愛育病院 小児科おかもん だより Vol.486
1歳半健診、何を見られる? 家でできる予習と当日の流れ
今号のポイント
- 21歳半健診は母子保健法に基づく法定健診。「合格・不合格」の場ではなく、成長を一緒に確認する場です
- 4指差し・単語・歩行が発達の主要チェック項目。1歳半で単語0でも即座に心配しなくていい
- 6「要観察」「要精査」は早期支援へのサイン。港区には相談窓口が複数あり、一人で抱え込まなくて大丈夫
こんにちは。愛育病院小児科のおかもんです。
1歳半になると、いよいよ「1歳半健診」の案内が届きます。
「何を見られるんだろう」「うちの子、ちゃんとしゃべれていないかもしれない」「発達を評価されるのが怖い」。そういった不安の声を、外来でよく耳にします。
まず大前提をお伝えします。1歳半健診は、お子さんの成長を「合格・不合格」で判定する場ではありません。この時期の発達のばらつきを確認し、もし支援が必要なら早めにつなぐための仕組みです。
今号では、この健診がどんな目的で行われ、何をチェックし、もし「要観察」と言われたらどうすればいいかを、できるだけ具体的にお伝えします。
Q1: 1歳半健診って何を見るんですか?
母子保健法第12条によって、市区町村は1歳6か月を超え2歳に達しない幼児を対象に健康診査を実施することが義務づけられています [1]。つまり、全国どこに住んでいても受けられる法定健診です。
健診の目的を厚労省の実施要綱から引用すると、「運動機能、視聴覚等の障害、精神発達の遅滞等障害を持った児童を早期に発見し、適切な指導を行う」とされています [2]。
健診の中身は、一般健康診査と歯科健康診査の2本立てです。
一般健康診査では10項目を確認します。身体発育状況(身長・体重・頭囲)、栄養状態、脊柱と胸郭の異常、皮膚疾患、四肢運動障害、精神発達の状況、言語障害、予防接種の状況、育児上の問題となる事項、その他の疾病と異常です [2]。
発達の評価では、以下の点が特に重視されます。
粗大運動は、歩行が確立しているか。1歳半では「走る」「しゃがむ」ことができる子が多いですが、歩き始めの月齢には個人差があります。
言語は、意味のある単語がいくつ出るか。CDC・AAPは2022年に発達マイルストーンを改訂しており、現在の基準では18か月で「ママ・パパ以外の単語が3語以上」が目安とされています [6]。古い文献では6語以上と書かれることもありますが、これは旧基準による表現です。いずれにせよ目安であり、単語数だけで判断するわけではありません。
指差しは、この年齢の発達評価において非常に重要な指標です。物を見て「あれ!」と指で示す行動(共同注意)が出ているかどうか。指差しは9か月ごろから出始め、遅くとも1歳6か月までに大半の子で見られます [7]。自分が欲しいものを要求する指差しだけでなく、「見て見て」と他者と喜びを共有する指差しがあるかが、社会性の発達を評価するうえで重要です。
微細運動では、積み木を2〜3個積むことができるかを確認します。
歯科健康診査では、歯と口腔の状態、仕上げ磨きの習慣、フッ素塗布の状況を確認します [2]。1歳6か月時点では上下の前歯と第一乳臼歯を合わせて12〜16本前後が生えていることが多いですが、萌出時期には個人差があります。
また、必要に応じてM-CHAT-R/Fという自閉スペクトラム症(ASD)のスクリーニングツールが使用されることがあります。50研究・5万人近いデータのメタ解析では、感度83%、特異度94%と報告されており [3][4]、18か月と24か月の2回のスクリーニングがAAPのガイドラインで推奨されています [6]。
ポイント
- 1歳半健診は法定健診。全国で実施が義務づけられている [1]
- 発達評価の軸は歩行・言語(単語数)・指差し・積み木 [2][6][7]
- ASDスクリーニング(M-CHAT-R/F)が使われることがある。陽性でも即確定診断ではない [3][4]
Q2: 家でできる予習と当日の持ち物は?
