。

判断基準は体温計の数字ではなく、お子さんの様子です。元気に遊んでいたり、水分がとれていたり、眠れているなら、38℃でも39℃でも解熱剤を使う必要はありません。逆に37.5℃でもぐったりして水分がとれない、眠れないときは使ってあげてください。日本小児科学会のガイダンスでも、38.5℃以上を目安としつつ、元気で水分がとれていれば解熱剤は必ずしも必要ないとされています [5]

最新のレビュー(Bianchi 2025)でも、『発熱は調節された生理的な防御反応であり、病気ではない。治療目標は体温の正常化ではなく快適さである』と改めて整理されています [8]

参考までに、お子さんに使える解熱剤の用量です。

  • アセトアミノフェン(カロナール等): 体重1kgあたり10〜15mg、4〜6時間おき [4]
  • イブプロフェン: 体重1kgあたり5〜10mg、6〜8時間おき(生後6ヶ月以上)[4]

体重に基づいて計算するのが大切で、年齢だけで決めるのは不正確です。生後3ヶ月未満の発熱は重症感染症のサインの可能性があるため、解熱剤の前に必ず受診してください [5]

注意点として、脱水気味のときはイブプロフェンより腎臓への負担が少ないアセトアミノフェンを優先してください [4]。また、解熱剤を4日以上連続して必要とする発熱は、原因の精査が必要なので、早めの受診をお願いします。

ポイント

  • 解熱剤の目的は『つらさを和らげる』ことだけ [4][8]
  • 判断基準は数字ではなくお子さんの様子 [4][5]
  • アセトアミノフェン: 10〜15mg/kg、4〜6時間おき [4]
  • イブプロフェン: 5〜10mg/kg(6ヶ月以上)、6〜8時間おき [4]
  • 生後3ヶ月未満の発熱は解熱剤の前にまず受診 [5]

体温計、どこで測るのが正確ですか?

額で測れる体温計を使っているんですが、ほんとに正確なんでしょうか? 耳で測るタイプもありますよね

家庭で気になる方が多いところです。最近、体温計の精度を比べた大規模なメタ解析が出ました [6]

Lee 2025のメタ解析(34研究、約3万人)によると、額で測るタイプ(こめかみあたりにあてる温度計、temporal artery thermometer)と、額に近づけて非接触で測るタイプ(non-contact infrared thermometer)の感度はそれぞれ70〜80%、特異度は90%超でした [6]。つまり、熱がある人を見逃す可能性が2〜3割あるものの、熱がない人を熱ありと誤判定する確率は低い、という結果です [6]

ただし、これは医療現場でのスクリーニングを想定した話。家庭での日常使用なら、デジタル式の腋下(わきの下)体温計が信頼性とコストのバランスで最も実用的です。耳・額・非接触型は、あくまで補助的に使うのが現実的です。

体温の測り方のコツです。

  • 腋下なら、わきの下の汗をしっかり拭いてから、5分以上はさんで測る
  • 食事や入浴の直後は10〜15分待ってから測る
  • 同じ条件で連続測定して傾向を見る

一発の数字より、推移と全身状態のほうがずっと大事です。これはQ1でもお伝えした通りです。

ポイント

  • 額・耳・非接触型は感度70〜80%、見逃しが2〜3割ある [6]
  • 家庭ではデジタル式の腋下体温計が実用的
  • 食後・入浴後は10〜15分待つ
  • 一発の数字より、推移と全身状態を見る

アセトアミノフェンとイブプロフェン、併用してもいいですか?

解熱剤を飲ませたあと、熱が下がらなくて、別の解熱剤も足したくなることがあるんです。交互に使うのはどうですか?

ここは2024年にPediatrics誌から出た大きなネットワークメタ解析(De la Cruz-Mena 2024)が判断材料になります [7]。31試験5,009人のお子さんのデータをまとめた研究です [7]

結果は、『併用または交互投与のほうが、アセトアミノフェン単剤より、4時間後・6時間後に解熱効果が高い可能性がある』というものでした [7]。安全性については、併用群と単剤群とで重い副作用に有意差はありませんでした [7]

ただし、この研究には条件があります。観察期間は『最初の6時間まで』に限られています [7]。長期的に併用を続けた場合の安全性はまだ十分にわかっていません。

ここが大事なところですが、Bianchi 2025のレビューも、『臨床的には単剤で十分なケースが多く、併用や交互投与は限定的な状況で考える』としています [8]。理由は、用量の管理が複雑になり、誤投与のリスクが上がるためです。

