愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.465
子どものインフルエンザワクチン、2回接種の理由と卵アレルギー
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「インフルエンザワクチン、子どもは2回も打つ必要があるんですか?」「卵アレルギーがあるのですが、大丈夫でしょうか?」。毎年秋になると、外来でこの2つの質問をたくさんいただきます。
インフルエンザワクチンは定期接種ではなく任意接種(自費)ですが、生後6か月以上のすべての子どもに毎年の接種が推奨されています [1]。
なぜ子どもは2回接種なのか
13歳未満の子どもは、インフルエンザワクチンを原則2回接種します [1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 生後6か月〜12歳 |
| 接種回数 | 2回 |
| 接種間隔 | 2〜4週間(4週間が理想) |
| 13歳以上 | 1回 |
2回接種が必要な理由は、子どもの免疫系がまだ成熟途上にあるためです [2]。大人はインフルエンザに何度か感染した経験やワクチン接種歴があるため、1回の接種で十分な免疫応答(ブースター効果)が得られます。しかし子どもは過去の免疫記憶が乏しいため、1回目で免疫系を「起動」し、2回目でしっかりと抗体を上げる必要があります。
| 接種回数 | 子どもの抗体応答 |
|---|---|
| 1回接種 | 抗体上昇は不十分なことが多い |
| 2回接種 | 十分な防御レベルの抗体が得られる [2] |
1回目と2回目の間隔は、2〜4週間空けます。効果を最大にするには4週間の間隔が理想的です [1]。流行シーズン前(10〜11月)に1回目を接種し、11月中に2回目を終えるスケジュールが望ましいです。
1回目を10月中に、2回目を11月中に。流行のピーク(12〜2月)に間に合うよう計画しましょう。
ワクチンの効果
インフルエンザワクチンの発症予防効果はシーズンやウイルスの型によって変動しますが、子どもにおける効果は以下の通りです [3]。
| 効果 | 数値 |
|---|---|
| 発症予防効果(小児) | 約50〜60% [3] |
| 入院予防効果 | 約70〜80% |
| インフルエンザ脳症の予防 | 有意な効果あり |
「50〜60%しか効かないなら意味がないのでは」と思われるかもしれません。しかし、ワクチンの最大の意義は重症化予防にあります [3]。特にインフルエンザ脳症は5歳未満に多く、ワクチン接種でそのリスクを下げることができます。
卵アレルギーと接種について
インフルエンザワクチンは鶏卵を使って製造されるため、微量の卵タンパク(オボアルブミン)が含まれています [4]。しかし、卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンは接種できます。
米国CDCは2023-2024シーズンから、卵アレルギーの重症度にかかわらず、すべてのインフルエンザワクチンを通常通り接種してよいと勧告しています [4]。
| 卵アレルギーの程度 | 接種の可否 |
|---|---|
| 卵を食べると蕁麻疹が出る | 接種可能 |
| 卵でアナフィラキシーの既往 | 接種可能 |
| 卵を全く食べられない | 接種可能 |
この勧告の根拠となったのは、卵アレルギー患者4,315人(うち656人にアナフィラキシー既往)を対象とした28研究のレビューで、インフルエンザワクチン接種後にアナフィラキシーが発生した例はゼロだったという結果です [4]。
かつては「卵アレルギー=インフルエンザワクチン禁忌」とされていましたが、現在はその考え方は否定されています。かかりつけ医にご相談ください。
よくある質問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 生後何か月から打てる? | 生後6か月から [1] |
| 鼻スプレー型はある? | 日本では未承認(米国では2歳以上に使用) |
| 接種したのにかかった | ワクチンは発症予防率100%ではないが、重症化を防ぐ |
| 毎年打つ必要がある? | はい。ウイルスが毎年変異し、ワクチン株も更新されるため [5] |
| 他のワクチンと同時接種は? | 可能。不活化ワクチン同士の同時接種に制限なし |

おかもん先生より
卵アレルギーのあるお子さんのお母さんが「かかりつけの先生にインフルエンザワクチンは打てないと言われました」と来院されたことがあります。数年前まではそう指導されていた時代がありましたので、その先生を責めることはできません。最新のエビデンスをお見せして接種可能であることを説明し、院内で30分の経過観察をしながら接種しました。何の問題もなく終わり、翌シーズンからは安心して毎年接種に来てくださっています。医学は進歩します。以前ダメだったことが今は安全とわかっていることもあります。
今号のまとめ
- 13歳未満は2回接種。1回目で免疫を起動し、2回目で強化する
- 効果は50〜60%だが、重症化予防の意義は大きい
- 卵アレルギーがあっても接種可能。アナフィラキシー既往でも可
- 毎年の接種が必要。10月に1回目、11月に2回目が理想
- 生後6か月から接種でき、他のワクチンとの同時接種も可能
あわせて読みたい
- Vol.466「ワクチン後の発熱への対応」
- Vol.462「ワクチンが怖い、不安な親御さんへ」
- Vol.461「ワクチンの打ち忘れ・スケジュール遅れへの対応」
ご質問・ご感想
「卵アレルギーだけど大丈夫?」「いつ予約すればいい?」など、秋口にお気軽にどうぞ。
愛育病院 小児科 おかもん先生
本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。