港区では、1歳6か月から2歳未満のお子さんが対象です。内科健診は指定医療機関での個別受診、歯科健診はみなと保健所での集団実施という形になっています [5]。
当日の持ち物は以下です [5]。
母子健康手帳、医療機関の受診結果通知書(内科受診後に歯科健診を受ける場合に必要)、記入済みのアンケート2種類(歯科用と健やか親子21)、バスタオル。予約はみなと母子(親子)手帳アプリまたはオンライン予約システムから行います。問い合わせはみなと保健所健康推進課(03-6400-0084、平日8:30〜17:00)へ。
家でできる「予習」としてお勧めしていることがあります。
まず、普段の様子をメモしておくことです。どんな言葉が出ているか(意味のある言葉かどうかも含めて)、何に興味を持っているか、指差しをするかどうか、遊び方の様子などです。
できれば動画を撮っておくと、健診の場でお子さんが緊張して普段の様子を見せてくれないときに役立ちます。
気になっていることをリストにまとめておきましょう。「健診でこんなこと聞いていいのかな」という小さな疑問こそ、聞いてほしいことです。
仕上げ磨きの習慣もこの時期に確認しておきたいポイントです。歯ブラシを自分で持たせた後に、大人がしっかり磨き直す習慣が大切です。
予防接種の状況も整理しておくとスムーズです。1歳前後に受けるものが多く、抜けがないか母子手帳で確認しておきましょう。
ポイント
- 港区は内科健診(個別・指定医療機関)と歯科健診(集団・みなと保健所)の2か所で受ける [5]
- 普段の言葉・行動・指差しの様子を動画に撮っておくと健診で役立つ
- 気になることはリストにして持参を。小さな疑問こそ健診で聞いてほしい
Q3: 「要観察」「要精査」と言われたらどうすれば?
「要観察」「要精査」という言葉は、保護者にとってドキッとする言葉です。ただ、これは「問題がある」という烙印ではなく、「もう少し丁寧に見ていきましょう」というサインです。
要観察は、「定期的に成長を確認しながら様子を見ましょう」という意味です。発達には幅があります。特にこの時期の言語の発達は個人差が大きく、1歳半の時点で意味のある言葉がほとんど出ていなくても、その後一気に伸びる子はたくさんいます。2歳で2語文(「ママ来て」「ワンワンいた」)が出ているかどうかが、次の重要な指標になります。
要精査は、専門医による詳しい評価が必要という意味です。早めに評価を受けることで、もし何かあったとしても早期に適切な支援につながれます。早期発見・早期支援は、お子さんにとって明らかにプラスです。
M-CHAT-R/Fのスクリーニングで陽性となった場合も、冷静に受け止めていただければと思います。最近のメタ解析では、スクリーニング陽性でも最終的にASD診断に至るのは全体の57.7%程度、低リスク群では51.2%という報告があります [4]。陽性でも約半数は最終的にASD診断には至りません。スクリーニングは「詳しく調べましょう」のきっかけであって、診断ではないのです。
受診すべきサインとして覚えておいてほしいことがあります。名前を呼んでも振り向かない、目線が合わない、人の動作を模倣しない、これらが続く場合は早めに相談してください。
港区の相談窓口です。
港区子ども家庭支援センター「ミナトイク」(03-5962-7201)は、子育てに関する総合相談窓口です。港区発達支援センター「ぱお」は、発達に関する専門的な相談・支援を行っています。みなと保健所健康推進課(03-6400-0084)も相談窓口として機能しています。
専門医療機関として、東京都立小児総合医療センターや国立成育医療研究センターがあります。
「要精査」と言われた時に、一人で不安を抱え込まないでください。次の一歩を一緒に考えることが、私たちの仕事です。
ポイント
- 「要観察」は様子を見るサイン。「要精査」は早期支援へのつながりであって烙印ではない
- M-CHAT-R/F陽性でもASD診断に至らないケースが約半数。スクリーニングは診断ではない [4]
- 港区の相談窓口:ミナトイク(03-5962-7201)、発達支援センターぱお、保健所(03-6400-0084)[5]
今号のまとめ
1歳半健診は、「合格・不合格」を判定する場ではありません。発達に個人差があることを前提に、お子さんの育ちを一緒に確認し、必要があれば早めに支援につなぐための仕組みです。
指差し、言葉、歩行、積み木。これらのチェックは、お子さんを評価するためではなく、より良いサポートのための情報収集です。「要観察」「要精査」の言葉に過度に構えず、専門家と一緒に次のステップを考えていただければと思います。
何か気になることがあれば、健診の場だけでなく、外来でもご相談ください。
愛育病院 小児科 おかもん