家庭での実践としては、

  • まず単剤(アセトアミノフェンかイブプロフェン)で4〜6時間しっかり効果を見る
  • 1剤で効果が不十分でも、まずは投与間隔を守る
  • 自己判断で併用や交互投与を始めず、かかりつけ医に相談する

『熱を下げる』ことそのものが目的ではなく、お子さんを楽にしてあげるのが目的、という前提を忘れないことが大事です。

ポイント

  • 併用・交互投与は単剤より解熱効果が高い可能性あり [7]
  • ただし観察は6時間まで、長期安全性は未確立 [7]
  • 家庭では原則単剤、自己判断の併用は避ける [8]
  • 用量計算が複雑になる分、誤投与リスクが上がる

解熱剤を使うと、病気の回復が遅れますか?

発熱は体がウイルスと戦っている証拠と聞きました。解熱剤で熱を下げると、回復が遅れたりしないですか?

これも気になる方が多いご質問です。現在のエビデンスでは『解熱剤を使っても、病気の回復が明確に遅れるとは言えない』という整理になっています [4][8]

AAPの2011年の見解では、『発熱が感染症の経過を悪化させるエビデンスはなく、同様に解熱剤の使用が感染症の回復を遅らせるエビデンスもない』とされています [4]。Bianchi 2025の最新レビューでも、この結論は基本的に維持されています [8]

少し踏み込んだ研究としてPeters 2019があります [9]。重症で集中治療室に入っているお子さんを対象に、『37.5℃で解熱介入する群』と『39.5℃まで様子を見る群』をランダムに分けたパイロットRCTです [9]。結果、滞在期間や臓器サポート期間、死亡率に明らかな差は出ませんでした [9]。発熱の閾値を高めに設定しても、安全性に問題はなかったということです。

ただし、Peters 2019はあくまで重症例での話で、家庭での通常の発熱には直接当てはめられません。家庭で大事なのは、

  • 解熱剤を『回復を早めるため』に使うのではない(その効果はない)
  • 解熱剤を『回復を遅らせるから使わない』必要もない(そのエビデンスもない)
  • お子さんが楽になるかどうか、これだけが判断軸 [4][8]

つまり、使っても使わなくても、病気の経過自体は大きく変わらないということです。安心して『つらさ』を判断軸にしてください。

ポイント

  • 解熱剤で病気の回復が明確に遅れるエビデンスはない [4][8]
  • 重症例のRCTでも、解熱閾値を高くしても結果は同等 [9]
  • 解熱剤は『早く治す薬』でも『治癒を妨げる薬』でもない
  • 判断軸はお子さんの『楽になるか』だけ [4][8]

布団をたくさんかけて汗をかかせれば治りますか?

義母が『厚着で汗をかかせれば熱が下がる』と言うんですが、本当ですか?

お気持ちはわかるのですが、これは明確に誤りです。むしろ危険な行為ですので、ぜひ知っておいてください。

Q1でお話しした通り、発熱時は脳のサーモスタットが体温の設定を高くしています。厚着や布団で体を覆ってしまうと、体から余分な熱が逃げられなくなり、体温がさらに上がる危険があります [10]。これは特に赤ちゃんや小さなお子さんで深刻です。乳幼児は体温調節能力が未発達で、外部からの過剰な保温で容易に体温が上がりすぎます。

最も心配なのは脱水です。厚着で汗をかかせると、体の水分が大量に失われます。お子さんはもともと体に対する水分の割合が大人より高く、発熱だけで普段より多くの水分を消費しています。発汗が加われば、脱水が一気に進みます [10]。乳児突然死症候群(SIDS)の研究でも、発熱時の厚着・過剰な保温が危険因子のひとつとして指摘されています [11]

発熱のフェーズによって対応を変えるのがコツです。

  • 寒気・ふるえがある時期(体温が上がっている最中): 1枚多めに掛けてOK
  • 熱が上がりきって汗をかき始めたら: 薄着にして熱が逃げやすく
  • 室温は涼しめ(22〜24℃程度)、薄手の服1枚程度
  • こまめな水分補給(経口補水液・お茶・母乳・ミルクを少量ずつ頻回に)
⚠️脱水のサインを見逃さないで

おしっこが半日以上出ない、泣いても涙が出ない、唇がカサカサのときは、早めに受診してください。

ポイント

  • 厚着で汗をかかせるのは危険、脱水と過体温のリスク [10]
  • 過剰保温はSIDSの危険因子 [11]
  • 寒気の時期は厚めに、汗をかき始めたら薄めに切り替え
  • 一番大切なのはこまめな水分補給

熱性けいれんが心配です。高い熱が出ると起こるんですよね?

