愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.470
生後1-2ヶ月、顔の湿疹が気になる。乳児湿疹とアトピーの違い
今号のポイント
- 2生後1-2ヶ月の顔の湿疹は脂漏性湿疹か新生児ざ瘡であることがほとんどで、数週間から数ヶ月で自然に治る
- 4アトピー性皮膚炎は通常生後3ヶ月以降に発症し、かゆみが強いのが特徴
- 6石けんでやさしく洗い、保湿を続けることが基本ケア。2ヶ月以上続く場合は受診を
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「顔にブツブツができて心配」「アトピーでしょうか」。生後1-2ヶ月の赤ちゃんの外来で、最も多いご相談のひとつです。この時期の顔の湿疹は、ほとんどが自然に治る一時的なもの。でも、アトピーとの違いや正しいケアを知っておくと安心です。
脂漏性湿疹とは
頭皮やおでこ、眉毛のあたりに黄色っぽい脂っぽいかさぶた(鱗屑)ができるのが脂漏性湿疹です。「乳児脂漏性皮膚炎」とも呼ばれ、生後3ヶ月以内の赤ちゃんに多く見られます [1]。
原因はお母さんからもらったホルモンの影響で皮脂の分泌が活発になること。また、皮膚の常在菌であるマラセチアという真菌も関与していると考えられています [1]。見た目は気になりますが、かゆみはほとんどなく、ほとんどの場合は生後1年以内に自然に軽快します。
ケアのポイントは、かさぶたを無理にはがさないこと。お風呂の前にベビーオイルやワセリンを塗って15-20分おき、かさぶたをふやかしてからやさしく石けんで洗い流します。
新生児ざ瘡(にきび)とは
おでこや頬に赤いブツブツや白い小さなプチプチが現れるのが新生児ざ瘡です。新生児の約20%に見られ、生後2-4週頃に出現して4ヶ月以内に自然に治ります [2]。
こちらもお母さんからのホルモンの影響による一時的なもの。石けんでやさしく洗って清潔を保つだけで十分で、薬を塗る必要はほとんどありません。にきび用のクリームやローションは新生児の皮膚には刺激が強すぎるため、使用しないでください。
アトピー性皮膚炎との見分け方
この時期に最も気になるのは「アトピーではないか」ということでしょう。鑑別のポイントを整理します。
まず発症時期。アトピー性皮膚炎は通常、生後3ヶ月以降に始まります [3]。生後1-2ヶ月の時点でアトピーと確定診断することは難しく、経過をみる必要があります。
次にかゆみ。アトピー性皮膚炎の最大の特徴は強いかゆみです。赤ちゃんが顔をこすりつけたり、手でひっかいたりする動作が目立ちます。一方、脂漏性湿疹ではかゆみがほとんどありません [1][3]。
分布の違いも参考になります。脂漏性湿疹は頭皮・おでこ・眉毛が中心で、生後3-5ヶ月以降はわきの下や鼠径部にも出ることがあります。アトピー性皮膚炎は顔面(とくに頬)、首、四肢の屈側に好発します [4]。
生後6ヶ月未満では、アトピー性皮膚炎の診断基準(Hanifin-Rajka基準)の一部が使えません。この時期は「脂漏性湿疹→アトピー性皮膚炎への移行」が起こることもあるため、湿疹が2ヶ月以上続く場合は小児科で定期的にフォローを受けましょう。
保湿の重要性
近年の研究で、新生児期からの保湿剤の塗布がアトピー性皮膚炎の発症リスクを下げる可能性が報告されています [5]。2014年の日本の研究(ランダム化比較試験)では、生後1週間から毎日保湿剤を塗ったグループは、塗らなかったグループに比べてアトピー性皮膚炎の発症が約32%低かったという結果が出ています。
湿疹があってもなくても、生後早期から全身の保湿を習慣にすることをおすすめします。沐浴後にタオルで軽く水分を拭き取り、まだ肌がしっとりしているうちに保湿剤を塗るのが効果的です。
湿疹が2ヶ月以上続く、かゆみが強くひっかき傷が絶えない、ジュクジュクした浸出液が出る、全身に広がっている。こうした場合は早めに小児科を受診してください。適切な治療を早く始めることで、食物アレルギーへの進行(アレルギーマーチ)を予防できる可能性があります。

おかもん先生より
1ヶ月健診で顔のブツブツを心配されるお母さんには「きれいな顔で写真を撮りたかったのに」とおっしゃる方もいます。お気持ちはよくわかります。でも安心してください。この時期の湿疹のほとんどは一時的なもので、数週間後にはすっきりした顔になります。私自身、外来でお会いする赤ちゃんたちの「ビフォーアフター」を何百例も見てきましたが、毎回その変化に驚かされます。焦らず、毎日の洗顔と保湿を続けてあげてください。
今号のまとめ
- 脂漏性湿疹は頭皮・おでこ中心の黄色いかさぶた。かゆみなし。1年以内に自然軽快 [1]
- 新生児ざ瘡は約20%の新生児に発生。4ヶ月以内に自然に治る [2]
- アトピーは通常3ヶ月以降に発症し、かゆみが強いのが特徴。6ヶ月未満での確定診断は難しい [3][4]
- 新生児期からの保湿がアトピー発症リスクを下げる可能性がある [5]
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