上の子が1歳のときに熱性けいれんを起こして、本当に怖い思いをしました。熱が高くならないよう、解熱剤でこまめに下げたほうがいいですよね?

熱性けいれんを経験されると、ほんとうに怖い思いをされますよね。お気持ちはよくわかります。でも、まず安心していただきたいのは、熱性けいれんは基本的に『良性』で、後遺症が残ることはほとんどないということです [12]

ここに大事な誤解があります。熱性けいれんは『熱の高さ』そのもので起こるわけではありません [12]。再発のリスク因子として『低い体温でのけいれん』『発熱から短時間でのけいれん』が挙げられています [12]。40℃で起こることもあれば38℃台で起こることもあります。体温の急な変動のほうが関連すると考えられています。

そしてもうひとつ重要なのが、解熱剤でこまめに熱を下げても、熱性けいれんの予防にはならないということです [4][12]。日本小児科学会のガイドラインでも、解熱剤は熱性けいれんの予防目的には推奨されていません [5]

熱性けいれんは6ヶ月〜5歳のお子さんの約4%に起こりますが、ほとんどが5分以内に自然に止まり、後遺症を残しません [12]。発達への悪影響もありません [12]

もしけいれんが起きた場合の対応です。

  • 横向きに寝かせる(嘔吐物で窒息しないように)
  • 口に何も入れない(舌を噛むことはほぼない、指やタオルを入れると危険)
  • 時間を測る(5分以上続く場合は救急車を呼ぶ)

1歳で初めてのけいれんだった場合、再発率は約50%、2歳では約30%です [12]。年齢が上がるほど再発率は下がります。再発が心配な場合は、かかりつけ医にダイアップ(ジアゼパム坐剤=けいれん予防のお尻から入れるお薬)の使用について相談することができます。ただしこれは『けいれんの予防』であって、発熱を防ぐものではない点にご注意ください。

ポイント

  • 熱性けいれんは熱の高さではなく、体温の急な変動と関連 [12]
  • 解熱剤で熱性けいれんは予防できない [4][5][12]
  • 6ヶ月〜5歳の約4%に発生、後遺症なし、発達への影響もない [12]
  • けいれん時は『横向き・口に入れない・時間を測る』

結局、熱が出たらどうすればいいですか?

今日のお話をまとめると、40℃でもあまり焦らなくていいということですよね。でも、いつ受診したらいいかの目安を教えてください

大事なのは、熱の高さではなく、お子さんの『全身状態』を見ることです [1]

すぐに受診(または救急)が必要なサインです。

  • 生後3ヶ月未満の赤ちゃんの38℃以上の発熱 [5]
  • ぐったりして呼びかけに反応が弱い
  • 水分がまったくとれない(半日以上おしっこが出ない)
  • 呼吸が速い・苦しそう
  • けいれんが5分以上続く、または1日に2回以上繰り返す
  • 発疹(押しても消えない赤い点々=紫斑は特に緊急)

翌日の日中受診で大丈夫なサインです。

  • 熱はあるが、水分がとれている・おしっこが出ている
  • 多少ぐずるが、あやすと反応がある
  • 3〜4日以上熱が続いている

38℃でも上のサインがあれば受診。40℃でも元気で水分がとれていれば、翌朝まで待って大丈夫なケースが多いです。数字より、お子さんの『いつもと違う』感覚を大事にしてください。

ポイント

  • 体温の数字より『全身状態』が重要 [1]
  • 生後3ヶ月未満の発熱は必ず受診 [5]
  • 受診の判断は『数字』ではなく『いつもと違う』感覚を信じる

今号のまとめ

  • 感染症の発熱で脳がやられることはない。サーモスタットが41℃前後で上限を作る [1]
  • 解熱剤は『つらさを和らげる薬』。判断基準は数字ではなく様子 [4][5][8]
  • 体温計は家庭ではデジタル式(腋下)が実用的、額・耳は補助 [6]
  • アセトアミノフェンとイブプロフェンの併用は効果は上回るが、原則は単剤 [7][8]
  • 解熱剤で病気の回復が明確に遅れるエビデンスはない [4][8][9]
  • 厚着で汗をかかせるのは危険、フェーズに合わせて衣服を調整 [10][11]
  • 熱性けいれんは解熱剤では予防できない [4][5][12]
  • 受診の判断は体温の数字ではなく、お子さんの全身状態で決める [1]

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※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

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